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第161話:今度からこの手押し車が仕事のリーダーをやるのもいいっすね、手押し車がリーダーを出来るわけないだろ
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「寒いなあ」
「寒いっすね」
「しかし、コタツに入っていると温かいなあ」
「温かいっすね」
「そんなわけで、俺は何もする気が起こらない」
「どうしようもないすね。もう、朝っすよ」
「もうちょっと、眠らせてくれよ」
「仕事はどうするすんか。さぼるんすかね、ハゲデブブサイクのリュウマチ持ちの爺さんは」
「うるさいぞ。やれやれ。起きるとするか」
俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
今は宿屋の屋根裏に住んでいて、副業で猫カフェのオーナーをしている。
さて、仕方なく、起きる。
「ウォ!」
「どうしたんすか、リーダー」
ああ、すごいめまいだ。
ぐるぐると周りの景色が急回転しているぞ。
「ああ、これは脳卒中だ。俺は死ぬんだ」
「大丈夫すかね」
「もう終わりだ。いろんな思い出がよみがえる。ああ、もっと冒険したかった。『旅に病んで夢は枯野をかけ廻る』だな」
「何すか、それ。例の俳句ってやつですか。それ、若い人には全然受けないんすけど。だいたい思い出って、スライム退治だけっすよね、しょぼくれた人生のリーダーは」
「うるさいぞ。それに若い連中に受けるつもりはない。なお、この俳句は大昔の作品なんで著作権は関係ないぞ」
「そんなこと、どうでもいいっすよ。脳卒中で俳句は詠めないっすよ。別の病気じゃないすかね」
「うむ、そうかもしれんが、ぐるぐると目が回っているぞ。立てないぞ」
「しょうがないすね。診療所に行きますか」
そんなわけで、手押し車に乗せられて、相棒に村の診療所に連れて行ってもらう。
「それにしても、この手押し車は頑丈すね。ハゲデブブサイクのリュウマチ持ちで重たい爺さんを乗せてもびくともしない」
「うるさいぞ。ハゲとブサイクとリュウマチは体重と関係ないだろ」
……………………………………………………
さて、診断は良性発作性頭位眩暈症。
「良性ってことは大したことないんすかね」
「うむ。しかし、このぐるぐると回るめまいはつらいぞ」
結局、薬を貰っただけだ。
どうやら、頭の血流とかが関係しているようだ。
「最近、寒いから頭の血の巡りも悪くなっているからなあ」
「じゃあ、今日は休みすかね」
「いや、冒険には行くぞ。もう、めまいも消えた。薬のおかげかな。でも、このめまいって癖になってしまうようだなあ」
「リーダーは慢性っぽい病気ばっかり抱えてますね。もう引退して猫カフェのオーナーをやった方がいいっすよ」
「猫に頼る気はないぞ。俺は死ぬまで冒険者なのだ」
「実際のところ、リーダーはもう死んでるのも同じじゃないすかね」
「うるさいぞ」
そんなわけで、手押し車を押しながら、冒険者ギルドに向かう。
「重いぞ、この手押し車は。元の車輪が小さいのに戻すかなあ」
「上に乗っかればいいじゃないすか。この前みたいにスイスイと走ればいいじゃないすかね」
「不安定な場所はめまいによくないようだぞ。だから押して歩くしかない」
「だいたい、リーダーが指示して改良したんじゃないすか」
「まあ、そうなんだがなあ」
さて、冒険者ギルドに到着。
今回、依頼されたのは、単なる偵察。
「新しく採掘が始まったけど、コボルトが現れたんで、休止になっていた鉱山の調査だ。おもろーないな」
「でも、その満身創痍の体でコボルトと戦えるんすかね」
「コボルトくらいたいした相手ではない」
「でも、コボルトたちもいないんじゃないすかね。もう、他の冒険者たちに追い払われたみたいっす。今回は、あらためて採掘開始する前に、念のため調べてくれってことみたいっす。それでなきゃ、こんな仕事、急死寸前のリーダーに依頼するわけないっすよ」
「うるさいぞ。そういうギャグはもう飽きたぞ」
さて、下らない会話をしながら、村の近くの山にある鉱山に向かう。
鉱山発掘のためか、かなり大きい横穴が開いているなあ。
「この穴の大きさなら、手押し車も一緒に入れるぞ」
「また手押し車に轢かれないでくださいっすよ。今度轢かれたらあの世逝きは間違いないっすね」
「うるさいぞ。手押し車に轢かれて死ぬかよ」
そんなわけで、鉱山の中に入る。
一本道があるだけだ。
まだ採掘を始めたばかりだからな。
だらだらと歩く。
坑道が緩やかな坂道になった。
「うむ。コボルトの連中はいないようだなって、ウォ!」
「どうしたんすか、リーダー」
「うーん、まためまいが始まった……ああ、つらいぞ。休ませてくれ」
「しょうがないすね。まあ、もう少しで行き止まりで終わりなんで、そこで座って休んでてくれませんかね」
相棒は携帯ランプを持って先へ進んでいく。
しかし、体中、おかしくなっているなあ。
年は取りたくないもんだ。
若い頃は全く予想していなかったなあ。
数万年は生きる気分だった。
今や来年死ぬんじゃないかと思うようになっているぞ。
やれやれ。
おっと、背筋がゾクゾクしてきたぞ。
何かが近づいて来る。
俺は相棒に声をかける。
「おい、気を付けろ! 何かいるぞ」
すると、相棒の背後に大きい黒い影が現れた。
コボルトじゃないぞ。
あれは巨体のオーガだ。
オーガがこん棒で相棒に襲い掛かる。
しかし、さっと相棒はオーガの攻撃をよけた。
でも、ナイフで戦っているが、苦戦している。
これは助けにいかないといかんぞ。
俺は立ち上がろうとする。
「ウォ!」
イテテ、また腰痛だ。
立ち上がれん。
何とか相棒を助ける方法はないか。
そこで思いついた。
俺は腰に差している短剣を抜いて、手押し車の前面に括り付ける。
そのまま、力を入れて押し出した。
スーッと音も無く手押し車が坂道を下がっていく。
おお、速度が上がっていくぞ。
手押し車がオーガにぶつかって、腰のあたりにナイフが刺さっている。
怒ったオーガが振り向いて、こん棒で手押し車を叩く。
その隙に相棒がオーガの首にナイフを突き刺した。
「ウガー!」
悲鳴をあげてオーガが倒れた。
相棒が手押し車を押しながら戻って来る。
「おい、大丈夫か」
「いやあ、ちょっと危ないとこだったすよ。でも、この手押し車は頑丈すね。オーガに叩かれたのに壊れないなんて」
「その分、重いけどな。鉄板とかで作ってあるんだ」
「でも、そのおかげで助かりましたよ。今度から、この手押し車が仕事のリーダーをやるのもいいっすね」
「手押し車がリーダーを出来るわけないだろ」
しかし、結局、俺は立ち上がれないまま、またもや手押し車に乗せられて戻ることになった。
やれやれ。
情けないなあ。
「寒いっすね」
「しかし、コタツに入っていると温かいなあ」
「温かいっすね」
「そんなわけで、俺は何もする気が起こらない」
「どうしようもないすね。もう、朝っすよ」
「もうちょっと、眠らせてくれよ」
「仕事はどうするすんか。さぼるんすかね、ハゲデブブサイクのリュウマチ持ちの爺さんは」
「うるさいぞ。やれやれ。起きるとするか」
俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。
今は宿屋の屋根裏に住んでいて、副業で猫カフェのオーナーをしている。
さて、仕方なく、起きる。
「ウォ!」
「どうしたんすか、リーダー」
ああ、すごいめまいだ。
ぐるぐると周りの景色が急回転しているぞ。
「ああ、これは脳卒中だ。俺は死ぬんだ」
「大丈夫すかね」
「もう終わりだ。いろんな思い出がよみがえる。ああ、もっと冒険したかった。『旅に病んで夢は枯野をかけ廻る』だな」
「何すか、それ。例の俳句ってやつですか。それ、若い人には全然受けないんすけど。だいたい思い出って、スライム退治だけっすよね、しょぼくれた人生のリーダーは」
「うるさいぞ。それに若い連中に受けるつもりはない。なお、この俳句は大昔の作品なんで著作権は関係ないぞ」
「そんなこと、どうでもいいっすよ。脳卒中で俳句は詠めないっすよ。別の病気じゃないすかね」
「うむ、そうかもしれんが、ぐるぐると目が回っているぞ。立てないぞ」
「しょうがないすね。診療所に行きますか」
そんなわけで、手押し車に乗せられて、相棒に村の診療所に連れて行ってもらう。
「それにしても、この手押し車は頑丈すね。ハゲデブブサイクのリュウマチ持ちで重たい爺さんを乗せてもびくともしない」
「うるさいぞ。ハゲとブサイクとリュウマチは体重と関係ないだろ」
……………………………………………………
さて、診断は良性発作性頭位眩暈症。
「良性ってことは大したことないんすかね」
「うむ。しかし、このぐるぐると回るめまいはつらいぞ」
結局、薬を貰っただけだ。
どうやら、頭の血流とかが関係しているようだ。
「最近、寒いから頭の血の巡りも悪くなっているからなあ」
「じゃあ、今日は休みすかね」
「いや、冒険には行くぞ。もう、めまいも消えた。薬のおかげかな。でも、このめまいって癖になってしまうようだなあ」
「リーダーは慢性っぽい病気ばっかり抱えてますね。もう引退して猫カフェのオーナーをやった方がいいっすよ」
「猫に頼る気はないぞ。俺は死ぬまで冒険者なのだ」
「実際のところ、リーダーはもう死んでるのも同じじゃないすかね」
「うるさいぞ」
そんなわけで、手押し車を押しながら、冒険者ギルドに向かう。
「重いぞ、この手押し車は。元の車輪が小さいのに戻すかなあ」
「上に乗っかればいいじゃないすか。この前みたいにスイスイと走ればいいじゃないすかね」
「不安定な場所はめまいによくないようだぞ。だから押して歩くしかない」
「だいたい、リーダーが指示して改良したんじゃないすか」
「まあ、そうなんだがなあ」
さて、冒険者ギルドに到着。
今回、依頼されたのは、単なる偵察。
「新しく採掘が始まったけど、コボルトが現れたんで、休止になっていた鉱山の調査だ。おもろーないな」
「でも、その満身創痍の体でコボルトと戦えるんすかね」
「コボルトくらいたいした相手ではない」
「でも、コボルトたちもいないんじゃないすかね。もう、他の冒険者たちに追い払われたみたいっす。今回は、あらためて採掘開始する前に、念のため調べてくれってことみたいっす。それでなきゃ、こんな仕事、急死寸前のリーダーに依頼するわけないっすよ」
「うるさいぞ。そういうギャグはもう飽きたぞ」
さて、下らない会話をしながら、村の近くの山にある鉱山に向かう。
鉱山発掘のためか、かなり大きい横穴が開いているなあ。
「この穴の大きさなら、手押し車も一緒に入れるぞ」
「また手押し車に轢かれないでくださいっすよ。今度轢かれたらあの世逝きは間違いないっすね」
「うるさいぞ。手押し車に轢かれて死ぬかよ」
そんなわけで、鉱山の中に入る。
一本道があるだけだ。
まだ採掘を始めたばかりだからな。
だらだらと歩く。
坑道が緩やかな坂道になった。
「うむ。コボルトの連中はいないようだなって、ウォ!」
「どうしたんすか、リーダー」
「うーん、まためまいが始まった……ああ、つらいぞ。休ませてくれ」
「しょうがないすね。まあ、もう少しで行き止まりで終わりなんで、そこで座って休んでてくれませんかね」
相棒は携帯ランプを持って先へ進んでいく。
しかし、体中、おかしくなっているなあ。
年は取りたくないもんだ。
若い頃は全く予想していなかったなあ。
数万年は生きる気分だった。
今や来年死ぬんじゃないかと思うようになっているぞ。
やれやれ。
おっと、背筋がゾクゾクしてきたぞ。
何かが近づいて来る。
俺は相棒に声をかける。
「おい、気を付けろ! 何かいるぞ」
すると、相棒の背後に大きい黒い影が現れた。
コボルトじゃないぞ。
あれは巨体のオーガだ。
オーガがこん棒で相棒に襲い掛かる。
しかし、さっと相棒はオーガの攻撃をよけた。
でも、ナイフで戦っているが、苦戦している。
これは助けにいかないといかんぞ。
俺は立ち上がろうとする。
「ウォ!」
イテテ、また腰痛だ。
立ち上がれん。
何とか相棒を助ける方法はないか。
そこで思いついた。
俺は腰に差している短剣を抜いて、手押し車の前面に括り付ける。
そのまま、力を入れて押し出した。
スーッと音も無く手押し車が坂道を下がっていく。
おお、速度が上がっていくぞ。
手押し車がオーガにぶつかって、腰のあたりにナイフが刺さっている。
怒ったオーガが振り向いて、こん棒で手押し車を叩く。
その隙に相棒がオーガの首にナイフを突き刺した。
「ウガー!」
悲鳴をあげてオーガが倒れた。
相棒が手押し車を押しながら戻って来る。
「おい、大丈夫か」
「いやあ、ちょっと危ないとこだったすよ。でも、この手押し車は頑丈すね。オーガに叩かれたのに壊れないなんて」
「その分、重いけどな。鉄板とかで作ってあるんだ」
「でも、そのおかげで助かりましたよ。今度から、この手押し車が仕事のリーダーをやるのもいいっすね」
「手押し車がリーダーを出来るわけないだろ」
しかし、結局、俺は立ち上がれないまま、またもや手押し車に乗せられて戻ることになった。
やれやれ。
情けないなあ。
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そして、この物語を見つけ出し、最高の形で世に送り出してくださる、担当編集者様、イラストレーターの市丸きすけ先生、全ての関係者の皆様に、心からの感謝を。
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