愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

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間章14

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 授業がすべて終わり、教室を出る。
 昨日、ソラナが僕の部屋から帰った後。結局我慢できなくて、一目見るだけでもいいからと廊下をいつもより時間をかけて歩いてみたり、寮のあらゆるところへ行ってみたりしたが、テオらしい人は結局見つけることができなかった。

 でも、学園内であれば、学年はわかっているから、教室やその周辺を探せばいい。テオに会いたい、会いに行く。会えたらなんと声をかけようかと何度目かわからない問いをまた考える。

 早くしないとテオが寮へ帰ってしまうかもしれない。ただでさえ少し時間が押した授業に加え僕に話しかけてくるクラスメイトがいて、教室を出るまでに時間がかかってしまった。無駄にでかい学園に今だけは文句を言う。もう少し小さければそれだけ早く目的地に着けるのに。

 足早に歩みを進めていると、図書館の前の騒がしさが耳に入ってくる。何かトラブルだろうか。騒ぎの中心になっている人物は周りに人が集まっていてうまく見えない。早くしたいのに、と気が急くが、しょうがないのでその騒ぎに耳を澄ませる。
 どうやらその騒ぎの中心は中等部の女の子のようで、大きい声が聞こえてくる。

 中等部の女の子、誰かに向かって話している内容。その状況を整理して、理解する前に体が自然と動いた。今、僕が助けに行かずに、どうするんだ。あの中心には、僕がずっと会いたいと願った、僕が助けたい、支えになりたいと願っているあの子が、いる。きっと、いや、絶対にいる。どうやってこの騒ぎを抑えるか、どうやってテオを助けるか、策なんて頭に浮かんでいるわけがなかった。あの中心にはテオと、僕が一生許せない人がいる。頭に血が上っていることはわかっていた。冷静でないことも。でも、自分を止めることなんてできなかった。

 そうして飛び出したとき、後ろから冷静な声が聞こえてきた。

「―待て」
「…っソラナ」
「一度落ち着け。お前は彼のことになると感情が表に出すぎだ。冷静になれ。そのままの状態で行ってもいいことはない」

 ソラナの声に冷静になる。止められたことを憎たらしく思いながらも、ソラナの言う通りのため何も言えない。本当に兄には頭が上がらない。

「ソラナ、僕に力を貸してくれない?」

 あの場で冷静でいられる自信がなかった。やっぱり僕は未熟なままだと痛感する。あの場で冷静さを欠いてしまったら。中心にいるであろうアナベル伯爵家の娘を糾弾するのは今ではない。

「もちろんだ。この場は私が抑える。何が起こっているか今の時点ですべては把握ができない。状況を聞いてお前が冷静さを欠いてしまうことが一番良くないと私は思う」
「わかってる」
「この場とあの娘のことは私に任せろ。あの中心にお前の想い人がいるのだろう?そいつのことはお前にしか任せられないからな」

 ソラナは、僕に笑顔を向けて言った。

「シエロ、よかったな。ようやく、会えるぞ」
「うんっ」
「いい顔だ。よし、行くぞ」
「あぁ!」

 ようやくテオに会えることに、胸が震える。
 でも、喜びをかみしめる前に、やらないといけないことが今目の前にある。

 ―テオ、今、行くからね。
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