愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

文字の大きさ
11 / 139

間章1

 退屈だった。
 
 モルガナイト王家の次男、シエロ・モルガナイトとして産まれ、今まで生きてきた。第2王子として恥ずかしくないようにと勉学も剣術もたくさん努力した。でも、いくら努力しても王族ではできて当たり前、周りの目を気にして、何があってもいつもニコニコして、気を使って。
 僕は継承権になんて1ミリも興味はないし、自分には向いてないともうすでに分かっていた。だから、双子の兄のソラナがいて良かったと、将来はソラナの助けになれるように、と思うが、周りはどうも、どちら派だなんだと騒ぎたがる。双子だから継承権はまだわからないと騒ぎ立て、何かすれば、やはりシエロ様が、と言われ、何かやらかせば、やはりシエロ様には無理だと言われる。僕の意思なんてお構いなしだ。
 近づいてくる人は“僕”ではなく、継承権や権力しか見ていない。それが分かってしまう。
 そんな世界に飽き飽きしていた。

 
ーーそんな時、僕は彼に出会った。

 父の公務に付き添って行った隣国。父と隣国の王の話は難しいことも多くてついていけないところもある。これは、今後も勉強が大変そうだ、と一人ため息をついていた。僕がここにいても勉強にはなるが、父の力には今はなれない。これは少し休憩が必要だと判断し、2人の話が一段落したところを見計らい、外へ出る許可を得る。

「すみません、少し外の空気を吸いに行ってまいります」
「お供いたします」
「いや、今日はお忍びで来ているんだ。今日はお茶会もやっているのだろう?護衛がついていたら目立ってしまいそうだからね。遠慮しておくよ。それに、自分の身くらい自分で守れる」
「ですが……」
「あまり遠くまで行かないように」
「父上、ありがとうございます。承知いたしました」

 なんて護衛にうまいことを言ってかわす。今はなんだか1人になりたい気分だった。
 建物内を抜け出して、外の空気を胸いっぱいに吸い込む。
 なんだか久しぶりに深呼吸をしたように思う。知らない土地の王に会うということに知らないうちに緊張していたのかもしれない。少し息抜きに歩こうと、足を運ぶ。
 
 少し進んだ先で花畑が目に入る。
 これはきれいだ、と近づき、そこに人がいることに気が付く。
 しかし、少し様子がおかしい。背中しか見えないが、なんだか震えているように見えた。お茶会にきている子供が迷子になってしまったのだろうか。
 いつもなら、見て見ぬふりをしていた。今日はお忍びで来ているのだ。ここは僕の国ではないが、お茶会に来ている子供なら、僕のことを知っている可能性がある。それに、なにかしらのおとり、というのも捨てきれない。
 でもこの時僕は、なぜか話しかけないといけない、と思った。今、ここで僕が声をかけないと後悔をすると、そう思った。
 
 そっと近づくと、控えめな泣き声が聞こえた。なんだか無性に抱きしめたくなるような、そんな感覚がしたが、ぐっとこらえる。

「……泣いてるの?どうしたの?」
感想 42

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

竜帝陛下の愛が重すぎて身代わりの落ちこぼれ薬師は今日も腰が砕けそうです 〜呪いを解いたら一生離さないと宣言されました〜

レイ
BL
「死ぬ覚悟はできています。でも、その前に……お口、あーんしてください」 魔力を持たない「無能」として実家で虐げられていた薬師のエリアン。 彼に下されたのは、触れるものすべてを焼き尽くす「死の竜帝」ヴァレリウスへの、身代わりの婚姻だった。

その首輪は、弟の牙でしか外せない。

ゆずまめ鯉
BL
養子ゆえに、王位継承権を持たないオメガで長男のレイン(24)は、国家騎士団として秘密裏に働き、ただ義弟たちを守るためだけに生きてきた。 第一継承権を持つアルファで次男のリオール(19)は、そんな兄に「ごく潰し」と陰口を叩く連中を許せなかった。自分を犠牲にしてまで守る価値はないと思っていた。なにかと怪我の多い国家騎士団を辞めさせたかった。 初めて訪れた発情期のとき。約束をすっぽかされたリオールが不審に思い、兄の部屋へ行くと、国家騎士団の同僚──グウェンソード(28)に押し倒されるところを目撃して激高する。 「今すぐ部屋から出ろ!」 独占欲をあらわにしたリオールは、グウェンソードを部屋から追い出し、兄であるレインを欲望のままに抱いた。 翌朝、差し出されたのは特注の首輪──外せるのはリオールのみ。 「俺以外に触らせるな」 そう囁かれたレインは、何年も首輪と弟の執着に縛られ続けてきた。 弟には婚約者がいるのに、こんな関係を続けてもいいのか。 本当にこのままでもいいのか。 ひたすら執着して独占したがる弟と、罪悪感に苛まれる兄。 その首輪は、いつか弟の牙で血に染まるのか──。 どうにかしてレインを落としたいリオールと、弟との関係に悩むレインのオメガバースです。 リオール・グランケット(19)×レイン・グランケット(24) ※この作品は2015年頃に本文を書き、2017年頃にオメガバースに改稿、さらに2026年に手直しした作品になります。読みにくいかもしれません。ご了承ください。 三人称ですが攻めだったり受けだったり視点がよくかわります。攻め視点多めです。

転生天使は平穏に眠りたい〜社畜を辞めたら美形王子の腕の中でとろとろに甘やかされる日々が始まりました〜

メープル
BL
毎日深夜まで残業、食事はコンビニの冷たいパン。そんな社畜としての人生を使い果たし、過労死した俺が転生したのは――なんと、四枚の美しい羽を持つ本物の天使だった。 ​「今世こそは、働かずに一生寝て過ごしたい!」 ​平穏な隠居生活を夢見るシオンは、正体を隠して王国の第一王子・アリスターの元に居候することに。ところが、この王子、爽やかな笑顔の裏で俺への重すぎる執着を隠し持っていた!?

【完結】冷酷騎士団長を助けたら口移しでしか薬を飲まなくなりました

ざっしゅ
BL
異世界に転移してから一年、透(トオル)は、ゲームの知識を活かし、薬師としてのんびり暮らしていた。ある日、突然現れた洞窟を覗いてみると、そこにいたのは冷酷と噂される騎士団長・グレイド。毒に侵された彼を透は助けたが、その毒は、キスをしたり体を重ねないと完全に解毒できないらしい。 タイトルに※印がついている話はR描写が含まれています。

ざまぁされたチョロ可愛い王子様は、俺が貰ってあげますね

ヒラヲ
BL
「オーレリア・キャクストン侯爵令嬢! この時をもって、そなたとの婚約を破棄する!」 オーレリアに嫌がらせを受けたというエイミーの言葉を真に受けた僕は、王立学園の卒業パーティーで婚約破棄を突き付ける。 しかし、突如現れた隣国の第一王子がオーレリアに婚約を申し込み、嫌がらせはエイミーの自作自演であることが発覚する。 その結果、僕は冤罪による断罪劇の責任を取らされることになってしまった。 「どうして僕がこんな目に遭わなければならないんだ!?」 卒業パーティーから一ヶ月後、王位継承権を剥奪された僕は王都を追放され、オールディス辺境伯領へと送られる。 見習い騎士として一からやり直すことになった僕に、指導係の辺境伯子息アイザックがやたら絡んでくるようになって……? 追放先の辺境伯子息×ざまぁされたナルシスト王子様 悪役令嬢を断罪しようとしてざまぁされた王子の、その後を書いたBL作品です。

猫を追いかけて異世界に来たら、拾ってくれたのは優しい貴族様でした

水無瀬 蒼
BL
清石拓也はある日飼い猫の黒猫・ルナを追って古びた神社に紛れ込んだ。 そこで、御神木の根に足をひっかけて転んでしまう。 倒れる瞬間、大きな光に飲み込まれる。 そして目を覚ましたのは、遺跡の中だった。 体調の悪い拓也を助けてくれたのは貴族のレオニス・アーゼンハイツだった。 2026.1.5〜

伝説のS級おじさん、俺の「匂い」がないと発狂して国を滅ぼすらしいい

マンスーン
BL
ギルドの事務職員・三上薫は、ある日、ギルドロビーで発作を起こしかけていた英雄ガルド・ベルンシュタインから抱きしめられ、首筋を猛烈に吸引。「見つけた……俺の酸素……!」と叫び、離れなくなってしまう。 最強おじさん(変態)×ギルドの事務職員(平凡) 世界観が現代日本、異世界ごちゃ混ぜ設定になっております。