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強盗団Ω VS 特権階級α
尾道昇(α)
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秀勝の友人の保証人になって数日、携帯に見知らぬ番号から電話がかかってきた。
怪訝に思いながらも通話に切り替えると、男のだみ声が聞こえてくる。
「尾道昇さんだよね?あんたが保証人になった宇土利一が飛んだよ。」
宇土利一とは、秀勝の友人の名だ。この間頼まれて、昇は彼の借金の保証人になった。その彼が逃げたとこの男は言う。
「誰なんだ、君は。」
聞かずとも電話の相手が高利貸しであり、保証人となった自分への取り立てのために電話してきた事は察せられた。しかしαである自分に対して名乗りもせず、不躾に話し始めるΩであろうこの男に腹が立った。
昇は電話の相手の素性を何も知らないが、高利貸しなどやっているのはΩくらいしか考えられない。少なくともαでない事は確かだ、αは黒社会なんかに潜る必要が無いからだ。
「ああ悪い悪い、俺はその宇土利一に金貸してた奴だ。詳しい話したいから、とりあえず直接会いたいんだけど?」
「良いだろう。」
昇は何の不安も感じていない。自分には頼りになる優秀な弁護士がいて、裁判官もこちらの味方だ。そもそも高利貸し屋との契約など、元々が違法なのだから法的手続きを取れば何も怖い事など無い。
昇は何の考えも無しに保証人になったわけではなかった。
「弁護士なり何なり連れてくるのは勝手だけどさ、そうなるとその弁護士先生にもあんたの糞塗れの姿を見てもらう事になるが、それで良いかい?」
昇の考えを見透かしたように、男が言う。
――なぜそれを…
昇は顔面が蒼白になり、心臓が凍り付いた。
「じゃあ今から30分後にカルロンて喫茶店で待ってるから。あんたの職場近くだ。」
「おい、そんな急に…」
「どうせ暇だろ。」
男はそう言うと、一方的に通話を切った。「どうせ暇だろ」と言われ、返す言葉も無いのが悔しい。実際、昇達αは自由出勤・退勤であり面倒な仕事は全てβにやらせている。しかし手柄はαのものだ。つまり何もしなくても業績は上がる。
すぐ秀勝に電話をかけたが、電話番号が既に解約されていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『どう?昇さん、気持ち良い?』
『ああああああ!最高だ!最高だ!一度で良いから、糞尿まみれになってみたかったんだ!』
スマホの中で流れる動画、その中で昇は秀勝に糞尿を浴びせられ恍惚とし、いきり立っている。
目の前の男は動画を昇に見せながら、アイスコーヒーをストローで無表情にすすっていた。
平日昼間の喫茶店、カルロンは客が一人もおらず店員も奥に引っ込んでおり、こんな動画を堂々と繰り広げても何の支障も無いらしかった。
高利貸しの男から漂うフェロモンで、やはり彼がΩであると分かる。丸刈りに近い短髪、体型に合う高価そうなスーツ、一件サラリーマンだが剣呑な目付きで尋常ではないものを感じさせる。
秀勝と付き合い始めてしばらく経った頃、昇はずっと秘めていた自分の欲望を彼に打ち明けた。秀勝は引いたりもせず、快く受け入れてくれたのだがまさかこんな使われ方をされるとは――
「とりあえず、一億払ってくれる?」
男の声が現実へ引き戻す、と同時に昇は驚愕した。
「い、一億?!」
男が紙を取り出し、指差した。
「ここにそう書いてんだろうが。」
「ば…馬鹿な…僕が書いて捺印した時は100万程度だったはず…」
「ちゃんと見たのか?ゼロを一つ数え間違えてるぞ。」
「それでも一千万じゃないか!」
「あのね、うちは利息が付くの。一千万借りて一千万返せば済む会社じゃないの。まあ、何言おうとあんたにゃ言われた額を返す以外の選択肢は無いはずだぜ?」
男の言う通りだった。はっきり言って、この借用書もでっち上げた偽物の可能性はある。しかしあんな動画をばら撒かれたら最後、昇は表を歩けない。妻からも離婚を切り出されるだろう。αの社会でも笑いものだ。この際、真相は問題ではなかった。
「しかし…一億なんて大金、急には…」
「はあ?!あんたαで旧財閥の御曹司だろ、それくらいはした金じゃねーか!」
「独身の頃ならともかく、結婚している今家の財は妻が管理しているんだ。でも、妻に知られるわけにはいかない…頼む、親族に知られないようにしてくれ!何でもする、何でもしますから!」
昇は机に頭を擦り付け懇願した。今この時ばかりは、αのプライドを平気でかなぐり捨てる事に抵抗が無い。全てを失う危機を解決する事に神経が集中している。
頭を伏せる昇の耳に、男の呆れたような大きな溜息が聞こえた。
ゆっくりと顔を上げると、やはり男は呆れ顔で昇を見ている。
「何でもする…ねえ…」
男の呆れ顔が、何かを閃いたように光った。
「そうだな、あんたん家に押し入ってあんたの妻に詰め寄るのもアリかと思ったが…」
「それだけは!それだけはやめてください!本当に何でもやりますから!」
「分かったよ、俺も鬼じゃないからな。その代わり、ホントに何でもやるんだな?」
昇が何度も素早く頷くのを見て、男はニヤリと笑い腕を組んだ。
怪訝に思いながらも通話に切り替えると、男のだみ声が聞こえてくる。
「尾道昇さんだよね?あんたが保証人になった宇土利一が飛んだよ。」
宇土利一とは、秀勝の友人の名だ。この間頼まれて、昇は彼の借金の保証人になった。その彼が逃げたとこの男は言う。
「誰なんだ、君は。」
聞かずとも電話の相手が高利貸しであり、保証人となった自分への取り立てのために電話してきた事は察せられた。しかしαである自分に対して名乗りもせず、不躾に話し始めるΩであろうこの男に腹が立った。
昇は電話の相手の素性を何も知らないが、高利貸しなどやっているのはΩくらいしか考えられない。少なくともαでない事は確かだ、αは黒社会なんかに潜る必要が無いからだ。
「ああ悪い悪い、俺はその宇土利一に金貸してた奴だ。詳しい話したいから、とりあえず直接会いたいんだけど?」
「良いだろう。」
昇は何の不安も感じていない。自分には頼りになる優秀な弁護士がいて、裁判官もこちらの味方だ。そもそも高利貸し屋との契約など、元々が違法なのだから法的手続きを取れば何も怖い事など無い。
昇は何の考えも無しに保証人になったわけではなかった。
「弁護士なり何なり連れてくるのは勝手だけどさ、そうなるとその弁護士先生にもあんたの糞塗れの姿を見てもらう事になるが、それで良いかい?」
昇の考えを見透かしたように、男が言う。
――なぜそれを…
昇は顔面が蒼白になり、心臓が凍り付いた。
「じゃあ今から30分後にカルロンて喫茶店で待ってるから。あんたの職場近くだ。」
「おい、そんな急に…」
「どうせ暇だろ。」
男はそう言うと、一方的に通話を切った。「どうせ暇だろ」と言われ、返す言葉も無いのが悔しい。実際、昇達αは自由出勤・退勤であり面倒な仕事は全てβにやらせている。しかし手柄はαのものだ。つまり何もしなくても業績は上がる。
すぐ秀勝に電話をかけたが、電話番号が既に解約されていた。
――――――――――――――――――――――――――――――――――――――――
『どう?昇さん、気持ち良い?』
『ああああああ!最高だ!最高だ!一度で良いから、糞尿まみれになってみたかったんだ!』
スマホの中で流れる動画、その中で昇は秀勝に糞尿を浴びせられ恍惚とし、いきり立っている。
目の前の男は動画を昇に見せながら、アイスコーヒーをストローで無表情にすすっていた。
平日昼間の喫茶店、カルロンは客が一人もおらず店員も奥に引っ込んでおり、こんな動画を堂々と繰り広げても何の支障も無いらしかった。
高利貸しの男から漂うフェロモンで、やはり彼がΩであると分かる。丸刈りに近い短髪、体型に合う高価そうなスーツ、一件サラリーマンだが剣呑な目付きで尋常ではないものを感じさせる。
秀勝と付き合い始めてしばらく経った頃、昇はずっと秘めていた自分の欲望を彼に打ち明けた。秀勝は引いたりもせず、快く受け入れてくれたのだがまさかこんな使われ方をされるとは――
「とりあえず、一億払ってくれる?」
男の声が現実へ引き戻す、と同時に昇は驚愕した。
「い、一億?!」
男が紙を取り出し、指差した。
「ここにそう書いてんだろうが。」
「ば…馬鹿な…僕が書いて捺印した時は100万程度だったはず…」
「ちゃんと見たのか?ゼロを一つ数え間違えてるぞ。」
「それでも一千万じゃないか!」
「あのね、うちは利息が付くの。一千万借りて一千万返せば済む会社じゃないの。まあ、何言おうとあんたにゃ言われた額を返す以外の選択肢は無いはずだぜ?」
男の言う通りだった。はっきり言って、この借用書もでっち上げた偽物の可能性はある。しかしあんな動画をばら撒かれたら最後、昇は表を歩けない。妻からも離婚を切り出されるだろう。αの社会でも笑いものだ。この際、真相は問題ではなかった。
「しかし…一億なんて大金、急には…」
「はあ?!あんたαで旧財閥の御曹司だろ、それくらいはした金じゃねーか!」
「独身の頃ならともかく、結婚している今家の財は妻が管理しているんだ。でも、妻に知られるわけにはいかない…頼む、親族に知られないようにしてくれ!何でもする、何でもしますから!」
昇は机に頭を擦り付け懇願した。今この時ばかりは、αのプライドを平気でかなぐり捨てる事に抵抗が無い。全てを失う危機を解決する事に神経が集中している。
頭を伏せる昇の耳に、男の呆れたような大きな溜息が聞こえた。
ゆっくりと顔を上げると、やはり男は呆れ顔で昇を見ている。
「何でもする…ねえ…」
男の呆れ顔が、何かを閃いたように光った。
「そうだな、あんたん家に押し入ってあんたの妻に詰め寄るのもアリかと思ったが…」
「それだけは!それだけはやめてください!本当に何でもやりますから!」
「分かったよ、俺も鬼じゃないからな。その代わり、ホントに何でもやるんだな?」
昇が何度も素早く頷くのを見て、男はニヤリと笑い腕を組んだ。
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