愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

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 制服や教科書はすべて寮の部屋に置きっぱなしのため、僕は寮の前で馬車から降りた。
 ソラナ殿下はこのまま学園へ向かうと言うので、そこで別れた。僕は、こんな早くから学園が開いていることをこの時初めて知った。

 まだ起きるには早い時間だからか、寮の中は静かで、僕が歩く音が妙に響いている。その雰囲気にのまれたからか、余計に不安が心をいっぱいにする。
 僕は歩きながら、別れ際にソラナ殿下から言われた言葉を思い出す。

 ――テオにはつらい思いをさせるかもしれないが、私たちはテオの味方だ。それだけは忘れるな。

 これからきっと、何か、起こる。悪いこと、悲しいこと、それが何かわからない。それにどうしても不安になる。もし、これ以上シエロに危害が加わったら。ソラナ殿下や、他のみんなにまで何かあったら。何か起こるなら、悲しいことが起こるなら、それら全て、僕に向けられるものだけでいいのに。これ以上、僕の大切な人が苦しくなるのは嫌だ。だから、と考えたところで、ふと思う。きっと僕が傷ついたら、シエロは悲しむんだろうなと。それは嫌だ。でも、だって、なんて矛盾することばかり考えながら僕は学園へ行く支度を進めた。



 学園へ向かっている最中。僕の頭の中にある言葉が浮かんでくる。
 
 ーーおかしい。
 
 僕は、周りが、みんながおかしいことに気が付いた。
 みんなから向けられる目、ひそひそと聞こえてくる声。それら全ては、ここでは感じたことがなかった、こっちに来てからは、一度も浴びることはなかった、疑念と悪意。
 苦しかった思い出、悲しかった思い出、痛かった思い出。それらが頭をよぎって、心臓が痛くて、息が苦しくなる。
 隣にすがりたくなるけれどそこにシエロはいなくて、それは叶わないけれど、シエロが隣にいなくても、心は一緒だから大丈夫だと自分に言い聞かせる。
 今までは一人でもこれらに耐えられていたのに、今は前よりも苦しいし、怖い。僕は、これらを浴びない生活に慣れすぎたんだと、改めて気づかされた。

 でも、どうしてこんなことになっているんだ。どうして、僕はこんな視線を、気持ちを向けられているんだ。
 シエロとの関係が噂になったときだって、こんな風ではなかった。確かに、嫉妬、というか、そんな感じの目線は感じたけれど、こんな僕を恨むような気持ちまでは込められていなかった。こんな、僕を疑うような、嫌悪するような、軽蔑するようなーー

「……人殺し」

 突然はっきりと聞こえてきた言葉に、頭が真っ白になる。息がうまくできない。
 その一言で、すべてわかってしまった。そういうことか。どうして、どうして僕は、こうして悪い奴にされるんだ。どうして、僕はーー

「……ぃ、おい!テオ!」
「……っは、はっ、はっ……ぁ」

 ルイが僕の肩を強くつかんで、僕の名前を呼ぶ。

「――ぁ、はっ、はぁっ……っは、ル、イ、はっ」
「とにかく、人がいないとこ行くぞ。息、ゆっくり深呼吸しろ、いいな」
「はっ、はっ、ぁ、うっ……はぁ……ふぅ……」

 うまく話せないから、ルイの言葉にたくさん頷いて、とにかくルイの後ろを一生懸命ついて行った。
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