Crowd Die Game

織稚 影願

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第一章・1stGame~3rdGame

第二プロローグ&9話.チーム結成。そして、対峙

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第二プロローグ・地獄?いいえ、戦場です

俺達は、何を見ているのだろうか。
いや、それはわかってはいる。
わかってはいるけどわかりたくないのだ。
目の前で起こる───戦争を。
比喩ではない。
本物の……戦争だった。
人は死に、場は火薬や血で咽せ返るような臭いが充満していた。
鮮血に染められた武器を片手に、兵士たちは戦っている。
しかしこれは、夢ではない。ましてや、ゲームでも、異世界でもない。
現実の───日本だ。

9話.チーム結成。そして、対峙

戦争を見る、一週間前。
俺達はクラン名を決める話をしていた。
「クラン名……どうするんだ?」
まずは、ガランの言葉から始まった。
今まで、クラン名もなしに戦っていたが、クレナイが
『カガリってやつが、NamelessClan名も無きクランか……って言ってたよ』
と言ってきたため、クラン名を決めることにした。
ちなみに、この話し合いに参加しているのは、リューネ、マーリン、ガラン、クレナイ、アレス、そして俺だ。
クウガは、「ナードの名前を入れろ!」とうるさかったので、どっか行かせた。
他のメンバーは、いつもの指示通りに動いてくれている。
「そうだね……ハーデス、聞いていい?」
クレナイに突然そう言われ、俺は戸惑ったが、すぐに答えた。
「なんだ?」
「あんたの……この世界に対しての気持ちと、目標を教えてくれる?」
なんの役に立つのかは分からなかったが、俺は少しも迷わずに答えた。迷わなかったのは、クレナイに対する信頼があったからだろう。
「この世界には……ネメシス様が仕事しすぎてるって思ったな。目標か……とりあえずはこのゲームのクリアかな」
そこでみんなに疑問が浮かんだ。
「ネメシスって……なに?」
と。
ネメシスとは、因果応報や復讐の女神である。
このゲーム……因果応報という言葉が似合うくらいに、自分に返ってくる。
もちろん、いいことも、悪いこともだ。
タカを括っていたから、マーリンが傷ついたりした。ナードも、死んだ。
そういう意味も込めて言った。
そして、それをみんなに伝えると、一斉にこう言った。
「それだぁ!」
と。
こうして、俺達のクランは、『NEMESIS』という名前になった。

しかしクラン名が決まったものの、まだまだ決めなければいけないことがいくつかある。
まず、クランフラッグ。これは各自でデザインはしろということらしく、デザインしないと勝手に変なものを作られるらしい。
ということで、デザインをクレナイに任せた。俺の知る限りでは一番絵が上手い。
あの襲撃から一週間。
建物もだいぶ……って、ん?あれ?
「あ、ハーデス!見てみて!」
「リーダー、完成したぞ!」
そう……出来ている。
あの、屋敷が。
───早くね!?
耐久とか諸々怖いがまぁ、建設業の息子もいるから……そこの部分は少しは安心か。
それに、雨風は凌げるからいい。
だが明らかに早すぎるとは思った。しかしそんなことも気にせず、俺はみんなに言った。
「みんな、お疲れ様!今日からは、この家を使って生活することにする!ここが拠点だ!ここを基準にみんなは探索に出かけるなりをしてくれ!では、今日はもう解散!自由にしていいぞ!」
俺は一通り言うと、一人、森の中に入った。
森は、昼なのに薄暗く、見通すには視界が悪すぎるほどだった。
まぁ、暗殺者とかなら絶好のスポットなんだろうが。
そんな森の奥へと進むとひとりの少女がいた。
石の前で、なにやら呟いている。
「ねぇ、ナード……クラン名、決まったよ……ってまだ、決めてる途中みたいなんだけどね……このクランも、活気づいてきたよ。いい人が揃ってていいね。このまま、ゲームクリアされそうだよ。……だから、まだ見守っててね……まだ……行けそうにないから…………」
その少女はクウガだった。
何を呟いているのか、あまり聞き取れなかったが、おそらくナードへの手向けの言葉だろう。
クウガはみんなが思うより健気で、初々しく、愛らしい子だ。
俺はそっと近づいた。
「ナード……、頑張るからね……ひゃっ!?」
クウガが驚いたのは、話が終わると同時に俺が抱きしめたからだ。
「──私、とかいうんだな、お前」
いたずらっぽくそう耳元でささやくと、クウガはもだえ始めた。
「ひゃう……わ、悪い……?」
「いんや?可愛い。普段からそうしてりゃいいのに」
いつも思っている事だ。こんなに可愛いのに、それをまるで格好をしている。そして、男性陣に負けじと先頭にも出張る。
俺としては、大人しくしていてほしい。
「……いいじゃん別に……」
「よくなぁいー。俺は出来れば一人も死んで欲しくないの。ナードはまぁ……俺が行くのが遅かったから……死んだけど、お前が死なずに済むなら殺したくない」
察しのいいことを願って、クウガにそう言った。
なんの脈略もないように見えて、実は結構関係している。
「……ねぇ、それってさ……」
しかしクウガは、いい方には取らなかったようで。
こちらを睨んで、怒ったように、言った。
「……僕が足でまといってこと?」
「────っ……!」
そのとおり。先ほどの言葉を普通に受け取ると、そうなる。
そんなことを言われて怒らないわけがない。
「……違う。お前は充分頑張ってる……でも」
「じゃあ何でほかのみんなはいいの?ほかのみんなは…………戦わせてもらえるじゃん……みんなは死なないって思ってるんでしょ……?なら、そんな言葉を言われた僕は……」
「────違う!……違うんだ。本音を言うと、こんなゲームすぐにでも放棄したいし……みんなを戦わせたくない……でも、戦わせなきゃいけないんだ……正直言うと、クウガはたしかに弱い……と言うより、か弱い。でも……」
俺は、今どんな顔をしているだろう。
おそらく涙は出ていない。ナードが死んで、涙というものは出なかった。
だが……泣きそうな顔だろう。
俺は息を吸って、吐くように言葉を繋いだ。
「でも、お前にはお前のいい所がある。みんな……というよりは俺だけかもだけど、癒されてる。それに、仲間を思う気持ちが強い。その気持ちで、みんなの士気も上がる。いいところもあるんだよ……」
すべて吐き捨てると、俺はクウガに向き直った。
いつの間にやらクウガはこちらを向いていて……震えている。
「それに言っただろ?……守るって」
そう言うと、緩んでいた腕をもう一度強くして、また、抱きしめた。
クウガへの、愛も込めて。
「……わかった。守られる。だから……」
クウガもまた、強く抱きしめてくる。
そして、縋るように言った。
「──だから、死なないでね、ハーデス」
すると彼女は手を離し、どこかへと走り去っていった。

「ハーデス!捕まえた捕虜からいい情報聞いたよ!」
森から戻ると、唐突にリューネがそう言ってきた。
捕まえた捕虜と言うと、少し前にクレナイが捕まえた、あの5人だろうか。
捕虜から情報を聞くために、俺はリューネのあとをついていった。

「手短に言うと、トルスートイは、ここから西に行った『クルリア』という所を拠点にしている」
捕虜の前に着くと、唐突にそう言われた。
どうやら情報として、味方を売ったらしい。まぁ、実に人間らしい答えだ。
しかし不自然だな……クルリア?だと?
「なぁ、そのクルリアって場所、どんな場所だ?」
「普通に街だったな。こんな感じではなかった。どうしてだ?」
明らかにおかしい。
街も生成されている……ということは、ということだ。
住人もいないのに、街に発展できるわけがない。
もしくは……誰かが作り出した?
「……なぁ、クウガを呼んできてくれないか?」
俺はリューネに頼み、早急に呼んできてもらった。
明らかに……おかしい。

「誰かが作り出したとかは分かんないけど、時計うさぎが作った世界だから、街があってもおかしくはないんじゃないかな?」
駆けつけたクウガにそう聞くと、そんな返答がきた。
なるほど、たしかに間違いではない。
だがそれは……時計うさぎがそんなものを作るほどの力があるということだ。
ならばなぜ……こんな大量殺戮のためにを開く?なぜ……
罪のない犯罪ほど厄介なものはないが……そんなもんじゃない気がする。
それに、あいつは結構俺らの方を気にかける。
──なにが……あるんだ?
しばらく悩んでいると、クウガが俺の手を握って言った。
「考えても仕方ないよ。今はまずクリアしないと。ね?」
首を傾けて笑っている様は、とても可愛いとしか言えない。
素晴らしく……可愛いです。

とりあえず俺は、クウガの言う通り、クリアをすることに専念することにした。
しかしまだ、頭の片隅では時計うさぎのことで気になっていた。
捕虜たちは、街があるのを前から知っていた、と言った。
つまりは、そんなヒントを教えていたということだ。
しかし、俺達の方には教えられていない。教えなくても、勝ち進んでいくだろうという自信があったのか?そんなことに賭けているのか?それとも、俺達が負けないという確証でもあるのか?
しかし考えても結論は出ないため、次第に気にしなくなっていった。
そして俺のとった行動はただ一つ
「偵察しよう。クルリアへ行って、トルスートイを」
街を見る。そして、トルスートイの戦力を見る。
まぁ、戦力がどのくらいだろうが負ける気は無いのだが、念のため。それに、頭の人となりによっては、戦闘にならない場合もある。
そういうわけで、少数精鋭で、クルリアへ行くことになった。

森を舗装されてできた道を通って1時間20分。
やっと街らしきものが見えていた。
恐らくここが──クルリアだろう。
「へぇー……綺麗な街だなー」
外観はすごく綺麗で、建物も綺麗に掃除をされている。
とても賑わっており、おそらく一つのクランだけで存在しているわけではなさそうだ。
大通りと思しき道を突き進み、中央広場と標識らしきものに書かれていたその場所は、中心に噴水があり、とても落ち着く場所というよりは、祭りをする場所だった。
「いいねー。でも、この人の多さ、ある意味不自然だよね」
そう言ったのはリューネだった。
たしかに、多すぎると思う。
クラン数的に言うと5、いや10クランはいるような気がする。
それに、その人たちは、笑ってはいるものの、どこかぎこちない様子も見受けられた。
そしてその人たちに、俺は違和感を覚えた。
立派な街と化したクルリアの道をまっすぐ進み、奥にある大きな屋敷の前に着いた。
ここがトルスートイのトップ、熊取屋の屋敷だろうか。
「お前達、ここに何のようだ?熊取屋様に用があるのであれば、事前にアポをとってくれ」
門の中に入ろうとすると、警備兵らしきものが走ってきた。息を切らして止めてくる。
しかしそこで止まる俺たちじゃなかった。
「残念だがアポはない。だが、俺達のクランがトルスートイに用があるといえば、少なからず無視はできないだろう?」
他クランがトップに用があるということは、宣戦布告か、同盟協定かだ。
もちろん、戦争を起こすのはあまり好ましくないので、同盟協定を結びに来たのだが、それだけではない。今回はお願いもあった。
警備兵は走って中に入り、しばらく戻ってこなかった。数分してすぐに戻ってくると、俺たちにこう告げた。
「いいぞ、通れ」
そう警備兵が言うと、俺は先へ進んだ。
屋敷の中は綺麗で、調度品なども高級そうだった。
森の中に拠点を立てているようなうちのクランとは大違いだ。
少し進むと、広いところに出た。
「ここは……エントランスか?すげぇでけぇな」
「そうだろう?    君たちもこの街に来たら、ここまでとはいかないが、素晴らしい家をあげようではないか」
俺が呟くと、どこかから声が聞こえた。
周りを見渡すと、1人、老紳士のような者が立っていた。
「私の名は、加賀見。この屋敷の執事だ。さぁ、こっちで、熊取屋様がお待ちだ。来るといい」
 加賀見と名乗るその男は、くるりと踵を返し歩を進めた。
 俺達はそれに追いつこうと必死に走った。
 その時ふと、奥に格子状のものが見えた気がしたが、今は気にしないことにした。

「よく来たな!    名無しの権兵衛よ!」
 加賀見に案内されて入って部屋には、いかにも豪快そうなおっさんが、女の子を侍らせて座っていた。
    ──こいつ……もしかして……。
    俺は必死に笑顔を作り、おっさんに言った。
「あぁ、あんたが熊取屋か?    俺はハーデス。今後とも、よろしく頼む」
    俺が一言そう言って、手を差し伸べると、熊取屋もにこやかに握手をしてきた。
「こっちこそよろしく頼むぜ。まぁ座れや。立ち話もなんだろ」
俺達は促されるままに座るが、しかし警戒は解かなかった。
そんなことを知らぬ素振りで、熊取屋は話を続けた。
「んで、名無しの権兵衛さんが、うちのクランになんの用だ?」
「まず訂正させてくれ。うちのクランは名無しではない。ネメシスだ」
「お、そうか。すまんな」
熊取屋は大人しく謝った。なんだか、調子が狂うような気がする。
しかしそこは大人のやり方。自分の非は素直に謝るものだろう。
「それで、用だが……うちのクランと同盟をか?」
「……同盟を組みたいか、だと?」
どうやらその発言が引っかかったらしく、そこに追及を重ねた。
そう、組ませてもらえるか、ではない。組みたいか、ときいたのだ。
それは言わば、挑発にも近く、ヘタをすれば戦闘が起こるレベルの発言だった。
「……それは、喧嘩売ってるっつうことでいいのか?」
「まぁ、そう捉えるだろうとは思ったよ。とりあえず俺の話を聞いてくれ。話はそれからだ」
俺は両手をあげて言った。
両手をあげるということは、戦う意志がないことを伝え、また、武器類を手に持っていないことを表す。つまりは、ちゃんと話し合いをしよう、ということだ。
「なんだ。話してみろ」
熊取屋は馬鹿ではない。俺の意図を汲み取り、話を促した。直感だが、この人はうまい、と判断できた。
「単刀直入に言おう。俺にはこの街を一撃で破壊できるほどの力を持っている。そんなヤツ相手に立ち向かうのか?」
これは、ほとんどブラフだった。
少なくとも、その場にいた全員がそう思っただろう。
ただ一人、クレナイを除いて。
「この人はそんなことできるレベルで強いよ。破壊されてもいいの?」
クレナイはただただ、ハーデスに対して狂信的だった。信じていたのだ。ハーデスの力を。
俺も一応、出来ることは出来た。ただし、力を隠したい今、そんなことはあまりやりたくない。
だから、ブラフであっても乗ってくれることを信じた。
「街を一つ破壊……か。そんなことできるのか?」
熊取屋は、やはり疑っているようで、訝しげにこちらを眺めた。
「できるさ。正直、俺はこのゲームで唯一魔神に勝てると思っている」
同じ力を持つもの同士の戦いならば、他に優れた才能があるものが勝てる。それは物事の道理というものだ。魔神を知らないが、確信を持ってそう言える。
「お前がか?そんなヒョロっちい体で?」
しかしそう簡単には信じないようだ。
まぁ、当たり前といえば当たり前の反応ではあったが、しかしこいつは俺達のクランの強さを知っているはずなのだ。捕虜達を派遣したのは──この熊取屋なのだから。その捕虜たちが帰ってきていない時点で、やられたと判断しているだろう。
「もちろん。確実にな。強さは知っているだろう?」
「そういえば、派遣した仲間が未だに帰ってきていないが……なに、もしかして……?」
「その通りだ」
熊取屋は察しがいいらしく、すぐに捕虜たちのことを考えた。俺は後押しするように、言葉を続けた。
「あんたらの派遣隊員はこちらで預かっている。この場所の情報も、その捕虜から聞いたものだ。もちろんそれだけじゃない。あんたのことも知ってるぜ?」
「なんだと……?」
これの意味するものは、熊取屋にだけは分かっているようだった。後ろでクレナイも頷いている気がするが、それは気のせいだと思っておく。
「……何が言いたい。捕虜を殺すとでも言うのか?」
熊取屋が悔しそうに言うが、しかしこいつは勘違いしている。
「殺しゃしねぇよ。ただし、このクランの秘密をバラしてやる。町民にばらされたら困るのは誰だろうな?」
それは、脅しに近いことだった。後ろでみんなも驚いたような顔をした。
熊取屋が焦ったように笑い、言った。
「──はっ、秘密を知っている、だと?嘘はよせ。そもそも俺たちに秘密など──」
「──エントランスホール奥にある鉄格子」
あたかも平然と嘘をつく熊取屋に、真実を突きつける。
「……なんの話だ?」
「別にまだ民衆にはバラしゃしねぇから、俺の話を聞け。秘密を教えてやる」
そう言って俺は不敵に笑い、熊取屋に指を突きつけた。
「そこにいる女性達。そして、牢屋に入れられている女性達。そいつら全員……」
ここで俺は一旦言葉を切り、深く息を吸って、言った。
「──他のギルドから拉致した、脅迫材料だろ?」
ここにいる人たちはすべて他のクランの人たちだ。そんな人が、他のクランに全権を預けるわけがない。そもそも、街の人たちを見て思ったのだが、各クランのメンバーとわかるよう、体の一部に印がされていた。
マークのようなものもあれば、ロゴ的なものもあったため、おそらく旗なのだろう。そして──その旗印が、その女性達にもついていた。
となると、侍らせれる理由はただ一つ。脅すために拉致したしかない。
自ら進んできたのであれば、街の人たちがあんな表情をするわけがない。
あの時感じた違和感の正体は、これだったのだ。
みんな、ここにいたくている訳では無いのだろう。
そしてあの鉄格子も、拉致した女性を入れるために作ったもの。それも、わざと俺たちにも見えるように、わざわざ一階に作っている。もっとも、俺たちに見せるのではなく、見せしめとして、街の人たちに見せるつもりだったのだろう。それを俺に暴かれたということだ。
「……それがどうした?」
どうやら熊取屋は否定する気もないらしく、むしろ肯定とも取れる言葉を発した。
「認めるんだな?じゃあ……」
「──ただしそれは、町人も周知しているだろう。今更ばらされたところで問題は無い」
俺の言葉を遮り、熊取屋は言った。
──違うんだよなぁ、これが。
街の人は不自然な程に多かった。まぁ、脅して味方に引き入れたのだからおかしくはないのだが、しかしそれに対する、通常ならば矛盾している点があった。
この屋敷は、縦にそんなに長くはない。大豪邸ではあるが、極端に縦に長いような変な豪邸ではないのに、だ。
牢屋が一階にある、ということは、地下に入れる、ということをする気は無いのだろう。それでも、クラン数は大体50は超える。そして、牢屋は1列にしか並んでいなかった。
明らかに、牢屋の数が足りないのだ。一人ひとつの牢屋であることには違いない。そこまで広く無いのは、見てわかったからだ。ならば、なぜその量で、普通に足りているのか。
答えは簡単だった。
「お前の隠していること、それはな……脅している事じゃねぇんだよ……」
熊取屋がなにかに気づいたかのように、立ち上がった。さすがクランリーダー、察しがいいな。
しかし、今更止めたところでもう遅い。
俺は、不敵に笑って、言った。
熊取屋の隠している、秘密を。
「拉致した女性を殺している、ということだよ」
それこそが、牢屋が少なくても多くのクランがいる理由。
脅し対象は、もう既にいないのだ。それを知れば、町人はどう思うだろうか。
勘のいい町人ならもう気づいているだろう。閲覧可能な牢屋に、いない人がいたら、誰だっておかしく思う。
だが、全員に知らされることはない。一町人が、下手に訴えかけたところで、何も意味が無い。
しかし、俺達は違う。他クランのリーダーがそう言うのだ。それも、自分たちの味方をしてくれる、強いクランのリーダーが。流石にそうなると、信じざるを得ない。
「……何が望みだ。早く言え!」
熊取屋は、これについても否定をせず、むしろ焦ったかのように声を張り上げて言った。
──そんなに叫ばなくても聞こえるっての。
「望みだなんて、大それたもんじゃない。ただ、俺達のクランとな……」
次にいう言葉は、誰も予測していなかっただろう。
熊取屋も、加賀見も、そして、ネメシスのメンバーも。
なぜなら……
「俺達のクランと、戦ってくれ。ルールはフラッグ戦。人殺しはあんまり好きじゃないから、殺しなしのルールでな」
同盟を持ちかけると思われたこの流れは、しかし宣戦布告のためのものだった。
同盟なんて冗談じゃない。同盟を組んだところで、それは対等になったと言うわけでもないし、自分のクランのことは自分たちで何とかする、と思っていたからだ。
そこで至った結論が、宣戦布告だ。
周りを見ると、やはりみんな驚いたような表情をした。その状態が、しばらく続く。
「────本気で……言っているのか?」
最初に沈黙を破ったのは、熊取屋だった。
「やだな、冗談で俺がこんなことを言うとでも?ありえないな。本気に決まっているじゃないか」
「ハーデス、馬鹿なの?」
その言葉は、冷たく突き刺さる様な声色だった。その言葉を発したのはクレナイだ。
「いいや?正直言うと、俺はお前らトルスートイが気に入らねぇ。ってか、お前らに怒ってる」
俺は正直な気持ちを言った。嘘偽りのない、本音を。
「人を殺すなんてこと普通にやってるし、拉致してまで、味方を手に入れるし……お前らと同盟組みたくないって思った」
まぁ他にも目的はあるのだが。
「だから、宣戦布告……ね?まぁ、分からないでもないよ」
「私は、ハーデスの意見に合わせるかなー」
そう同意してくれたのは、リューネとマーリンだった。
クレナイは、渋々ながら、だが、こちらを見て頷いた。
仕方ないと思ったのだろう。
「さて、熊取屋さん。どうする?バラされるか、宣戦布告するか。できれば今すぐ決めてほしいんだが……」
「──いいだろう。殺しなしのフラッグ戦、受けてたとう」
俺が言い終わるよりも早く、熊取屋は返事をした。
──予想通り……だな。
こうして、俺達のクラン、ネメシスと、トルスートイの戦争が決定した。
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