対荒らしの日常は電子世界の中で

織稚 影願

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第二章・影楼編

もう一つの対荒し

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ここは違う世界。
いや、異世界と言った方がいいだろうか。
いきなり目の前が暗くなり、闇を抜けたと思ったら、なにか良く分からない世界。
広き深き森林。
聳え立つ高い塔。
俺はそんな世界に降り立った。
周りには誰もいない。
なるほど、ここに呼ばれたのは俺ひとりのようだ。
いや、他にも呼ばれているのだろうが、この場所には俺ひとりのようだ。
力がわく。現実ではありえない力。
これは………補正というやつか。
主人公補正?いや、そこは分からん。
だが、半端じゃない強さだということはわかる。
そして…………俺には能力があるということも。
特殊能力のようなものみたいだ。
感覚でしかなかったが、それでも、実感していた。
そして確信できた。
異世界のようなところに来た時点でその力を持っていてもおかしくはない。
ただ、それだけでなく、ここに降り立つ時、無意識に宙に浮かんだからだ。
それは詰まり、浮遊能力
おそらく、持っている能力はそれだけではない。
俺は感覚を研ぎ澄ませ、少し意識をして、頭の中で命令した。
『このへんの人や敵などを索敵しろ』
と。
そして………引っかかったようだ。
人数は40。
ここからそう遠くないところにいるらしい。
その中に二つだけ、飛び抜けて強い反応。
片方は飛び抜けて強いどころではなく、もしかしたら一番強いかもしれない反応だった。
もうひとりの方は、普通に強い、と言ったところか。
ただ、この索敵に引っかかったもの全て敵ではないだろう。
おそらく、俺と同じで……この世界にのだろう。
俺は少し浮かび、山の向こうの、40人のところへ向かった。

さて……困ったものだ。
まさか、40人の中に。
がいるとは思わなかった。
本家Gizelを名乗ってはいるが、明らかに俺と同じ外見だ。
なるほど、この世界ではGizelと俺は別々なのか、と納得した。
そしてその事実に……前途多難な様子を浮かべてしまった。
これ………俺ら混乱するやつやん………。

どうやら、もうひとりの強い反応について行くようだ。
あの感じからすると、おそらくN君だろう。
俺もN君について歩こうとしたその時。
「あれ?影楼……?」
聞いたことのない女の声が聞こえた。
振り返ると、そこにはそれはもう美人と言うべき女の人が立っていた。
「影楼………だよね?黒いし、強そうだし。なんでこんな所に………」
俺はその女性の顔を見たことがないので、誰だろうか、と戸惑った。
すると、彼女は思い出したかのように言った。
「あ、私は詩音だよ。顔見るの初めてだよね。」
なるほど、詩音だったか。
それなら、影楼に執着してそうな感じも分からないでもない。
「詩音か、会うのは初めましてだな。よろしく。」
「ん、よろしく。それで影楼、あなたどうしてこんな所に?」
「んー、なんて言ったらいいのかな………転生?」
転生………と言うよりは、転移に近かったが。
「あっ、召喚されたの?今日?」
「あー、そう。今日召喚されたんだ。」
「あー、それでそんな戸惑ってたんだ。」
いや、それは違うが………まぁいいか。
「それより、ここはなんなんだ?異世界っぽいが………いや、でも詩音いるし………」
「えっと、異世界は半分正解。ここはLINE民がいるところだから……」
「電子世界か?なるほど、それなら納得が行く。どうせあれだろう、馬鹿げた荒らしの団体……そうだな、α帝や光ロン辺りがこんな世界でも作り出したんだろう。」
そしてそこに俺たちLINE民を呼んだ。
「その目的は……ゲームとかじゃなく、人を殺すこと、か?宣戦布告でもして、電子世界で死んだら外の世界で生きていないことになる、みたいな………。そうすると、今も戦ってる最中か?」
「あっ、えっと、影楼……ほぼ正解。と言うか、凄いね、よくこんな少ないヒントでそこまで………」
「俺を舐めてるのか、それは?」
「あ、いや、ちがっ」
「まぁいい。それより、ここがLINE民の世界と言うならば………」
それならあるはずだ。
が。
そう…………俺たちのホームと言えるもの。
「うちの団体もあるんじゃねぇの?」
LINE民が所属する、団体。
俺の場合、対荒らし団体。
そして、俺の持っている団体もあるだろう、と。
俺はそうあたりをつけていた。
すると、詩音は迷わなかった。
「あるよ。今からそこに案内しようか?
俺の持っている団体……つまり、俺が団長の団体。
その団体の名前は。
『影皇龍騎士団』
LINE界最大規模の団体で………数年間無敗の団体。
そして何度も言うように、俺はそこの団長。
影楼かげろうと呼ばれている。
さらに、自分で言うのもなんだが、対荒らし界の頂点に君臨する。
(さて………以前の世界はつまらなかったが………)
俺は以前の世界が嫌いだった。
何も楽しいこともない、あれをやれこれをやれと周りがとやかくうるさい。
つまらない世界とまで思っていた。
(この世界は楽しいといいね…………)
しかし、俺はこの世界に期待していた。
詩音についていきながら……不敵に微笑み、こう呟いた。
「さぁ、俺達のゲームの始まりだ。」
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