孤児院育ちのエイミー

守 秀斗

文字の大きさ
17 / 27

第17話:グライダー少年のトムさんと再会

しおりを挟む
 どうやら、アレックスの足のケガは完全に治ったようなので、パーティに復帰することになった。また、スザンナもそのまま残ってもらうことにした。なかなか、強力なパーティになったなあと、一応、リーダーであるあたしは嬉しく思った。

 ところで、あれからアレックスとクリスは自作のグライダーを飛ばそうとあれこれ自分たちなりに改良して何度か挑戦したけど、結局、飛ばなかった。どっかおかしいんじゃないかと悩んでいる。あたしが設計図を翻訳したんだけど、それが間違っていたのかとあたしも心配になった。あたし頭が悪いからなあ。

 今日は休日。孤児院の側の坂道でアレックスとクリスが再びグライダーを飛ばそうと挑戦した。あたしも手伝ったがさっぱり飛ばない。どっか、おかしいんだろうなあと、三人で悩んでいて、ふと、空を見るとグライダーが飛んでいるではないか。

「あれだよ、あれがグライダーだよ!」とあたしが空を指さす。
「すごい! 本当に空を飛んでる。おまけに俺たちのグライダーより、全然小さいのにスイスイと飛んでいるじゃないか」とアレックスとクリスが驚いている。孤児院の子供たちや先生たち、魔法使いのルーカスさんまで、びっくりして外に出てきた。そのまま、そのグライダーはルーカス孤児院の前の広場にかっこよく着地した。操縦している人を見ると、カクムール王国の村で、あたしを何度もグライダーに乗せてくれたグライダー少年のトムさんではないか。乗って来たグライダーは例の折りたたむことが出来る、三角形のカッコ良いグライダーだ。

「お久しぶりですね、トムさん」と呼びかけると、「やあ、エイミーじゃないか、奇遇だねえ」と笑顔で答えてくれた。相変わらず歯がキラリと白く光る。

 どうやら、トムさんは、このグライダーという乗り物をナロードリア王国にも流行らせたいために、お隣のカクムール王国から飛んで来たようだ。「ここら辺で、一番大きい街はどこだい」と聞かれたんで、「アタラ街ですかね」と答えた。どうも、将来的にはグライダーを売る会社を設立するのが目的みたい。ただ、ナロードリア王国の言葉がうまく出来ないようだ。そこで、あたしはトムさんに提案した。

「いっそのこと、このルーカス孤児院に住みませんか。部屋はかなり余っていますので、大丈夫です。いきなり会社の設立はできないでしょう。まずは、グライダーというものがあることを、このナロードリア王国に周知したらどうでしょうか。あと、おこがましいですが、あたしがナロードリア語の会話や読み書きを教えてあげますよ」
「ありがとう。部屋の賃貸料とか、君の授業料とかはいくらだい」

 部屋の賃貸料はいただくけど、あたしの授業料はいりませんと答えると、いずれ出世払いでお金をルーカス孤児院に寄付するということで話がまとまった。まあ、あたしとしてはトムさんのグライダーに再び乗りたいという気持ちもあったんだけどね。

 せっかくトムさんが来てくれたんで、アレックスとクリスの自作グライダーを見てもらうことにした。しばらく二人が作成したグライダーを見たトムさんは、「そもそも、この素材が重すぎる、もっと軽いのにしないと。あと翼の側面の形が長方形じゃ飛ばないよ。流線形にしなきゃ、揚力が発生しないから」と難しいことを解説してくれたが、あたしの頭では全然理解できないなあ。とは言うものの、アレックスたちはトムさんの言う通り、自分たちのグライダーをいろいろと改良することにしたようだ。

 さて、話が終わったところで、「申し訳ありませんが、よろしければまたグライダーに乗せてくれませんか」とトムさんにお願いしたら、こころよく引き受けてくれた。一旦、山の上の方まで登る。あたしは、普段、首にかけて背中に回してある耐寒帽子付きの防風眼鏡をしっかりと装着する。久しぶりに乗るので平地でちょっと練習する。

 その後、適当な崖から二人並んでグライダーに乗って飛び降りる。華麗な飛び方で、二十分くらい空を飛ぶ。眼下にきれいな山の風景などを見ながら、風を切って、スイスイ飛ぶ。ユリウスの背中に乗って空を飛ぶのも気分がいいんだけど、その場合乗らしてもらっているって感じなんだ。けど、グライダーだと、まるで自分が鳥になって大空を舞っているような気がするんだな。気持ちがいいなあ。そのまま、ルーカス孤児院の上を回る。みんなが下で見ているので手を振ったりした。そのまま広場にカッコよく降りた。

 それを見た他の子たちが、「乗せろ、乗せろ」と集まってきたが、さすがに小さい子は危ないと断られた。しかし、スザンナくらいに大きい子は乗せてもらった。スザンナはグライダーを使って空を飛ぶことをすっかり気に入ったらしい。ユリアーナは怖がって乗らない。やっぱり、気の弱さはあんまり変わってないようだ。無理に乗せる必要はないけど。

 あたしはトムさんに、「先程言ったように、とりあえずグライダーというものをナロードリア王国に幅広く宣伝して、人々をこの広場に集めればいいんじゃないですか。そこでカッコよく飛んで見せて、その後はグライダー教室を開いて資金集めにお金を稼いだらどうですか」と持ちかけた。「場所はこのルーカス孤児院の二階の講義室と広場を貸しますよ。部屋代と同様、グライダー教室の授業料の一部を寄付してくれませんか」と申し出ると、「ありがとう、そうするよ」とトムさんも乗り気になった。

 よし、とりあえず、グライダーそのものをナロードリア王国の住民に広める必要があるぞと、あたしたちはユリウスのゴンドラに乗って、チラシを空から撒いたり、アオイノ村や、その他近くの村や街に宣伝しに行った。トムさんはカクムール王国にいったん帰り、いくつかグライダーを持って戻って来た。アレックスとクリスも自作のグライダーを改良して持ってくるらしい。

 さて宣伝した当日、孤児院の前の広場に大勢の見物人のいる中、そこにトムさんがグライダーで飛んできた。孤児院の上空を旋回したあと、かっこよく広場に降り立った。村人など見物人がみんな驚いている。宣伝効果はあったみたい。見物人の中にはお金を払ってトムさんと一緒に空を飛ぶ人まで出てきた。飛びたい人が続出して行列ができる。中にはサインをねだる人までいる。すっかりトムさんは人気者だ。二枚目だしね。

 それを見ていたアレックスとクリスが自分たちもがんばることにしたらしい。そこで改良した自作グライダーを、再び、坂道で飛ばすことにした。今度はクリスが操縦席に乗りあたしとアレックスが翼の端っこを持って走る。お、グライダーが上昇してきた。やっと、浮かんだ、飛んだぞと喜んでいたら、すぐに下がって、おまけに、またひっくり返る。今回はケガしなかったけど見物客みんなに笑われてアレックスとクリスはしょんぼりとしている。「まあ、何度もやって少しづづ改良すれば、いずれは空高く飛べるよ」とトムさんに慰められた。

 そこにスザンナが現れて、「トムさんが鷹ならお前らはニワトリだな」と大笑いする。それを聞いたクリスが、「ふざけんな! このこん棒振り回すしか能のないバカ女」と罵倒したもんだから、またスザンナとクリスが喧嘩になりそうになったので、「あたしたちは仲間だろ!」とあわてて止める。いつか勝負をつけてやるとにらみ合う両者。ああ、疲れた。
しおりを挟む
感想 1

あなたにおすすめの小説

お飾りの妻として嫁いだけど、不要な妻は出ていきます

菻莅❝りんり❞
ファンタジー
貴族らしい貴族の両親に、売られるように愛人を本邸に住まわせている其なりの爵位のある貴族に嫁いだ。 嫁ぎ先で私は、お飾りの妻として別棟に押し込まれ、使用人も付けてもらえず、初夜もなし。 「居なくていいなら、出ていこう」 この先結婚はできなくなるけど、このまま一生涯過ごすよりまし

夫と息子に邪険にされたので王太子妃の座を譲ります~死に戻ってから溺愛されても今更遅い

青の雀
恋愛
夫婦喧嘩の末に置き去りにされた妻は、旦那が若い愛人とイチャついている間に盗賊に襲われ、命を落とした。 神様の温情により、10日間だけこの世に戻った妻と護衛の騎士は、その10日間の間に心残りを処分する。それは、娘の行く末と……もし、来世があるならば、今度は政略といえども夫以外の人の妻になるということ。 もう二度と夫と出会いたくない彼女は、彼女を蔑ろにしてきた息子とも縁を切ることを決意する。 生まれかわった妻は、新しい人生を強く生きることを決意。 過去世と同じ轍を踏みたくない……

異世界に転移してしまった私、古民家をもらったのでカフェを始めたら大盛況。国王陛下が頻繁に来るのですが、どうしたらいいですか?

来栖とむ
ファンタジー
ブラック企業で疲れ果てた30歳の元OL・美里(みさと)が転移した先は、見渡す限りの深い森。 そこで彼女が授かったのは、魔女の称号……ではなく、一軒の**「日本の古民家」**だった! 亡き祖母が遺したその屋敷には、異世界では失われたはずの「お醤油」「お味噌」「白いお砂糖」という禁断の調味料が眠っていて――。 「えっ、唐揚げにそんなに感動しちゃうの?」 「プリン一口で、国王陛下が泣いちゃった……!?」 おにぎり、オムライス、そして肉汁溢れるハンバーグ。 現代日本の「当たり前」が、この世界では常識を覆す究極の美食に。 お掃除のプロな親子や、お忍びの王様、さらにはツンデレな宮廷料理人まで巻き込んで、 美味しい香りに包まれた、心もお腹も満たされるスローライフが今、始まります!

敵に貞操を奪われて癒しの力を失うはずだった聖女ですが、なぜか前より漲っています

藤谷 要
恋愛
サルサン国の聖女たちは、隣国に征服される際に自国の王の命で殺されそうになった。ところが、侵略軍将帥のマトルヘル侯爵に助けられた。それから聖女たちは侵略国に仕えるようになったが、一か月後に筆頭聖女だったルミネラは命の恩人の侯爵へ嫁ぐように国王から命じられる。 結婚披露宴では、陛下に側妃として嫁いだ旧サルサン国王女が出席していたが、彼女は侯爵に腕を絡めて「陛下の手がつかなかったら一年後に妻にしてほしい」と頼んでいた。しかも、侯爵はその手を振り払いもしない。 聖女は愛のない交わりで神の加護を失うとされているので、当然白い結婚だと思っていたが、初夜に侯爵のメイアスから体の関係を迫られる。彼は命の恩人だったので、ルミネラはそのまま彼を受け入れた。 侯爵がかつての恋人に似ていたとはいえ、侯爵と孤児だった彼は全く別人。愛のない交わりだったので、当然力を失うと思っていたが、なぜか以前よりも力が漲っていた。 ※全11話 2万字程度の話です。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

タダ働きなので待遇改善を求めて抗議したら、精霊達から『破壊神』と怖れられています。

渡里あずま
ファンタジー
出来損ないの聖女・アガタ。 しかし、精霊の加護を持つ新たな聖女が現れて、王子から婚約破棄された時――彼女は、前世(現代)の記憶を取り戻した。 「それなら、今までの報酬を払って貰えますか?」 ※※※ 虐げられていた子が、モフモフしながらやりたいことを探す旅に出る話です。 ※重複投稿作品※ 表紙の使用画像は、AdobeStockのものです。

つまらなかった乙女ゲームに転生しちゃったので、サクッと終わらすことにしました

蒼羽咲
ファンタジー
つまらなかった乙女ゲームに転生⁈ 絵に惚れ込み、一目惚れキャラのためにハードまで買ったが内容が超つまらなかった残念な乙女ゲームに転生してしまった。 絵は超好みだ。内容はご都合主義の聖女なお花畑主人公。攻略イケメンも顔は良いがちょろい対象ばかり。てこたぁ逆にめちゃくちゃ住み心地のいい場所になるのでは⁈と気づき、テンションが一気に上がる!! 聖女など面倒な事はする気はない!サクッと攻略終わらせてぐーたら生活をGETするぞ! ご都合主義ならチョロい!と、野望を胸に動き出す!! +++++ ・重複投稿・土曜配信 (たま~に水曜…不定期更新)

処理中です...