愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

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「テオ君、交換留学の話は聞いた?」
「はい、聞きました」

 いつも通り図書館で勉強をしているとブライト先生がやってきて、交換留学の話を振ってきた。交換留学はきっと先生たちの中でも一大イベントのようになっているのだろう。

「……もちろん、留学、ねらうよね?」
「いや、僕は……きっと、選ばれませんから」

 その声が、案外暗い声になってしまう。

「どうしてそう思うの?」
「先生も、選ばれるための条件、ご存じですよね?」
「大丈夫だよ、テオ君なら」
「……っ先生も、僕のこの学校での評価、知ってますよね」

 少し声が強くなってしまったことは許してほしい。
 これ以上、僕に期待させないで欲しかった。
 いくら本当は僕がやっていないとしても、この学園で僕はたくさん問題を起こす問題児だ。この学園の先生みんな、ブライト先生以外の全員がその認識。そんな中、僕が選ばれることなんて、ない。いくらブライト先生が僕のことを信じてくれていても、だめなんだ。

「大丈夫。テオ君なら、絶対に」
「……っ」

 それなのに、先生はその言葉を繰り返す。僕の目をみて、そう伝えてくる。
 先生だって、他の先生からの僕の評価は絶対に知っているはずなのに。力強く、僕の目をみて、伝えてくる。

「僕を、先生を信じて、頑張ってみてくれない?あ、それとも、行きたくないかな?」
「行きたいですっ」

 少し食い気味に言ってしまって恥ずかしかった。
 これでは僕が本当はどう思っているか、まるわかりではないか。

「うん。じゃあ、僕を信じて。次の試験、テオ君なら心配はないと思うけど、頑張って」

 そう言うと、先生は立ち去ってしまった。
 どうなるかわからないけれど、さっきの先生の表情を思い出すと、僕には信じて頑張ることしか選択できなかった。

 それから、いつも以上にたくさん勉強した。毎日、毎日。学園でも、家でも勉強をした。体が痛くても構わず勉強した。次の試験で1番を取らないと元も子もない。だから、来る日も来る日も頑張った。

 ブライト先生が、僕を信じて、と言っていた。この学園に僕のために力になろうとしてくれている人がいる。それは、僕にとって奇跡みたいだった。だからこそ、頑張れた。



 そうして一生懸命努力したおかげで、僕は初めて試験で学年で1番の成績を修めることができた。
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