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季節は夏。気温も高くなって、暑い日が続いている。僕は暑いのが苦手だから、涼しくなってくれることを願う毎日だ。
「テオは長期休暇どうするの?」
「んと、特に決めてないけど、寮にいるかな。シエロは?」
「僕は家に帰らないとなんだ」
「そっか」
そろそろ学園は長期休暇が始まる。基本、生徒は自分の家に帰る。でも、僕は帰らない。お迎えだって来ないってわかっているし、僕も帰りたくないから、寮にいることを選択した。
その間、シエロがいないのは寂しいけれど、仕方がない。もう、料理だって一人でできるし、夜、一人で寝るのは怖いし、不安だけれど、きっと、もう大丈夫。多分。
「もし、テオさえよければ、なんだけど」
「うん?」
そう自分に言い聞かせていると、シエロがこんな提案をしてくれた。
「僕の家に、テオも来ない?」
「……え」
ということで、長期休暇中、シエロの家にお世話になることになった。
「おかえりなさいませ、シエロ殿下、ソラナ殿下。テオ様も、ようこそおいでくださいました」
「あぁ、ただいま」
「お、おじゃましますっ!」
「テオ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。ただいま」
家に入ると、大勢の人に出迎えられた。
シエロの家にお邪魔することを決めるまでも、本当に僕が行っていいのか心配だった。誘ってくれたのはシエロだけれど、僕が寂しくないようにと考えてくれたからだろうし、それに、せっかくの家族の時間を僕が邪魔してもいいものかと悩んでいた。
シエロは、そんなの心配しないでと言ってくれたし、テオがいてくれないと僕が寂しいと、テオが一緒に居てくれたら僕はすごく嬉しいと言ってくれた。それでも、と渋っていたら、ソラナ殿下まで僕に、そんなこと気にするなと、むしろ来いと言ってくれた。そして、結局行くことを決意して、こうして二人と一緒に馬車に乗せてもらってシエロの家まで来た。
道中でも、手土産も何もないのによかったのかな、とか、この国の王と王妃に会うのに礼儀が、とか心配事が付きなくてどうにかなりそうだった。心配事が浮かんでくるたびにシエロに聞いては、そんなの気にしなくて大丈夫だよ、僕の両親はそんなこと気にしないよって言ってくれて安心を得ては、また次の心配が浮かんできての繰り返しだった。
シエロの家について、馬車から降りて、家に入る。その時の僕は緊張が最高潮で、シエロもそのことに気が付いたのか、僕と手をつないでくれたようだが、僕はそのことにも気が付いていいないくらいだった。
「シエロ殿下とテオ様は本当に仲がよろしいのですね」
「えぇ、シエロ殿下をあんな顔にさせるなんて……。ほほえましいですわ」
なんて会話がされていることも知らなかった。
「念のため、客室も用意いたしましたがどうなさいますか?」
「テオは僕と同じ部屋で」
「はい。シエロ殿下と同じ部屋がいい、です」
「ここではいつも通りの話し方で大丈夫だよ」
「え、で、でも」
「はい。お二人のことは聞いておりますので、ここではいつも通り、ゆっくりと過ごしてくださると我々は嬉しく存じます」
そう笑顔を見せてくれる使用人たちに驚く。
こんなに優しいのかと、こんなに親切にしてくれて、僕を出迎えてくれるのかと。この人たちは僕に痛いことをしてきた人たちと同じような服を着て、同じような立場の人のはずなに、こんなにも違うのか。それが嬉しくて、シエロの家に来てまだ少ししかたっていないのに、来てよかったなんて思う。
「あ、りがとう、ございます」
「……っ!いえ、何かございましたら、何なりとお申し付けください」
「はい。ありがとうございます」
不安がすべてなくなったわけではないけれど、うまくやっていける気がして、ひとまずよかったと胸をなでおろした。
「それじゃあ、僕の部屋で少し休んで、その後ご飯にしようか」
「うん」
こうして、シエロの家で過ごす日々が始まった。
「テオは長期休暇どうするの?」
「んと、特に決めてないけど、寮にいるかな。シエロは?」
「僕は家に帰らないとなんだ」
「そっか」
そろそろ学園は長期休暇が始まる。基本、生徒は自分の家に帰る。でも、僕は帰らない。お迎えだって来ないってわかっているし、僕も帰りたくないから、寮にいることを選択した。
その間、シエロがいないのは寂しいけれど、仕方がない。もう、料理だって一人でできるし、夜、一人で寝るのは怖いし、不安だけれど、きっと、もう大丈夫。多分。
「もし、テオさえよければ、なんだけど」
「うん?」
そう自分に言い聞かせていると、シエロがこんな提案をしてくれた。
「僕の家に、テオも来ない?」
「……え」
ということで、長期休暇中、シエロの家にお世話になることになった。
「おかえりなさいませ、シエロ殿下、ソラナ殿下。テオ様も、ようこそおいでくださいました」
「あぁ、ただいま」
「お、おじゃましますっ!」
「テオ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。ただいま」
家に入ると、大勢の人に出迎えられた。
シエロの家にお邪魔することを決めるまでも、本当に僕が行っていいのか心配だった。誘ってくれたのはシエロだけれど、僕が寂しくないようにと考えてくれたからだろうし、それに、せっかくの家族の時間を僕が邪魔してもいいものかと悩んでいた。
シエロは、そんなの心配しないでと言ってくれたし、テオがいてくれないと僕が寂しいと、テオが一緒に居てくれたら僕はすごく嬉しいと言ってくれた。それでも、と渋っていたら、ソラナ殿下まで僕に、そんなこと気にするなと、むしろ来いと言ってくれた。そして、結局行くことを決意して、こうして二人と一緒に馬車に乗せてもらってシエロの家まで来た。
道中でも、手土産も何もないのによかったのかな、とか、この国の王と王妃に会うのに礼儀が、とか心配事が付きなくてどうにかなりそうだった。心配事が浮かんでくるたびにシエロに聞いては、そんなの気にしなくて大丈夫だよ、僕の両親はそんなこと気にしないよって言ってくれて安心を得ては、また次の心配が浮かんできての繰り返しだった。
シエロの家について、馬車から降りて、家に入る。その時の僕は緊張が最高潮で、シエロもそのことに気が付いたのか、僕と手をつないでくれたようだが、僕はそのことにも気が付いていいないくらいだった。
「シエロ殿下とテオ様は本当に仲がよろしいのですね」
「えぇ、シエロ殿下をあんな顔にさせるなんて……。ほほえましいですわ」
なんて会話がされていることも知らなかった。
「念のため、客室も用意いたしましたがどうなさいますか?」
「テオは僕と同じ部屋で」
「はい。シエロ殿下と同じ部屋がいい、です」
「ここではいつも通りの話し方で大丈夫だよ」
「え、で、でも」
「はい。お二人のことは聞いておりますので、ここではいつも通り、ゆっくりと過ごしてくださると我々は嬉しく存じます」
そう笑顔を見せてくれる使用人たちに驚く。
こんなに優しいのかと、こんなに親切にしてくれて、僕を出迎えてくれるのかと。この人たちは僕に痛いことをしてきた人たちと同じような服を着て、同じような立場の人のはずなに、こんなにも違うのか。それが嬉しくて、シエロの家に来てまだ少ししかたっていないのに、来てよかったなんて思う。
「あ、りがとう、ございます」
「……っ!いえ、何かございましたら、何なりとお申し付けください」
「はい。ありがとうございます」
不安がすべてなくなったわけではないけれど、うまくやっていける気がして、ひとまずよかったと胸をなでおろした。
「それじゃあ、僕の部屋で少し休んで、その後ご飯にしようか」
「うん」
こうして、シエロの家で過ごす日々が始まった。
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