スライム退治専門のさえないおっさんの冒険

守 秀斗

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第67話:俺は張り切ってるぞ、どうしたんすか

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 俺と相棒、二人組の冒険者パーティー。
 普段はスライム退治専門のしょぼいパーティーだ。

 しかし、俺は、最近、元気だ。

「おい、俺は張り切ってるぞ」
「どうしたんすか」

「この前、出腹で気球に乗っている人たちを助けただろ、俺はまだ頑張れる。それに、この前も、自殺志願者を助けようとして、崖から落ちそうになっただろ。あの緊張感、そして、うまくいった達成感が俺の冒険心を復活させたんだ」
「何言ってんすか、全然うまくいってないじゃないすか。気球は偶然、木に出腹がぶつかっただけ。岩に乗り移ろうとした時も、出腹がぶつかって墜落、結局、魔法使いの女性に助けられたんじゃないすか。何を達成したんすか」
「うるさいぞ」

 とにかく冒険したことには間違いないんだ。

「で、今日の仕事はなんすか」
「スライム退治だ」

「何なんすか! いつもと同じじゃないすか、張り切る必要ないすよ!」
「いや、場所が危険なんだな」

 俺は相棒と一緒に今回の目的地に到着した。
 ちょっと面白い地形の場所だ。

 断崖から、切り立った一本道が海へと延びている。
 両側ともほぼ垂直で、例え下が海でもこの高さなら落ちたら死ぬだろう。

 そして、その一人くらいしか歩けない幅の道を通ると、やや広い場所に出る。
 そこにいるスライムを退治するのが、今回の仕事だ。

「これ、落ちたらやばくないすか。一応、下は海ですけど、なんだか波がけっこう高いっすね」
「そう、だからいいんだ。これが冒険だ」

「でもスライム退治っすよね。割りに合わないんじゃないすか。他の冒険者が引き受けなかったのがわかりましたっすよ。スライム退治に行ったら、転落死なんて嫌っすよ」
「お前、それでも冒険者か」

「でも、あんな誰も行かない場所のスライムなんて放っておけばいいんじゃないんすか」
「それがなあ、スライムがたまに落ちてきて、この崖の下の海を漁船で通る漁師を襲うことがあるそうなんだ。どうだ、俺たちも世の中の役に立とうじゃないか。そして、この危険な場所を通るという冒険をするんだ」
「張り切ってますねえ」

 やれやれと言った表情の相棒。
 しかし、引き受けた以上、俺はやるぞ。

「とりあえず、お互いをロープでつなごう」
「へ、そんなことしたら、仮にリーダーが転落したら、俺っちも巻き添えじゃないすか」

「違うよ。例えば、もし俺が右から崖を落ちたら、お前は素早く左へ自ら落ちるんだ。そうすればお互いバランスが取れて、助かるだろ」
「そんな、両側に二人で落ちて、どうやって這い上がるんすか」

「お互い、同時にロープをたぐって登って行けばいいじゃないか」
「そんなにうまくいきますかね。だいたい、リーダーは出腹で太っているからバランスとれないじゃないすか。いや、待てよ。まあ、その場合、リーダーが下がって行くから、俺っちは上に登って行くと。そして、上に這い上がったら、ロープを切断すればいいんすね」

「おい、そんなことしたら、俺はそのまま下に転落するじゃないか」
「まあ、どっちか一人でも助かっていいんじゃないすか。そういうわけで、まあ、お互いをロープでつなぐことには賛成っす」

「おい、ロープを切断なんかするなよ」
「今のは冗談すよ。上まで行ったら、リーダーを引き上げてやりますよ。まあ、下に転落しなきゃいいだけっすからね」

 そういうわけで俺と相棒は腰のベルトをロープでつなぐ。
 そして、すごく幅の狭い道を渡ることにした。

「ううむ、これはなかなか怖いな」

 左右、どちらを見ても下を見ると波しぶきを上げる海。
 やはりこの高さからだと助かるかどうかわからないな。

「慎重に行きましょう」
「そうだな」

 俺たちはそろりそろりと細い道を歩いていく。
 そして、広い場所にたどり着く。

「やった、成功だ」
「成功って、肝心のスライム退治はまだ全然終わってないすよ」
「おお、そうだったな」

 さて、見渡すとスライムはほんの数匹しかいない。
 俺と相棒は腰をロープでつなげたまま、スライムを倒す。
 あっという間に全部退治した。

 俺が下の海を見ると何隻かの漁船が見えた。
 漁師が大声を上げる。

「あんたら、そこで何やってんだ」
「スライム退治だ!」
「ああ、ご苦労様です」

 漁師が俺たちに手を振った。

「うむ、人の役に立つと、なかなか気分がいいものだ」
「けど、スライム少なかったすねえ。報酬も少ないっすね。こりゃ、やはり、ちょっと割りに合わないんじゃないすか」

「いいじゃないか。とにかく戻るぞ」
「ういっす」

 俺たちは再び両側が切り立った細い道を歩く。
 そこへ突然、強風に襲われた。

「うわあ!」

 俺は道から下に落ちる。
 ああ、このまま転落死か。

 と思ったら、宙ぶらりんの状態だ。
 よく見ると、相棒もすぐ近くで宙ぶらりんになっている。
 けど、両方とも同じ側だ。

「おい、俺が落ちたら、素早く逆に落ちろと言っただろ」
「そんなこと言ったって、あんな強風に逆らって、逆の方へ落ちるなんて出来ないっすよ」

「けど、なんで俺たち落ちないんだ」
「上を見てくださいよ」

 俺たちをつないでいるロープが上の道から飛び出ている木に引っかかっている。
 ふう、なんとか助かったか。
 あれ、俺の方が少しずつ下がって行く。

「おいおい、俺が下がっていくぞ」
「そりゃ、体重の差ですよ」

 なんだかニヤニヤ笑いの相棒。

「おい、俺を見捨てる気かよ」
「まさか、そんなことしないすよ。このままあの木まで俺っちが到達したら、ロープを木にちゃんと結んで、引き上げてあげますよ」

 ズルズルと落ちていく俺。

「おい、ちゃんとやってくれよ」
「わかってますよ」

 大丈夫かな。
 まあ、相棒は、一見、軽薄だが人を見捨てるとかはしない奴だから信用するか。

 と思ったら、ボキッと嫌な音がした。
 俺たちを支えていた木が折れた。

「うわあああ!」

 一気に墜落していく俺と相棒。
 ああ、これで俺の冒険者人生も終わりか。
 落ちていく途中に俺は気絶した。

……………………………………………………

 気が付くと、体が揺れている。
 目の前には髭面の男。
 まさか、この人は異世界へ行く途中に現れる神様か。

「おお、気が付いたか」

 よく見ると、漁師の船の上だった。
 相棒はすでに起きている。

「墜落したけど、海に落ちたんで、何とか助かったみたいっす。あの道から落ちてたら死んでたでしょうけど、ロープのおかげでだいぶ途中でしたからね」
「そうか、危うく死にかけたな。まあ、死んで異世界に逝って、大冒険して美少女と仲良くなってもよかったが」
「何をアホなこと言ってんすか。剣はどこにやったんすか」
「あれ、剣がない」

 どうやら、落ちた時に剣を無くしてしまったようだ。

「やれやれ。今回の報酬で新しい剣を買うしかないでしょうね」
「お前のナイフは無くしてないのか」
「きっちり腰のポケットに入っていたから大丈夫だったすよ。けど、これで骨折り損のくたびれ儲けっすね」

「いや、新しい剣を買ったら、それが伝説の剣で、そこから大冒険が始まるとか、そんなことが起きるかもしれないぞ」
「また、妄想すか。張り切るのはいいすけど、妄想に張り切るのはやめてくださいっすよ。恥ずかしいっすよ」
「うるさいぞ」

 ああ、しかし、死ぬかもしれないという恐怖。
 これが冒険の醍醐味だとあらためて思う俺であった。
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