立ち止まれ

守 秀斗

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立ち止まれ

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 工事中のマンションの前の通り。

 最近、その通りを私が歩くと必ず何者かにささやかれる。

「立ち止まれ」

 他の人には聞こえない。
 私にだけささやいてくる。

 何となくその命令に聞かなければいけないと思ってしまう。
 そして、立ち止まる。

 しかし、何も起きない。
 仕方なく私は歩き出す。

 その後、何度も同様な事が起きた。
 その度に立ち止まる。

 しかし、やっぱり何も起きない。
 仕方なく私は歩き出す。

 さて、ある日、いつものようにそいつが私にささやいてきた。

「立ち止まれ」

 私は立ち止まる。

 すると、私の目の前に巨大なブロックが落ちてきた。
 工事中のマンションから落ちてきたようだ。

 私は間一髪、助かった。
 もし、その命令を無視して歩いていたら、ブロックに潰されて死んでいただろう。

 どうやら、あのささやいていた者はひょっとして、私の守護霊かと思ったのだが。
 その後、私に聞こえてきたのは……。

「ちぇ、はずれたか」

〔END〕
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