スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

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第166話:何だ、お前起きてたのか、ガマガエルリーダーに頭を踏んづけられて痛くて眠れないっすよ

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 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 今は宿屋の屋根裏に住んでいて、副業で猫カフェのオーナーをしている。
 
 夜中。
 
 俺はのっそりと起きる。
 少し寝ぼけているのか、足がふらついている。

「イテテ、ちょっと何をするんすか、リーダー」
「おお、悪い、悪い」

 うっかりコタツで寝ている相棒の頭を踏んでしまった。

「何すかね、こんな夜中に」
「便所だ、便所」

「頻尿ガマガエルリーダーの爺さんはしょうがないすねえ」
「しょうがないだろ。この病気は治らんのだ」

 さて、コタツ砦を出て、屋根裏部屋の端っこにある梯子を下りる。

「ウォ!」

 途中ですべって、尻を打ってしまった。

「イテテ」

 やれやれ。
 情けない。

 少し痛みが和らぐまで、宿屋の廊下で漫然とする。
 ぼんやりとしたランプの光だけの、薄暗い廊下。

 その廊下に座り込むしょぼくれたおっさんの俺。
 何とも寂しい光景である。
 
 そこに突然モンスターが襲って……来るわけもない。
 おもろーないな。

「よっこらせ」

 独り言を言ってよろよろと立ち上がって、便所に行く。
 すると、故障中で使用禁止の貼り紙が。

 やれやれ。
 前もこんなことがあったような。

 しょうがないので、一階の便所に行こうとして階段でずっこけたような記憶がある。
 俺の人生はそんなことばっかりだ。

 でも、行くしかないか。
 慎重に階段を下りる。

 用を足して、また慎重に階段を上る。
 うむ、今回は無事に上りきったぞ。

 いや、油断大敵だ。
 だいたい階段で無事な時は廊下ですっ転んでしまうんだよな、俺は。

 油断せずに廊下を歩き、また梯子を上って、屋根裏部屋に戻る。
 コタツに潜り込む。

「ふう、寒かった。でも、やったぞ」
「何すか、何をやったんすか、ガマガエルリーダー」

「何だ、お前起きてたのか」
「ガマガエルリーダーに頭を踏んづけられて痛くて眠れないっすよ」

「いや、悪かった。実は屋根裏部屋から下りるときずっこけて尻を打ったんだ。そして、二階の便所は使用禁止。しょうがないので、一階へ行ったのだが、ちゃんと無事に戻って来れたぞ」

「それがいったい何を成し遂げたんすかね」
「だから、ちゃんと冒険しただろ。尻を打ったのに、ちゃんと無事に便所から帰還したのだ」

「それのどこが冒険なんすか。あほらしいっすよ。もう、誰もリーダーには興味を持ってないすね。だいたい、最初に梯子から落ちて尻を打った時点で情けないっすね。便所に行くだけで冒険なんて、もはや、寝たきりの爺さんみたいになってきましたっすね、ガマガエルリーダーは」
「うるさいぞ」

 とは言え、情けないことになったものだ。
 すっかり体が壊れてしまった。

「ああ、若い頃が懐かしいなあ。全く元気だった。エネルギーの固まりだったぞ」
「また同じこと言ってますね。一億回くらい言ってますね。聞き飽きましたよ。もう、何もかも諦めて、猫カフェのオーナーで人生終わりにしたらどうすかね。それなりに儲かってんすよね。これで最終回と。ああ、めでたしめでたし」

「だから勝手に俺の人生を終わりにするな。しかし、俺の思い描いていた人生とは全然違うんだよなあ。猫に頼る人生なんて全く頭の中に無かったぞ。華麗にドラゴン退治をして英雄になる、いや、逆に凶暴なモンスターと対決して壮絶な最期を遂げる。そんなことは予想していたのだが、猫カフェのオーナーになるとは全く考えていなかったぞ」
「そんなもんすよ。先の事なんて誰にもわからないっすよ」

 そうだよなあ。
 先のことなんてわからないよな。

「でも、このまま猫カフェのオーナーで細々と暮らして人生終了ってつまらんぞ」
「これまた同じこと言ってますね。そんなに注目を浴びたいんすかね。ガマガエルリーダーは」

「でも、全く誰にも知られないままってのも、おもろーないな」
「ガマガエルリーダーは何をやっても無理っすよ。いや、台車に腹ばいになって乗って村道を移動することで注目を浴びてるじゃないすか、悪い意味で。不気味なハゲデブブサイクのリュウマチ持ちのおっさんがいるぞって噂になってますよ」

「うるさいぞ。あの台車を使うのも腰が治るまでだ」
「だいたい、その不気味なガマガエルリーダーが死んでも、三日後にはみんな忘れますよ。いや、三秒後にも忘れ去られるんじゃないすかね」

「俺は忘れられたくないぞ。やれやれ。おもろーない人生だ。ああ、一度くらい注目を浴びてもいいじゃないか。世の中、不公平だぞ」
「無理っすよ。みんな、そんなもんすよ」

 そうだろうか。
 ああ、何も考えたくなくなったぞ。

 コタツで横になって、目を瞑る。

「ウォ!」
「どうしたんすか、ガマガエルリーダー。また腰痛すかね」

「いや、ファイアードラゴンモドキが俺の顔に乗って来やがった、火傷するかと思ったぞ。しかし、すっかり忘れてたな、こいつと一緒に暮らしていることを」
「しょうがないすね。動物愛護団体に訴えられますよ、飼育放棄しているガマガエルリーダーは」

「うるさいぞ。ガマガエルではない。このファイアードラゴンモドキは猫のようにエサを催促しないからな」

 俺は猫缶を開けてコタツの上に置いてやる。
 ファイアードラゴンモドキが美味しそうに食べている。

「うむ、ファイアードラゴンモドキの体が熱を帯びてきたな。これで快適に眠られるぞ」
「自分は忘れたくないとか言っておきながら、ペットにしたモンスターの存在も忘れてるんすから、自分勝手なガマガエルっすね」
「うるさいぞ」

 しかし、やはり一度くらいは皆の注目を浴びたいものだ。
 猫缶を食べるファイアードラゴンモドキを見ながら、俺はそう思った。

 って、何度思ったかわからないな。
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