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間章1
退屈だった。
モルガナイト王家の次男、シエロ・モルガナイトとして産まれ、今まで生きてきた。第2王子として恥ずかしくないようにと勉学も剣術もたくさん努力した。でも、いくら努力しても王族ではできて当たり前、周りの目を気にして、何があってもいつもニコニコして、気を使って。
僕は継承権になんて1ミリも興味はないし、自分には向いてないともうすでに分かっていた。だから、双子の兄のソラナがいて良かったと、将来はソラナの助けになれるように、と思うが、周りはどうも、どちら派だなんだと騒ぎたがる。双子だから継承権はまだわからないと騒ぎ立て、何かすれば、やはりシエロ様が、と言われ、何かやらかせば、やはりシエロ様には無理だと言われる。僕の意思なんてお構いなしだ。
近づいてくる人は“僕”ではなく、継承権や権力しか見ていない。それが分かってしまう。
そんな世界に飽き飽きしていた。
ーーそんな時、僕は彼に出会った。
父の公務に付き添って行った隣国。父と隣国の王の話は難しいことも多くてついていけないところもある。これは、今後も勉強が大変そうだ、と一人ため息をついていた。僕がここにいても勉強にはなるが、父の力には今はなれない。これは少し休憩が必要だと判断し、2人の話が一段落したところを見計らい、外へ出る許可を得る。
「すみません、少し外の空気を吸いに行ってまいります」
「お供いたします」
「いや、今日はお忍びで来ているんだ。今日はお茶会もやっているのだろう?護衛がついていたら目立ってしまいそうだからね。遠慮しておくよ。それに、自分の身くらい自分で守れる」
「ですが……」
「あまり遠くまで行かないように」
「父上、ありがとうございます。承知いたしました」
なんて護衛にうまいことを言ってかわす。今はなんだか1人になりたい気分だった。
建物内を抜け出して、外の空気を胸いっぱいに吸い込む。
なんだか久しぶりに深呼吸をしたように思う。知らない土地の王に会うということに知らないうちに緊張していたのかもしれない。少し息抜きに歩こうと、足を運ぶ。
少し進んだ先で花畑が目に入る。
これはきれいだ、と近づき、そこに人がいることに気が付く。
しかし、少し様子がおかしい。背中しか見えないが、なんだか震えているように見えた。お茶会にきている子供が迷子になってしまったのだろうか。
いつもなら、見て見ぬふりをしていた。今日はお忍びで来ているのだ。ここは僕の国ではないが、お茶会に来ている子供なら、僕のことを知っている可能性がある。それに、なにかしらのおとり、というのも捨てきれない。
でもこの時僕は、なぜか話しかけないといけない、と思った。今、ここで僕が声をかけないと後悔をすると、そう思った。
そっと近づくと、控えめな泣き声が聞こえた。なんだか無性に抱きしめたくなるような、そんな感覚がしたが、ぐっとこらえる。
「……泣いてるの?どうしたの?」
モルガナイト王家の次男、シエロ・モルガナイトとして産まれ、今まで生きてきた。第2王子として恥ずかしくないようにと勉学も剣術もたくさん努力した。でも、いくら努力しても王族ではできて当たり前、周りの目を気にして、何があってもいつもニコニコして、気を使って。
僕は継承権になんて1ミリも興味はないし、自分には向いてないともうすでに分かっていた。だから、双子の兄のソラナがいて良かったと、将来はソラナの助けになれるように、と思うが、周りはどうも、どちら派だなんだと騒ぎたがる。双子だから継承権はまだわからないと騒ぎ立て、何かすれば、やはりシエロ様が、と言われ、何かやらかせば、やはりシエロ様には無理だと言われる。僕の意思なんてお構いなしだ。
近づいてくる人は“僕”ではなく、継承権や権力しか見ていない。それが分かってしまう。
そんな世界に飽き飽きしていた。
ーーそんな時、僕は彼に出会った。
父の公務に付き添って行った隣国。父と隣国の王の話は難しいことも多くてついていけないところもある。これは、今後も勉強が大変そうだ、と一人ため息をついていた。僕がここにいても勉強にはなるが、父の力には今はなれない。これは少し休憩が必要だと判断し、2人の話が一段落したところを見計らい、外へ出る許可を得る。
「すみません、少し外の空気を吸いに行ってまいります」
「お供いたします」
「いや、今日はお忍びで来ているんだ。今日はお茶会もやっているのだろう?護衛がついていたら目立ってしまいそうだからね。遠慮しておくよ。それに、自分の身くらい自分で守れる」
「ですが……」
「あまり遠くまで行かないように」
「父上、ありがとうございます。承知いたしました」
なんて護衛にうまいことを言ってかわす。今はなんだか1人になりたい気分だった。
建物内を抜け出して、外の空気を胸いっぱいに吸い込む。
なんだか久しぶりに深呼吸をしたように思う。知らない土地の王に会うということに知らないうちに緊張していたのかもしれない。少し息抜きに歩こうと、足を運ぶ。
少し進んだ先で花畑が目に入る。
これはきれいだ、と近づき、そこに人がいることに気が付く。
しかし、少し様子がおかしい。背中しか見えないが、なんだか震えているように見えた。お茶会にきている子供が迷子になってしまったのだろうか。
いつもなら、見て見ぬふりをしていた。今日はお忍びで来ているのだ。ここは僕の国ではないが、お茶会に来ている子供なら、僕のことを知っている可能性がある。それに、なにかしらのおとり、というのも捨てきれない。
でもこの時僕は、なぜか話しかけないといけない、と思った。今、ここで僕が声をかけないと後悔をすると、そう思った。
そっと近づくと、控えめな泣き声が聞こえた。なんだか無性に抱きしめたくなるような、そんな感覚がしたが、ぐっとこらえる。
「……泣いてるの?どうしたの?」
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