愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

文字の大きさ
92 / 139

76

しおりを挟む
 季節は夏。気温も高くなって、暑い日が続いている。僕は暑いのが苦手だから、涼しくなってくれることを願う毎日だ。

「テオは長期休暇どうするの?」
「んと、特に決めてないけど、寮にいるかな。シエロは?」
「僕は家に帰らないとなんだ」
「そっか」

 そろそろ学園は長期休暇が始まる。基本、生徒は自分の家に帰る。でも、僕は帰らない。お迎えだって来ないってわかっているし、僕も帰りたくないから、寮にいることを選択した。
 その間、シエロがいないのは寂しいけれど、仕方がない。もう、料理だって一人でできるし、夜、一人で寝るのは怖いし、不安だけれど、きっと、もう大丈夫。多分。

「もし、テオさえよければ、なんだけど」
「うん?」

 そう自分に言い聞かせていると、シエロがこんな提案をしてくれた。

「僕の家に、テオも来ない?」
「……え」

 ということで、長期休暇中、シエロの家にお世話になることになった。




「おかえりなさいませ、シエロ殿下、ソラナ殿下。テオ様も、ようこそおいでくださいました」
「あぁ、ただいま」
「お、おじゃましますっ!」
「テオ、そんなに緊張しなくても大丈夫だよ。ただいま」

 家に入ると、大勢の人に出迎えられた。

 シエロの家にお邪魔することを決めるまでも、本当に僕が行っていいのか心配だった。誘ってくれたのはシエロだけれど、僕が寂しくないようにと考えてくれたからだろうし、それに、せっかくの家族の時間を僕が邪魔してもいいものかと悩んでいた。
 シエロは、そんなの心配しないでと言ってくれたし、テオがいてくれないと僕が寂しいと、テオが一緒に居てくれたら僕はすごく嬉しいと言ってくれた。それでも、と渋っていたら、ソラナ殿下まで僕に、そんなこと気にするなと、むしろ来いと言ってくれた。そして、結局行くことを決意して、こうして二人と一緒に馬車に乗せてもらってシエロの家まで来た。
 道中でも、手土産も何もないのによかったのかな、とか、この国の王と王妃に会うのに礼儀が、とか心配事が付きなくてどうにかなりそうだった。心配事が浮かんでくるたびにシエロに聞いては、そんなの気にしなくて大丈夫だよ、僕の両親はそんなこと気にしないよって言ってくれて安心を得ては、また次の心配が浮かんできての繰り返しだった。

 シエロの家について、馬車から降りて、家に入る。その時の僕は緊張が最高潮で、シエロもそのことに気が付いたのか、僕と手をつないでくれたようだが、僕はそのことにも気が付いていいないくらいだった。

「シエロ殿下とテオ様は本当に仲がよろしいのですね」
「えぇ、シエロ殿下をあんな顔にさせるなんて……。ほほえましいですわ」

 なんて会話がされていることも知らなかった。

「念のため、客室も用意いたしましたがどうなさいますか?」
「テオは僕と同じ部屋で」
「はい。シエロ殿下と同じ部屋がいい、です」
「ここではいつも通りの話し方で大丈夫だよ」
「え、で、でも」
「はい。お二人のことは聞いておりますので、ここではいつも通り、ゆっくりと過ごしてくださると我々は嬉しく存じます」

 そう笑顔を見せてくれる使用人たちに驚く。
 こんなに優しいのかと、こんなに親切にしてくれて、僕を出迎えてくれるのかと。この人たちは僕に痛いことをしてきた人たちと同じような服を着て、同じような立場の人のはずなに、こんなにも違うのか。それが嬉しくて、シエロの家に来てまだ少ししかたっていないのに、来てよかったなんて思う。

「あ、りがとう、ございます」
「……っ!いえ、何かございましたら、何なりとお申し付けください」
「はい。ありがとうございます」

 不安がすべてなくなったわけではないけれど、うまくやっていける気がして、ひとまずよかったと胸をなでおろした。

「それじゃあ、僕の部屋で少し休んで、その後ご飯にしようか」
「うん」

 こうして、シエロの家で過ごす日々が始まった。
しおりを挟む
感想 42

あなたにおすすめの小説

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

【完結】捨てられた双子のセカンドライフ

mazecco
ファンタジー
【第14回ファンタジー小説大賞 奨励賞受賞作】 王家の血を引きながらも、不吉の象徴とされる双子に生まれてしまったアーサーとモニカ。 父王から疎まれ、幼くして森に捨てられた二人だったが、身体能力が高いアーサーと魔法に適性のあるモニカは、力を合わせて厳しい環境を生き延びる。 やがて成長した二人は森を出て街で生活することを決意。 これはしあわせな第二の人生を送りたいと夢見た双子の物語。 冒険あり商売あり。 さまざまなことに挑戦しながら双子が日常生活?を楽しみます。 (話の流れは基本まったりしてますが、内容がハードな時もあります)

【本編完結】最強S級冒険者が俺にだけ過保護すぎる!

天宮叶
BL
前世の世界で亡くなった主人公は、突然知らない世界で知らない人物、クリスの身体へと転生してしまう。クリスが眠っていた屋敷の主であるダリウスに、思い切って事情を説明した主人公。しかし事情を聞いたダリウスは突然「結婚しようか」と主人公に求婚してくる。 なんとかその求婚を断り、ダリウスと共に屋敷の外へと出た主人公は、自分が転生した世界が魔法やモンスターの存在するファンタジー世界だと気がつき冒険者を目指すことにするが____ 過保護すぎる大型犬系最強S級冒険者攻めに振り回されていると思いきや、自由奔放で強気な性格を発揮して無自覚に振り回し返す元気な受けのドタバタオメガバースラブコメディの予定 要所要所シリアスが入ります。

婚約破棄されたから能力隠すのやめまーすw

ミクリ21
BL
婚約破棄されたエドワードは、実は秘密をもっていた。それを知らない転生ヒロインは見事に王太子をゲットした。しかし、のちにこれが王太子とヒロインのざまぁに繋がる。 軽く説明 ★シンシア…乙女ゲームに転生したヒロイン。自分が主人公だと思っている。 ★エドワード…転生者だけど乙女ゲームの世界だとは知らない。本当の主人公です。

転生令息は冒険者を目指す!?

葛城 惶
BL
ある時、日本に大規模災害が発生した。  救助活動中に取り残された少女を助けた自衛官、天海隆司は直後に土砂の崩落に巻き込まれ、意識を失う。  再び目を開けた時、彼は全く知らない世界に転生していた。  異世界で美貌の貴族令息に転生した脳筋の元自衛官は憧れの冒険者になれるのか?!  とってもお馬鹿なコメディです(;^_^A

【完結】悪役令嬢モノのバカ王子に転生してしまったんだが、なぜかヒーローがイチャラブを求めてくる

路地裏乃猫
BL
ひょんなことから悪役令嬢モノと思しき異世界に転生した〝俺〟。それも、よりにもよって破滅が確定した〝バカ王子〟にだと?説明しよう。ここで言うバカ王子とは、いわゆる悪役令嬢モノで冒頭から理不尽な婚約破棄を主人公に告げ、最後はざまぁ要素によって何やかんやと破滅させられる例のアンポンタンのことであり――とにかく、俺はこの異世界でそのバカ王子として生き延びにゃならんのだ。つーわけで、脱☆バカ王子!を目指し、真っ当な王子としての道を歩き始めた俺だが、そんな俺になぜか、この世界ではヒロインとイチャコラをキメるはずのヒーローがぐいぐい迫ってくる!一方、俺の命を狙う謎の暗殺集団!果たして俺は、この破滅ルート満載の世界で生き延びることができるのか? いや、その前に……何だって悪役令嬢モノの世界でバカ王子の俺がヒーローに惚れられてんだ? 2025年10月に全面改稿を行ないました。 2025年10月28日・BLランキング35位ありがとうございます。 2025年10月29日・BLランキング27位ありがとうございます。 2025年10月30日・BLランキング15位ありがとうございます。 2025年11月1日 ・BLランキング13位ありがとうございます。 第13回BL大賞で奨励賞をいただきました。これもひとえに皆様の応援のおかげです。本当にありがとうございました。

人族は一人で生きられないらしい――獣人公爵に拾われ、溺愛されて家族になりました

よっちゃん
BL
人族がほとんど存在しない世界に、 前世の記憶を持ったまま転生した少年・レオン。 獣人が支配する貴族社会。 魔力こそが価値とされ、 「弱い人族」は守られるべき存在として扱われる世界で、 レオンは常識の違いに戸惑いながらも必死に生きようとする。 そんな彼を拾ったのは、 辺境を治める獣人公爵アルト。 寡黙で冷静、しかし一度守ると決めたものは決して手放さない男だった。 溺愛され、守られ、育てられる日々。 だが、レオンはただ守られるだけの存在で終わることを選ばない。 学院での出会い。 貴族社会に潜む差別と陰謀。 そして「番」という、深く重い絆。 レオンは学び、考え、 自分にしかできない魔法理論を武器に、 少しずつ“並び立つ覚悟”を身につけていく。 獣人と人族。 価値観も、立場も、すべてが違う二人が、 それでも選び合い、家族になるまでの物語。 溺愛×成長×異世界BL。 読後に残るのは、 「ここに居場所があっていい」と思える、あたたかな幸福。

【完結】健康な身体に成り代わったので異世界を満喫します。

白(しろ)
BL
神様曰く、これはお節介らしい。 僕の身体は運が悪くとても脆く出来ていた。心臓の部分が。だからそろそろダメかもな、なんて思っていたある日の夢で僕は健康な身体を手に入れていた。 けれどそれは僕の身体じゃなくて、まるで天使のように綺麗な顔をした人の身体だった。 どうせ夢だ、すぐに覚めると思っていたのに夢は覚めない。それどころか感じる全てがリアルで、もしかしてこれは現実なのかもしれないと有り得ない考えに及んだとき、頭に鈴の音が響いた。 「お節介を焼くことにした。なに心配することはない。ただ、成り代わるだけさ。お前が欲しくて堪らなかった身体に」 神様らしき人の差配で、僕は僕じゃない人物として生きることになった。 これは健康な身体を手に入れた僕が、好きなように生きていくお話。 本編は三人称です。 R−18に該当するページには※を付けます。 毎日20時更新 登場人物 ラファエル・ローデン 金髪青眼の美青年。無邪気であどけなくもあるが無鉄砲で好奇心旺盛。 ある日人が変わったように活発になったことで親しい人たちを戸惑わせた。今では受け入れられている。 首筋で脈を取るのがクセ。 アルフレッド 茶髪に赤目の迫力ある男前苦労人。ラファエルの友人であり相棒。 剣の腕が立ち騎士団への入団を強く望まれていたが縛り付けられるのを嫌う性格な為断った。 神様 ガラが悪い大男。  

処理中です...