あんたは剣を持っていた方がかっこよかった

守 秀斗

文字の大きさ
2 / 5

第2話:修行僧

しおりを挟む
 数週間後。

 ぼろきれをまとって、托鉢をしている修道僧を見かけた。
 よく見ると、あの貴族の若者、ジョヴァンニだった。
 あたしら下層階級の者たちよりひどい格好をしている。

 家の財産を親に無断で貧しい人に配ったりとかして、勘当されたって話だ。
 戦争に行く前は、けっこう仲間たちとろくでもない遊びをしたり、だらしない生活をしていたようだが、今は洞窟かどこかで瞑想したり、動物に向かって話しかけたりしているって噂もある。

 金持ちの貴族がなんで修行僧なんかになったんだろう。 
 戦場でひどい目に遭って、頭がおかしくなったのだろうか。

 少し心配になったが、修行僧になったとはいえ、相手は貴族だ。
 あたしの方から近づける人ではない。

 その後も、何度か見かけるようになった。
 ただし、何人か仲間が出来たみたい。
 四、五人で托鉢しながら歩いている。

 よく見ると、全員、貴族の息子たちだ。
 皆、ジョヴァンニと同じようにぼろぼろの格好をしている。
 ジョヴァンニに影響されたんだろうか。
 皆、楽しげに歌ったりもしている。

 中には、去年、あたしが運んでいた桶を蹴飛ばして中身をぶちまけてあざ笑った奴もいた。あたしをひどい目に遭わせたくせに、自分が戦場で悲惨な目に遭ったら神様にすがるようになったのだろうか。
 
 けど、こいつらはいざとなったら金持ちの実家に戻ればいいだけじゃない。
 あたしの方と言えば、今、家族が病気で、働けるのはあたし一人だ。

 あたしら下層階級の者たちは、働くのをやめたら死ぬしかない。
 いい気なもんねとあたしは思った。

……………………………………………………

 この町では週一回、町の中央にある教会で礼拝が行われる。
 教会の礼拝には、あたしら最下層の人間も参加できる。

 しかし、金持ち連中と違って、椅子には座らせてくれず、一番後ろの壁際で立ったままだ。
 あたしもたまに参加している。

 司教がありがたい説教を始めた。
 あたしは全然聞く気はない。
 聞いてるふりをしているだけよ。

 この司教は町の金持ちどもとつるんで、税金を使ってやりたい放題している。
 ずいぶんと蓄財しているって噂ね。
 この町の教会はすっかり腐敗している。
 
 本当はこんな礼拝には出たくないんだけど、たまには顔を見せないと不信心な人物と見なされて何をされるかわからないので、仕方なく出席している。

 そう言えばジョヴァンニはどうしているのかしら。
 前方を探すが見当たらない。
 以前は最前列の金持ちの席によく見かけたんだけど。
 
 周りの人の噂話では、どうやらジョヴァンニは仲間たちと荒地にあった廃墟同然の聖堂を少しずつ修繕して、自分たちの教会にしたようだ。まだ、天井とかには穴が開いている状態らしい。

 それでも、仲間が少しずつ増えているようね。
 物好きな連中もいるもんだとあたしは思ったわ。

……………………………………………………

 ジョヴァンニたちは物乞いをして、日々の糧を得ている。
 物乞いをしているジョヴァンニを眺めていたら同僚に聞かれた。

「お前もあの連中の仲間に入りたいのかよ」
「まさか、まっぴらごめんよ」

 あたしには、所詮、ジョヴァンニたちの行動はお金持ちのお遊びとしか思えなかったから。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

夫から『お前を愛することはない』と言われたので、お返しついでに彼のお友達をお招きした結果。

古森真朝
ファンタジー
 「クラリッサ・ベル・グレイヴィア伯爵令嬢、あらかじめ言っておく。  俺がお前を愛することは、この先決してない。期待など一切するな!」  新婚初日、花嫁に真っ向から言い放った新郎アドルフ。それに対して、クラリッサが返したのは―― ※ぬるいですがホラー要素があります。苦手な方はご注意ください。

主人公の恋敵として夫に処刑される王妃として転生した私は夫になる男との結婚を阻止します

白雪の雫
ファンタジー
突然ですが質問です。 あなたは【真実の愛】を信じますか? そう聞かれたら私は『いいえ!』『No!』と答える。 だって・・・そうでしょ? ジュリアーノ王太子の(名目上の)父親である若かりし頃の陛下曰く「私と彼女は真実の愛で結ばれている」という何が何だか訳の分からない理屈で、婚約者だった大臣の姫ではなく平民の女を妃にしたのよ!? それだけではない。 何と平民から王妃になった女は庭師と不倫して不義の子を儲け、その不義の子ことジュリアーノは陛下が側室にも成れない身分の低い女が産んだ息子のユーリアを後宮に入れて妃のように扱っているのよーーーっ!!! 私とジュリアーノの結婚は王太子の後見になって欲しいと陛下から土下座をされてまで請われたもの。 それなのに・・・ジュリアーノは私を後宮の片隅に追いやりユーリアと毎晩「アッー!」をしている。 しかも! ジュリアーノはユーリアと「アッー!」をするにしてもベルフィーネという存在が邪魔という理由だけで、正式な王太子妃である私を車裂きの刑にしやがるのよ!!! マジかーーーっ!!! 前世は腐女子であるが会社では働く女性向けの商品開発に携わっていた私は【夢色の恋人達】というBLゲームの、悪役と位置づけられている王太子妃のベルフィーネに転生していたのよーーーっ!!! 思い付きで書いたので、ガバガバ設定+矛盾がある+ご都合主義。 世界観、建築物や衣装等は古代ギリシャ・ローマ神話、古代バビロニアをベースにしたファンタジー、ベルフィーネの一人称は『私』と書いて『わたくし』です。

義母と義妹に虐げられていましたが、陰からじっくり復讐させていただきます〜おしとやか令嬢の裏の顔〜

有賀冬馬
ファンタジー
貴族の令嬢リディアは、父の再婚によりやってきた継母と義妹から、日々いじめと侮蔑を受けていた。 「あら、またそのみすぼらしいドレス? まるで使用人ね」 本当の母は早くに亡くなり、父も病死。残されたのは、冷たい屋敷と陰湿な支配。 けれど、リディアは泣き寝入りする女じゃなかった――。 おしとやかで無力な令嬢を演じながら、彼女はじわじわと仕返しを始める。 貴族社会の裏の裏。人の噂。人間関係。 「ふふ、気づいた時には遅いのよ」 優しげな仮面の下に、冷たい微笑みを宿すリディアの復讐劇が今、始まる。 ざまぁ×恋愛×ファンタジーの三拍子で贈る、スカッと復讐劇! 勧善懲悪が好きな方、読後感すっきりしたい方にオススメです!

皆様ありがとう!今日で王妃、やめます!〜十三歳で王妃に、十八歳でこのたび離縁いたしました〜

百門一新
恋愛
セレスティーヌは、たった十三歳という年齢でアルフレッド・デュガウスと結婚し、国王と王妃になった。彼が王になる多には必要な結婚だった――それから五年、ようやく吉報がきた。 「君には苦労をかけた。王妃にする相手が決まった」 ということは……もうつらい仕事はしなくていいのねっ? 夫婦だと偽装する日々からも解放されるのね!? ありがとうアルフレッド様! さすが私のことよく分かってるわ! セレスティーヌは離縁を大喜びで受け入れてバカンスに出かけたのだが、夫、いや元夫の様子が少しおかしいようで……? サクッと読める読み切りの短編となっていります!お楽しみいただけましたら嬉しく思います! ※他サイト様にも掲載

腹に彼の子が宿っている? そうですか、ではお幸せに。

四季
恋愛
「わたくしの腹には彼の子が宿っていますの! 貴女はさっさと消えてくださる?」 突然やって来た金髪ロングヘアの女性は私にそんなことを告げた。

冷遇王妃はときめかない

あんど もあ
ファンタジー
幼いころから婚約していた彼と結婚して王妃になった私。 だが、陛下は側妃だけを溺愛し、私は白い結婚のまま離宮へ追いやられる…って何てラッキー! 国の事は陛下と側妃様に任せて、私はこのまま離宮で何の責任も無い楽な生活を!…と思っていたのに…。

私を婚約破棄した国王が処刑されたら、新しい国王の妃になれですって? 喜んで…と言うとでも?

あんど もあ
ファンタジー
幼い頃から王子の婚約者だったアイリスは、他の女性を好きになった王子によって冤罪をかけられて、田舎で平民として生きる事に。 面倒な貴族社会から解放されて、田舎暮らしを満喫しているアイリス。 一方、貴族たちの信頼を失った王子は、国王に即位すると隣国に戦争を仕掛けて敗北。処刑される。 隣国は、アイリスを新しい国王の妃にと言い出すが、それには思惑があって…。

処理中です...