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第一章・1stGame~3rdGame
戦争。そして、対峙
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「ねぇ……」
高い声が響いた。
そこは自分の知らない、空間だった。
暗い、何も見えない空間。
そこにまた、声が響く。
「君の守りたいものって一体なんだい?」
「ぼくがまもりたいもの?んーとね、ぼくはなにもまもらないよ!だって──」
その声は、聞き覚えがある幼い声だった。
どこか懐かしい……知っている声。
声は続けた。
「──だって、まもるひつようがないもの!まもるくらいなら、ゲームのなかのやつみたいにこわしてく!そのほうがおもしろいでしょ?」
そこで俺の意識は──途切れた──。
「──っはっ……!?」
今のはなんだったのだろうか。どこかで聞いたことがあるような内容だったような……夢にしてはリアリティが高すぎるし、そもそも俺は今の言葉を知っている。どこで聞いたのかは忘れたが……。
「同化したの?ハーデス。うなされてたみたいだけど」
「あぁいや、なんでもない。それより、みんな準備できたのか?」
どうやら俺は寝ている間隣に響くくらいずっとうなっていたらしく、心配そうにクウガがこちらを見ていた。
「準備できたよ。ハーデスも早く準備してね」
クウガはそう言い残すと、さっそうと部屋を出ていった。
俺は手早く準備を済ませ、部屋を出た。
広場に集まると、そこはガヤガヤと少し騒がしく、とても全員に挨拶ができる状態じゃなかった。
だがリーダーとして、大事なことを伝えないわけにはいかない。俺は大きく息を吸って、叫ぶように言った。
『しゅうぅぅぅぅぅぅごぉぉぉぉおう!』
すると、さっきまで騒がしかった団員たちが、さっとこっちを見た。そして号令通りに集合した。
ネメシスは大体十四の班に分かれている。前にも話した、小隊というやつだ。四人一組 で隊を組み、様々に分かれて行動する。十四小隊分となると、大隊に直すと三大隊と二小隊だ。それに加え、上層部5人がいて、数的には三大隊と三小隊。そしてそこに捕虜たちが入る。となるとだいたい四大隊分は人数がいることになる。ちなみに二人余るがそこにはクウガと捕虜のブレインの、二人の非戦闘員が入れば、全員が隊につく。二人は癒し隊だ。
だがまぁ、上層隊は基本的に出ないことになっている。上層部で三大隊と二小隊に入っているのは、ガランとクレナイだけだ。それ以外は基本待機、戦略を考えることになっている。主に考えるのはハーデスだが。
そしてその小隊ごとに今は並んでいる。小隊長に点呼を取らせ、俺は続けた。
「今日から戦争が始まる!だが、安心してくれ!」
戦争をするというのに安心をするという、矛盾に近いこの言葉に、しかしおかしな所などなかった。
「この戦争において人が死ぬ事は無い!安心して突っ込んでくれ!そしてもう一つ!」
聞いているみんなは、まだあるのかという思いと、なんだろうという思いが入り混じったような顔で、こちらを見てきた。
俺は大きな息を吸い────
「この試合……勝つぞ──!」
叫ぶように言った。
「うぉぉおぉぉぉお!」
「よっしゃあ!やったるでえ!」
「手柄はもろたる!」
「いや、俺が手柄立てるんだ!」
皆口々にそう意気込みを語った。また奮起して叫ぶ者もいた。
だが誰一人、敗北を恐れる者はいなかった。みんな……勝つと信じているからだ。
そしてその信じている心こそが、勝つための一歩へと繋がるのだろう。
上層部のほかの6人も、そう信じていた。
そう……誰一人、疑うものなどいないはずだった。
みんなの奮起が終わるのを待ち、俺は続けた。
「みんな、行こう。作戦は各自小隊の小隊長に聞いてくれ。では……出発!」
その言葉を皮切りに、みんな戦場へと走り出した。
そうだ、今からみんな……戦争をするんだ。
かつて、1940年代にあった、第二次世界大戦。それを経験していない者達が、今から戦争をする。それは誰も想像していないことが起こるだろう。
例えば──作戦通りにならなかった、とか。
それを誰も気づかずに、ただ1人、ブレインだけは恐れていた。
起こるであろう、全ての可能性を。
「──よぉ、ハーデス。今日はよろしくなぁ?」
「こちらこそよろしくだ。ルールは決めたとおり、ペナルティもだ。そっちサイドは準備はいいのか?」
「もちろんだ。1週間ずっと準備してんだよこっちは」
戦場である砂漠平野というところにつくと、熊取屋が片手を挙げて声をかけてきた。今から戦争をするとは思えない、朗らかな笑顔だった。
準備と言うと、軍備とかだろうが、しかしこっちはそんなもの用意していなかった。ただ武力のみ。武器に扱われるような敵と違い、武器を扱うための訓練をしてきた。
「──へぇ。生憎こっちもだよ。んじゃあ」
「おう」
「始めさせていただきますね。各自配置についてください」
「「うぉぉあ!?」」
急に現れた時計うさぎに、流石に驚いてしまった。
いつからいたんだ……。そもそも、ある程度強くなり、その上気配察知能力が高いクレナイに気付かれずにここまで来ることは不可能だが……クレナイも驚いている様子から、気づかなかったのだろう。もはや人間業じゃない。
というか、時計うさぎに対して何も知らないが……本当に人間なのだろうか?クウガやナードは運営側だが、人間だ。ということは人間なのだろうか?
「やぁや──じゃなかった、こんにちは、皆様。今日はいい戦争日和ですねぇ」
気楽に、しかし妙に丁寧にそう言った。
確かに天気は晴れではあったが、しかし戦争日和というのも……あまりいい言い方ではないと思えた。
なにか言い直したようにも思えたが、気のせいだと思って、俺は踵を返した。
「まぁとりあえず、始めるか。時計うさぎ、俺達はどこに行けばいいんだ?配置とか言ってたが……」
「あぁ、そうですそうです、言うのを忘れていましたね。えぇ、我々で勝手に開始位置を決めさせてもらいました」
そう言うと時計うさぎは、大きな地図を地面に広げた。
その時起きた風に、砂埃が舞った。
「ゴホッゴホッ……ゲフン!」
砂埃で俺は思わず咳き込んでしまっていた。
一応手で口を抑えていたが、果たしてその意味はあったのだろうか……。
「おっと、申し訳ない」
「失礼、いや大丈夫だ、続けてくれ、時計うさぎ」
時計うさぎがそれを見て手を止めたが、しかしまずは話の方が先決だ。自分のことなどどうでもいい。
「わかりました。では、御二方、こちらの地図をご覧ください」
「もう見てる」
「むしろ見るなってのが無理な話だろ」
「まぁそうですね……」
地図の大きさは大体二畳分ぐらいだろうか。こんなに大きな地図、どう足掻いても目に入る
「えーでは、まずですが……」
時計うさぎが説明に入った。時計うさぎの説明は長ったらしいので要約すると、開始位置は戦場の両極端。時計うさぎの合図により開始とする。
ルール違反などについては、時計うさぎがちゃんと見ているだけでなく、運営側の者がちゃんと観察しているらしい。観察者と言うらしいが、信頼できるような審判ではあるということだから、ルール違反を見逃すことはないだろう。つまり、この戦争で人は死なない。本来なら。
と、まぁこの程度の説明にだいぶと長く話し込む時計うさぎを見て、俺は一言
「もう始めていいか?」
単純な一言だが、熱の入りすぎている時計うさぎを止めるには充分だった。
「あ、はい、そうですね。各自位置についてください。開始位置についたと確認してから5分間だけ、時間をとります。その間に作戦会議等は済ませておいてくださいね」
そういうと、時計うさぎはその場から姿を消した。もう移動していいということか。
俺は指定された位置まで移動すると、熊取屋達がいるであろう場所を一瞥した。その時ふと、熊取屋と目が合ったような気がしたが……気のせいだろう。
どうやら向こうも指定位置に着いたようで、時計うさぎが開始の合図を告げるのが聞こえた。
そうして、戦争が始まった──。
「俺達の作戦は簡単だ。広がって攻める。ただそれだけだ。それと、俺達は後ろで指示をする」
それはただの確認。既に作戦は伝えてあるので、本当に確認でしかなかった。
しかしその確認が大事である。
現場指揮官は二人。もちろんガランとクレナイである。他は後ろでの指揮へと専念する。
「最初は広がって進んで、できるだけ一体二に持ち込む。まぁ相手の数の方が多いから、持ち込まれるかもしれんが、そこは、現場指揮官たちが何とかしてくれると信じよう。とにかくそうやって進んでく」
一通りの作戦を伝えて、俺は言った。
「この戦争、勝つぞ。俺達も全力を注ぐ。だからみんなも、ついてきてくれ!」
その一声で、歓声が上がった。その声は、期待の声だろうか。
そしてそれを皮切りに、全員が進軍を始めた。
遂に始まる。そんな気持ちだった。
俺は本部に戻ることをせず、きっと睨みつけるように相手本陣を見た。
その先には、熊取屋がいた。
熊取屋は気づいていないが、見えていないのか。確かに距離はあるが、ゲームが始まり身体能力が上がっている今じゃ、見えてもおかしくはない。だが、気づいていない。
気づかないフリなのかは分からないが……とりあえず今のところはいいだろう、そう思って俺は、目を閉じ──ようとした。だが、その一瞬で、熊取屋が不意にこっちを見るのを感じ取った。実際に見たのかは分からないが、おそらくこっちを見た。
いや……まだ、見ていた。
「やっぱ見えてるよな……まぁ、そうじゃないとな……!」
あとは途中まで作戦が上手く行けばいいが……。
そう思い、俺は少し視線を落とし、戦場を見た。
武器を銃器にしている者も沢山いた。それはこちらだけでなく、相手もだ。
硝煙と、血のむせ返るような臭いが、ここまで届いた。
不殺の戦争だが、しかし血は出るのは仕方が無いとも思える。
しかし、今思うとこの不殺の戦争……我ながら矛盾していると思う。
今まで散々──とは言っても3人だが──殺してきておいて、都合の良い時だけ不殺の精神を貫く。その矛盾さに、思わず笑いがこみ上げてくる。
だが……極力人が死ぬのは避けたい。
俺のこのゲームにおける最終目標。それを叶えるためだ。
目標のために犠牲を厭わない、なんてやり方は嫌だ。むしろ、犠牲は厭いたい。
だからこそのこのルールであり、そしてペナルティだ。
とは言っても中にはいるだろう……ルールを破る、戦闘狂が。
「ひゃっはぁぁぁあ!こんなに人を殺せるチャンス!ありがてぇぜぇ!」
そう言っていた殺人狂は、5人目を殺し終えた辺りで時計うさぎに止められた。
「ルール違反です。それ以上動かないで」
少し動くのが遅くなったようで、いきなり何人か死んだが……しかし思ったよりちゃんと見張ってはいるようだ。意外としか言いようがなかった。
正直この戦争は、時計うさぎに全くの得がない。デスゲームを開催するということは、人が死んで行くことを望ましく思っているというわけで、となれば人のあまり死なないこの戦争は、時計うさぎにとっては意義がないようにも思える。
だが、何故か協力的だ。そこが不思議で仕方が無い。何故だろうか……そうなるとこのゲームの意図がよく分からなくなる。
「一体あいつは……何がしたいんだ──?」
戦場の中で一人、ヴァルキリーの如く敵をなぎ倒す影があった。
ネメシス一のスピードアタッカーであり、ブレインの役割を持つことも出来る紅蓮に染まる忍び装束を着た──クレナイだ。
クレナイはしかし、人を殺さずに、血を浴びている。だが何故かという疑問を抱く者はその場にはいなかった。
クレナイは足や腕を切って戦闘不能にしているのだ。だから、返り血を浴びる。人を殺さなずに戦闘不能にする、ということに慣れているような戦い方だ。
しかしそんな止まらないクレナイだが
「お嬢さん、その辺でどうかな? このままだと我々は負けてしまうよ」
そんな声が聞こえ、すぐに防御体勢になるクレナイ。
しかしいくら待っても攻撃は来ず、チラリとそこに目をやると、一人の男が悠々と立っていた。
「なっ……えっ……!?」
クレナイは驚愕で言葉が出なかった。男がいたからではない。その男以外全員いなくなっていたからだ。
「……ほかの奴らはどこに?」
「なぁに、あなたの知る必要の無いことだ。それよりも、随分と多くこちらの人員を減らしてくれましたね……」
そう冗談めかして言うものの、男の顔は笑ってない。むしろ、怒りが目に宿っているようにも見えた。
「これは戦争……敵を倒すのは当たり前のこと」
「ハハッ、確かにそうだ。では、私があなたを殺すことも当たり前ということ……だなぁっ!」
その声とともに、轟音が響いた。
「ぐっ……!」
「ほう!? 防いだか! だが、これはどうかなぁ!?」
その後も男の猛攻は続いた。
速く、重い攻撃が、クレナイの体にのしかかるように当たる。
その攻撃を何とかいなしているものの、しかしこれ以上の攻撃をまともには受けられないほど、その攻撃は強かった。気を抜けば攻撃が当たり、死んでしまいそうだ。そうとも思った。
だが、この戦いで負けるわけにはいかない。クレナイの中で、一つの決心があった。
「負けない……負けられない……! 私の存在意義は……ここにあるのだからっ!!!」
「ぬぅ……? なぜここまでの攻撃をくらっておいて、死んでいない? それに、存在意義とな? それは……」
「──口、閉じてた方がいいよ……舌噛みたくなければね……!」
そういうと、クレナイの姿が男の視界から消えた。
「なっ!? どこに行った!?」
辺りをキョロキョロと見渡すが、しかしクレナイは見つからない。
「逃げたのか!? 己、卑怯者……しかし私は逃がさんぞ! 熊取屋様のところへは……絶対に行かせん!!!」
「誰が……逃げた……って……?」
途端に聞こえた声により、場所に気づいたが、しかしその瞬間、男の意識はそこで途絶えることとなった。
「かはっ………………!」
男の首に手刀、背に突き、喉元を押さえ、膝裏を蹴られる。その怒涛の攻撃により、男は膝を折り、倒れた。
「……私の存在意義は……まおくんを……守ること」
そう言って、クレナイは倒れ込むように膝をついた。流石に疲労が溜まっていたのか、随分と無茶をしていたようで
「ごめん……あとは……頑張って……」
「──おう。絶対に……勝つからな」
あとを黒装束の剣士に託して、静かな眠りに入った──。
「おおー、すげえ、あのクレナイにあそこまで押すとはな。やっぱ疲れてたのか? まぁ、何にせよあいつはリタイアか……」
戦いの様子を見ていた俺は、感嘆の声を漏らしていた。
「やっぱり、1人で戦わせるのはきつかったかな?」
「いや、いかんせん人数が多かったばかりか、あっちもいい人材がいたようだ。そのせいだな。ま、ガランも人を減らしてくれてるし、何とかはなりそうだが……」
しかし、と俺は呟くように続ける。
「熊取屋もそろそろ動き出しそうだな……相手は全兵力を出したみたいだし……リューネに援護射撃をするよう指示、アレスには右翼側から攻めるように指示、あと何もできてないやつら数人でクレナイ下げさせろ」
「えっ……それ全部やらないとだめ……?」
「まぁリューネとアレスに指示出しとけばいいよ。もう一個は最悪俺が指示する」
「えっ……? ってことは……」
「あぁ……俺も出る」
丁度いい機会でもある。熊取屋が前線に出てきたということは、前衛に配置した兵士では確実に勝てない。頼みの綱のクレナイも今回はダウンしているため、対抗できるのは──俺だけだ。
「こっちも全力で行く。んじゃ、伝令頼むぜ、クウガ!」
そう言って俺は、立ち上がり走り出した。
クレナイの元に着くと、クレナイはもう膝をつき、倒れそうな状況だった。敵を倒した時何か言っていたようにも聞こえたが、しかし何を言っているのかはよく聞き取れなかったため、敢えてスルーすることにした。
「ごめん……あとは……頑張って……」
「──おう。絶対に……勝つからな」
俺はそう言って、前にいる敵を見据えた。
そこには、やはりひとりの男だけが立っていた。
その男は、大きな剣を持ち、下には死体が広がっていた。
その死体はネメシスのメンバーのものではなかった。敵の……トルスートイのメンバーだった。
「何をしてる……熊取屋ァ……!」
「何って、使いもんにならんゴミを処理しているだけだ。敵を殺さなければいいのだろう?」
「それはルール違反のはずだ! なぜお前は退場していない!」
ルールには、敵味方関係なく、人を殺すことを禁止する、とあるはずだ。しかし目の前の男は、悠然と、味方を殺していながら、退場にはなっていない。
「退場? 何故? それに時計うさぎたちなら、あっちで眠っているぞ」
熊取屋が指で示したその先には、確かに寝ている時計うさぎたちの姿があった。
気のせいだろうか、その寝ている時計うさぎは、ぺちゃんこにも見える。
「お前……そう迄して人を殺したいのか……?」
「殺したいだなんて人聞きの悪い。ただ、制裁を加えただけだ」
「……っ……!」
俺はその一言で、憤りを感じた。だが、ここで暴れて殺してしまえばおしまいだ。自分の積み上げてきたものがなくなる。
「──じゃあ……」
とは言ってもなにもしないわけにもいかない。ならばどうするか。簡単な話だ。要は相手が死ななければいい話だろう?
「俺がお前に制裁を加えてやるよ……。人が死ぬ時の気持ちを味わえ」
「ほう? いいのか? うちにはまだ強いやつはいるぞ? フラッグを取らない限りどちらかの勝ちにはならん。俺を殺したらお前達は終わるだろうな」
「だと良かったな。だが残念。そうはならない」
どうやらこいつ、制裁の意味を履き違えているようだ。だからこそ、この挑発の言葉には意味がある。
「どういうことだ? 死の痛みを味わわせてくれるんだろう?」
「あぁ、そうだ。だが、俺は失格にはならない」
と言うかそもそも、熊取屋を殺したとしても時計うさぎが眠っている限りは問題ないのだが……しかしまぁ、殺すのは後味が悪い。ここは殺さずに味わわせることにしよう。
「……まぁいい、いくら聞いていても状況は変わらんからな」
「まっ、そういうこった。さぁ、始めようぜ……!」
俺達はそう言って、互いに剣を向けあった。
──お互いの思いが乗った殺気を放ちながら。
高い声が響いた。
そこは自分の知らない、空間だった。
暗い、何も見えない空間。
そこにまた、声が響く。
「君の守りたいものって一体なんだい?」
「ぼくがまもりたいもの?んーとね、ぼくはなにもまもらないよ!だって──」
その声は、聞き覚えがある幼い声だった。
どこか懐かしい……知っている声。
声は続けた。
「──だって、まもるひつようがないもの!まもるくらいなら、ゲームのなかのやつみたいにこわしてく!そのほうがおもしろいでしょ?」
そこで俺の意識は──途切れた──。
「──っはっ……!?」
今のはなんだったのだろうか。どこかで聞いたことがあるような内容だったような……夢にしてはリアリティが高すぎるし、そもそも俺は今の言葉を知っている。どこで聞いたのかは忘れたが……。
「同化したの?ハーデス。うなされてたみたいだけど」
「あぁいや、なんでもない。それより、みんな準備できたのか?」
どうやら俺は寝ている間隣に響くくらいずっとうなっていたらしく、心配そうにクウガがこちらを見ていた。
「準備できたよ。ハーデスも早く準備してね」
クウガはそう言い残すと、さっそうと部屋を出ていった。
俺は手早く準備を済ませ、部屋を出た。
広場に集まると、そこはガヤガヤと少し騒がしく、とても全員に挨拶ができる状態じゃなかった。
だがリーダーとして、大事なことを伝えないわけにはいかない。俺は大きく息を吸って、叫ぶように言った。
『しゅうぅぅぅぅぅぅごぉぉぉぉおう!』
すると、さっきまで騒がしかった団員たちが、さっとこっちを見た。そして号令通りに集合した。
ネメシスは大体十四の班に分かれている。前にも話した、小隊というやつだ。四人一組 で隊を組み、様々に分かれて行動する。十四小隊分となると、大隊に直すと三大隊と二小隊だ。それに加え、上層部5人がいて、数的には三大隊と三小隊。そしてそこに捕虜たちが入る。となるとだいたい四大隊分は人数がいることになる。ちなみに二人余るがそこにはクウガと捕虜のブレインの、二人の非戦闘員が入れば、全員が隊につく。二人は癒し隊だ。
だがまぁ、上層隊は基本的に出ないことになっている。上層部で三大隊と二小隊に入っているのは、ガランとクレナイだけだ。それ以外は基本待機、戦略を考えることになっている。主に考えるのはハーデスだが。
そしてその小隊ごとに今は並んでいる。小隊長に点呼を取らせ、俺は続けた。
「今日から戦争が始まる!だが、安心してくれ!」
戦争をするというのに安心をするという、矛盾に近いこの言葉に、しかしおかしな所などなかった。
「この戦争において人が死ぬ事は無い!安心して突っ込んでくれ!そしてもう一つ!」
聞いているみんなは、まだあるのかという思いと、なんだろうという思いが入り混じったような顔で、こちらを見てきた。
俺は大きな息を吸い────
「この試合……勝つぞ──!」
叫ぶように言った。
「うぉぉおぉぉぉお!」
「よっしゃあ!やったるでえ!」
「手柄はもろたる!」
「いや、俺が手柄立てるんだ!」
皆口々にそう意気込みを語った。また奮起して叫ぶ者もいた。
だが誰一人、敗北を恐れる者はいなかった。みんな……勝つと信じているからだ。
そしてその信じている心こそが、勝つための一歩へと繋がるのだろう。
上層部のほかの6人も、そう信じていた。
そう……誰一人、疑うものなどいないはずだった。
みんなの奮起が終わるのを待ち、俺は続けた。
「みんな、行こう。作戦は各自小隊の小隊長に聞いてくれ。では……出発!」
その言葉を皮切りに、みんな戦場へと走り出した。
そうだ、今からみんな……戦争をするんだ。
かつて、1940年代にあった、第二次世界大戦。それを経験していない者達が、今から戦争をする。それは誰も想像していないことが起こるだろう。
例えば──作戦通りにならなかった、とか。
それを誰も気づかずに、ただ1人、ブレインだけは恐れていた。
起こるであろう、全ての可能性を。
「──よぉ、ハーデス。今日はよろしくなぁ?」
「こちらこそよろしくだ。ルールは決めたとおり、ペナルティもだ。そっちサイドは準備はいいのか?」
「もちろんだ。1週間ずっと準備してんだよこっちは」
戦場である砂漠平野というところにつくと、熊取屋が片手を挙げて声をかけてきた。今から戦争をするとは思えない、朗らかな笑顔だった。
準備と言うと、軍備とかだろうが、しかしこっちはそんなもの用意していなかった。ただ武力のみ。武器に扱われるような敵と違い、武器を扱うための訓練をしてきた。
「──へぇ。生憎こっちもだよ。んじゃあ」
「おう」
「始めさせていただきますね。各自配置についてください」
「「うぉぉあ!?」」
急に現れた時計うさぎに、流石に驚いてしまった。
いつからいたんだ……。そもそも、ある程度強くなり、その上気配察知能力が高いクレナイに気付かれずにここまで来ることは不可能だが……クレナイも驚いている様子から、気づかなかったのだろう。もはや人間業じゃない。
というか、時計うさぎに対して何も知らないが……本当に人間なのだろうか?クウガやナードは運営側だが、人間だ。ということは人間なのだろうか?
「やぁや──じゃなかった、こんにちは、皆様。今日はいい戦争日和ですねぇ」
気楽に、しかし妙に丁寧にそう言った。
確かに天気は晴れではあったが、しかし戦争日和というのも……あまりいい言い方ではないと思えた。
なにか言い直したようにも思えたが、気のせいだと思って、俺は踵を返した。
「まぁとりあえず、始めるか。時計うさぎ、俺達はどこに行けばいいんだ?配置とか言ってたが……」
「あぁ、そうですそうです、言うのを忘れていましたね。えぇ、我々で勝手に開始位置を決めさせてもらいました」
そう言うと時計うさぎは、大きな地図を地面に広げた。
その時起きた風に、砂埃が舞った。
「ゴホッゴホッ……ゲフン!」
砂埃で俺は思わず咳き込んでしまっていた。
一応手で口を抑えていたが、果たしてその意味はあったのだろうか……。
「おっと、申し訳ない」
「失礼、いや大丈夫だ、続けてくれ、時計うさぎ」
時計うさぎがそれを見て手を止めたが、しかしまずは話の方が先決だ。自分のことなどどうでもいい。
「わかりました。では、御二方、こちらの地図をご覧ください」
「もう見てる」
「むしろ見るなってのが無理な話だろ」
「まぁそうですね……」
地図の大きさは大体二畳分ぐらいだろうか。こんなに大きな地図、どう足掻いても目に入る
「えーでは、まずですが……」
時計うさぎが説明に入った。時計うさぎの説明は長ったらしいので要約すると、開始位置は戦場の両極端。時計うさぎの合図により開始とする。
ルール違反などについては、時計うさぎがちゃんと見ているだけでなく、運営側の者がちゃんと観察しているらしい。観察者と言うらしいが、信頼できるような審判ではあるということだから、ルール違反を見逃すことはないだろう。つまり、この戦争で人は死なない。本来なら。
と、まぁこの程度の説明にだいぶと長く話し込む時計うさぎを見て、俺は一言
「もう始めていいか?」
単純な一言だが、熱の入りすぎている時計うさぎを止めるには充分だった。
「あ、はい、そうですね。各自位置についてください。開始位置についたと確認してから5分間だけ、時間をとります。その間に作戦会議等は済ませておいてくださいね」
そういうと、時計うさぎはその場から姿を消した。もう移動していいということか。
俺は指定された位置まで移動すると、熊取屋達がいるであろう場所を一瞥した。その時ふと、熊取屋と目が合ったような気がしたが……気のせいだろう。
どうやら向こうも指定位置に着いたようで、時計うさぎが開始の合図を告げるのが聞こえた。
そうして、戦争が始まった──。
「俺達の作戦は簡単だ。広がって攻める。ただそれだけだ。それと、俺達は後ろで指示をする」
それはただの確認。既に作戦は伝えてあるので、本当に確認でしかなかった。
しかしその確認が大事である。
現場指揮官は二人。もちろんガランとクレナイである。他は後ろでの指揮へと専念する。
「最初は広がって進んで、できるだけ一体二に持ち込む。まぁ相手の数の方が多いから、持ち込まれるかもしれんが、そこは、現場指揮官たちが何とかしてくれると信じよう。とにかくそうやって進んでく」
一通りの作戦を伝えて、俺は言った。
「この戦争、勝つぞ。俺達も全力を注ぐ。だからみんなも、ついてきてくれ!」
その一声で、歓声が上がった。その声は、期待の声だろうか。
そしてそれを皮切りに、全員が進軍を始めた。
遂に始まる。そんな気持ちだった。
俺は本部に戻ることをせず、きっと睨みつけるように相手本陣を見た。
その先には、熊取屋がいた。
熊取屋は気づいていないが、見えていないのか。確かに距離はあるが、ゲームが始まり身体能力が上がっている今じゃ、見えてもおかしくはない。だが、気づいていない。
気づかないフリなのかは分からないが……とりあえず今のところはいいだろう、そう思って俺は、目を閉じ──ようとした。だが、その一瞬で、熊取屋が不意にこっちを見るのを感じ取った。実際に見たのかは分からないが、おそらくこっちを見た。
いや……まだ、見ていた。
「やっぱ見えてるよな……まぁ、そうじゃないとな……!」
あとは途中まで作戦が上手く行けばいいが……。
そう思い、俺は少し視線を落とし、戦場を見た。
武器を銃器にしている者も沢山いた。それはこちらだけでなく、相手もだ。
硝煙と、血のむせ返るような臭いが、ここまで届いた。
不殺の戦争だが、しかし血は出るのは仕方が無いとも思える。
しかし、今思うとこの不殺の戦争……我ながら矛盾していると思う。
今まで散々──とは言っても3人だが──殺してきておいて、都合の良い時だけ不殺の精神を貫く。その矛盾さに、思わず笑いがこみ上げてくる。
だが……極力人が死ぬのは避けたい。
俺のこのゲームにおける最終目標。それを叶えるためだ。
目標のために犠牲を厭わない、なんてやり方は嫌だ。むしろ、犠牲は厭いたい。
だからこそのこのルールであり、そしてペナルティだ。
とは言っても中にはいるだろう……ルールを破る、戦闘狂が。
「ひゃっはぁぁぁあ!こんなに人を殺せるチャンス!ありがてぇぜぇ!」
そう言っていた殺人狂は、5人目を殺し終えた辺りで時計うさぎに止められた。
「ルール違反です。それ以上動かないで」
少し動くのが遅くなったようで、いきなり何人か死んだが……しかし思ったよりちゃんと見張ってはいるようだ。意外としか言いようがなかった。
正直この戦争は、時計うさぎに全くの得がない。デスゲームを開催するということは、人が死んで行くことを望ましく思っているというわけで、となれば人のあまり死なないこの戦争は、時計うさぎにとっては意義がないようにも思える。
だが、何故か協力的だ。そこが不思議で仕方が無い。何故だろうか……そうなるとこのゲームの意図がよく分からなくなる。
「一体あいつは……何がしたいんだ──?」
戦場の中で一人、ヴァルキリーの如く敵をなぎ倒す影があった。
ネメシス一のスピードアタッカーであり、ブレインの役割を持つことも出来る紅蓮に染まる忍び装束を着た──クレナイだ。
クレナイはしかし、人を殺さずに、血を浴びている。だが何故かという疑問を抱く者はその場にはいなかった。
クレナイは足や腕を切って戦闘不能にしているのだ。だから、返り血を浴びる。人を殺さなずに戦闘不能にする、ということに慣れているような戦い方だ。
しかしそんな止まらないクレナイだが
「お嬢さん、その辺でどうかな? このままだと我々は負けてしまうよ」
そんな声が聞こえ、すぐに防御体勢になるクレナイ。
しかしいくら待っても攻撃は来ず、チラリとそこに目をやると、一人の男が悠々と立っていた。
「なっ……えっ……!?」
クレナイは驚愕で言葉が出なかった。男がいたからではない。その男以外全員いなくなっていたからだ。
「……ほかの奴らはどこに?」
「なぁに、あなたの知る必要の無いことだ。それよりも、随分と多くこちらの人員を減らしてくれましたね……」
そう冗談めかして言うものの、男の顔は笑ってない。むしろ、怒りが目に宿っているようにも見えた。
「これは戦争……敵を倒すのは当たり前のこと」
「ハハッ、確かにそうだ。では、私があなたを殺すことも当たり前ということ……だなぁっ!」
その声とともに、轟音が響いた。
「ぐっ……!」
「ほう!? 防いだか! だが、これはどうかなぁ!?」
その後も男の猛攻は続いた。
速く、重い攻撃が、クレナイの体にのしかかるように当たる。
その攻撃を何とかいなしているものの、しかしこれ以上の攻撃をまともには受けられないほど、その攻撃は強かった。気を抜けば攻撃が当たり、死んでしまいそうだ。そうとも思った。
だが、この戦いで負けるわけにはいかない。クレナイの中で、一つの決心があった。
「負けない……負けられない……! 私の存在意義は……ここにあるのだからっ!!!」
「ぬぅ……? なぜここまでの攻撃をくらっておいて、死んでいない? それに、存在意義とな? それは……」
「──口、閉じてた方がいいよ……舌噛みたくなければね……!」
そういうと、クレナイの姿が男の視界から消えた。
「なっ!? どこに行った!?」
辺りをキョロキョロと見渡すが、しかしクレナイは見つからない。
「逃げたのか!? 己、卑怯者……しかし私は逃がさんぞ! 熊取屋様のところへは……絶対に行かせん!!!」
「誰が……逃げた……って……?」
途端に聞こえた声により、場所に気づいたが、しかしその瞬間、男の意識はそこで途絶えることとなった。
「かはっ………………!」
男の首に手刀、背に突き、喉元を押さえ、膝裏を蹴られる。その怒涛の攻撃により、男は膝を折り、倒れた。
「……私の存在意義は……まおくんを……守ること」
そう言って、クレナイは倒れ込むように膝をついた。流石に疲労が溜まっていたのか、随分と無茶をしていたようで
「ごめん……あとは……頑張って……」
「──おう。絶対に……勝つからな」
あとを黒装束の剣士に託して、静かな眠りに入った──。
「おおー、すげえ、あのクレナイにあそこまで押すとはな。やっぱ疲れてたのか? まぁ、何にせよあいつはリタイアか……」
戦いの様子を見ていた俺は、感嘆の声を漏らしていた。
「やっぱり、1人で戦わせるのはきつかったかな?」
「いや、いかんせん人数が多かったばかりか、あっちもいい人材がいたようだ。そのせいだな。ま、ガランも人を減らしてくれてるし、何とかはなりそうだが……」
しかし、と俺は呟くように続ける。
「熊取屋もそろそろ動き出しそうだな……相手は全兵力を出したみたいだし……リューネに援護射撃をするよう指示、アレスには右翼側から攻めるように指示、あと何もできてないやつら数人でクレナイ下げさせろ」
「えっ……それ全部やらないとだめ……?」
「まぁリューネとアレスに指示出しとけばいいよ。もう一個は最悪俺が指示する」
「えっ……? ってことは……」
「あぁ……俺も出る」
丁度いい機会でもある。熊取屋が前線に出てきたということは、前衛に配置した兵士では確実に勝てない。頼みの綱のクレナイも今回はダウンしているため、対抗できるのは──俺だけだ。
「こっちも全力で行く。んじゃ、伝令頼むぜ、クウガ!」
そう言って俺は、立ち上がり走り出した。
クレナイの元に着くと、クレナイはもう膝をつき、倒れそうな状況だった。敵を倒した時何か言っていたようにも聞こえたが、しかし何を言っているのかはよく聞き取れなかったため、敢えてスルーすることにした。
「ごめん……あとは……頑張って……」
「──おう。絶対に……勝つからな」
俺はそう言って、前にいる敵を見据えた。
そこには、やはりひとりの男だけが立っていた。
その男は、大きな剣を持ち、下には死体が広がっていた。
その死体はネメシスのメンバーのものではなかった。敵の……トルスートイのメンバーだった。
「何をしてる……熊取屋ァ……!」
「何って、使いもんにならんゴミを処理しているだけだ。敵を殺さなければいいのだろう?」
「それはルール違反のはずだ! なぜお前は退場していない!」
ルールには、敵味方関係なく、人を殺すことを禁止する、とあるはずだ。しかし目の前の男は、悠然と、味方を殺していながら、退場にはなっていない。
「退場? 何故? それに時計うさぎたちなら、あっちで眠っているぞ」
熊取屋が指で示したその先には、確かに寝ている時計うさぎたちの姿があった。
気のせいだろうか、その寝ている時計うさぎは、ぺちゃんこにも見える。
「お前……そう迄して人を殺したいのか……?」
「殺したいだなんて人聞きの悪い。ただ、制裁を加えただけだ」
「……っ……!」
俺はその一言で、憤りを感じた。だが、ここで暴れて殺してしまえばおしまいだ。自分の積み上げてきたものがなくなる。
「──じゃあ……」
とは言ってもなにもしないわけにもいかない。ならばどうするか。簡単な話だ。要は相手が死ななければいい話だろう?
「俺がお前に制裁を加えてやるよ……。人が死ぬ時の気持ちを味わえ」
「ほう? いいのか? うちにはまだ強いやつはいるぞ? フラッグを取らない限りどちらかの勝ちにはならん。俺を殺したらお前達は終わるだろうな」
「だと良かったな。だが残念。そうはならない」
どうやらこいつ、制裁の意味を履き違えているようだ。だからこそ、この挑発の言葉には意味がある。
「どういうことだ? 死の痛みを味わわせてくれるんだろう?」
「あぁ、そうだ。だが、俺は失格にはならない」
と言うかそもそも、熊取屋を殺したとしても時計うさぎが眠っている限りは問題ないのだが……しかしまぁ、殺すのは後味が悪い。ここは殺さずに味わわせることにしよう。
「……まぁいい、いくら聞いていても状況は変わらんからな」
「まっ、そういうこった。さぁ、始めようぜ……!」
俺達はそう言って、互いに剣を向けあった。
──お互いの思いが乗った殺気を放ちながら。
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