飛び降りる

守 秀斗

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飛び降りる

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 精神薬飲んだら、興奮状態になってマンション五階のベランダから飛び降りた。

 飛び降りた瞬間、「しまった」という思いと「これで楽になれる」という思いが同時に脳裏をかすめた。

 落ちていく。

 なぜか地面に近づくにつれ落ちる速度が遅くなっていく。

 人間の脳は死の危険にさらされると、何とか助かろうといろいろな方法を考えるようだ。

 その時、頭がものすごく早く回転するため、時間が進む感覚もゆっくり感じるらしい。

 ゆっくり、ゆっくり落ちていく。

 地面直前でますますゆっくりとなる。

 地面に頭が着いた。

 激痛。

 しかし、なかなか死ねない。

 ゆっくり、ゆっくり死んでいく。

 これは地獄だ。

 本物の地獄。

………………………………

 翌朝、警官が現場検証をしている。

「飛び降り自殺か。一瞬で楽に死ねたからいいか」

 死体の前で独り言を言った。

〔END〕
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