スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

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第157話:コタツで寝ているから体は温かいが、顔が寒いんだよな、皮膚が凍結しそうだ、リーダーの人生もすでに凍結してますね

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 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 今は宿屋の屋根裏に住んでいて、副業で猫カフェのオーナーをしている。

 寒い夜。

「寒いなあ」
「寒いっすね」

「コタツで寝ているから体は温かいが、顔が寒いんだよな。顔の皮膚が凍結しそうだ」
「リーダーの人生もすでに凍結してますね」

「おい、そういうギャグは聞き飽きたぞ」
「まあ、ギャグと言うより事実ですがね。もうリーダーは棺桶に片足を突っ込んでいるどころか、全身入っているけど、出腹が邪魔で棺桶の蓋を閉じられないって状況すかね」

「うるさいぞ。しかし、それにしても寒い。我がコタツ砦の防壁でもこの寒さからは逃れられないな」
「何が砦なんすかね。いい加減、妄想はやめてくださいっすよ。単なる浮浪者ハウスを屋根裏に作ってるだけでしょうが」

「まあ、そうなんだが。これはこれで楽しいんだな。しかし、この顔面の寒さはどうにかならんかな」
「コタツの中に全身入ってしまえばいいんじゃないすか」
「酸欠になって死ぬだろうが」

「冴えない人生のリーダーにふさわしいっすよ。寝ている間にあの世。今の満身創痍の体で苦痛に悩み日々よりよっぽどいいじゃないすか。晴れて最終回すね」
「だから勝手に俺の人生を終わらせるなって」

 しかし、冴えない人生というのは認めざるを得ない。

「うむ、やはり今年の目標は大物モンスターか珍しいモンスターを倒す事だな」
「やめといた方がいいすよ。それより猫カフェを、もういくつか増やして老後に備えたらどうすかね。サイドビジネスで儲けると」

「そっちの方がうまくいかないな。今の一店舗で十分だ」
「ありゃ、珍しく現実的っすね。普段は妄想ばかりしている歯抜けの爺さんのくせに」

「そりゃ、猫なんてどこでもいるだろが。今は評判いいが、いずれは飽きられるって前にも言っただろ。あっという間に閉店することになる。しかし、大物モンスターは滅多にいないだろ」
「その大物モンスターに会う機会は少なそうっすけどね」
「しかし、冒険者を続けていればいつかは遭遇するのではないか。さあ、いざ、冒険の旅に出発するのだ!」

「は? こんな寒い夜にすかね。いやですよ、俺っちは」
「冗談だ。俺も今はこのコタツで寝ていたい」

「まあ、冴えないリーダーは珍しいモンスターに遭遇してもあっという間にやられて、あの世の旅に出発しそうですけどね」
「うるさいぞ」

「だいたい、冒険者ギルドは俺っちらにそんなモンスター退治を依頼しませんよ。ハゲデブブサイクのリュウマチ持ちのおっさんがリーダーをしているパーティーなんかに」
「確かにそうだ。しかし、スライム退治をしている時に偶然立ちはだかるかもしれないじゃないか」

「この前のホコリゴーレムみたいな、息を吹きかけるだけで倒せるモンスターしか現れないないんじゃないすかね。リュウマチ持ちの頻尿爺さんの前には」
「うるさいぞ」

 でも、実際のところそうなんだよな。

「いや、継続こそ力なりだ。冒険者は当分続けるぞ」
「継続してたら、あの世に一直線すかね。もう死相が見えてますよ、リーダーの顔から」

「うるさいぞ。お前、俺の反対側でコタツから頭を出しているだけから、俺の顔なんて見えないだろ。だらしのない冒険者だな。この状態でモンスターに突然襲われたらお前はどうするんだ。この前、スケルトンが乱入してきたじゃないか」
「リーダーも似たような恰好で寝てるじゃないすか。スケルトンの件は魔剣を持っていたからっしょ」
「それもそうだな」

 冴えない二人がコタツの両側から頭だけ出して寝ている。
 何とも情けない。

 薄暗いランプの光で見えるのは、コタツの周りの衝立の上に置いた廃材の板だけだ。
 モンスターなんて襲ってくるわけないと思っていたら、誰かが屋根裏への梯子を登ってくるぞ。

「お、何者かがやって来るぞ。モンスターか」
「そんなわけないすよ。宿屋の主人じゃないすかね。もういい加減屋根裏から出て行ってくれって言われるんじゃんないすかね」

「このコタツ砦は気に入っているんだがなあ」
「だから砦じゃなくて浮浪者ハウスですよ」

 さて、やって来たのは、相棒の言ってたとおり宿屋の主人だった。
 立ち退きを指示されるのかとビクビクしていると違うことを言われた。

「裏の中庭に変な生き物がいるんですけど、対処してくれませんかねえ」

 おお、モンスター退治か。
 俺は相棒に囁いた。

「おい、モンスターが出現したぞ。もしかしたら大物モンスターかもしれんぞ」
「大物モンスターが何で宿屋の裏庭に出現するすかね。野良犬でもいたんじゃないすか。寒いからリーダーだけで行ってくださいすよ」

「やる気無いないなあ、お前は。それにここは宿屋の主人に恩を売っておくほうがいいぞ」
「しょうがないすねえ」

 そんなわけで、宿屋の裏庭に相棒と一緒に行くことにした。
 剣を杖代わりに歩く。

「何だか、相変わらず、ゾンビみたいなのそのそとした、その歩き方を見るとリーダーがモンスターじゃないかって思いますけどね」
「うるさいぞ。手押し車を修理中なんだからしょうがないだろ」

 さて、裏庭に行って携帯ランプで照らしてみる。
 おお、そこにはドラゴンが出現しているではないか。

 でも、ずいぶん小さいな。
 子猫くらいだ。

「何すか、この生き物は」
「うむ、思い出したぞ。こいつはファイアードラゴンモドキだな」

「強いんすかね」
「全然、強くない。猫よりも弱いな。大人しいぞ。ペットで飼っている人もいるな」

 そんなわけで、ファイアードラゴンモドキを抱えて、宿屋の主人に連絡。
 
「多分、誰かがペットで飼っていたのが逃げ出したんじゃないですかね」
「そうですか。じゃあ、掲示板にでもその旨を書いておきますかね」

 そういうわけで、持ち主が現れるまで、屋根裏で俺が預かることになった。

「そんなもの飼っていいんすかね」
「このファイアードラゴンモドキには利点があるのだな」

 俺はコタツの上にファイアードラゴンモドキを置く。

「あれ、何か温かいっすね」
「そうなのだ。こいつは体から熱を発するんだな」

「火事にならないすかね」
「そこまでは熱くならない。おお、なかなかいい具合だぞ。顔も温かいではないか」

 俺はコタツに潜り込む。
 いい気分になってきた。

「うむ、コタツ砦もこれで当分温かくなるぞ」
「だから砦じゃなくて、浮浪者ハウスですよ」
「うるさいぞ」

「ところで、こいつは何を食って生きてるんすか」
「雑食だから猫缶で十分だな」

「それにしても、何だかしょぼくれたモンスターしか、リーダーのところには近寄ってきませんねえ。リーダー自身の人生を象徴しているようっすね」
「うるさいぞ。前にもそんなこと言ってただろ。それにこいつはかなり珍しいモンスターなんだ。そいつに出会ったわけだ。いずれは大物モンスターに出会う日が来るぞ」

「さっきも言ったけど、大物モンスターに一瞬で踏みつぶされるリーダーが目に浮かびますね」
「うるさいぞ」

 でも、ファイアードラゴンモドキのおかげで、すっかり温まって眠ってしまう俺であった。
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