愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

文字の大きさ
139 / 139

123 最終話

しおりを挟む
 僕とシエロの手に輝く、おそろいの指輪を眺める。

「指輪、気に入った?」
「うん、すごく……それに」
「うん?」

 結婚式を終えて、僕たちは寝室のベッドに腰かけている。
 この家は、シエロと僕の2人の家。防犯面も考えて、両陛下やソラナ殿下がいる家からそう遠くないところにある、使用人もいない、僕たち以外誰もいない、2人だけの家。

「僕たち、結婚したんだなって、実感できて、なんか、すごい……」
「嬉しい?」
「うん、嬉しいし、すごく、幸せだなって」
「そっか」

 シエロと結婚して、関係の名前が変わっても、きっと今までと何も変わらない。ずっと隣にいて、お互いが隣にいてほしくて、お互いが世界で一番大切な人。でも、その関係に名前をもらって、こうして、それを証明するものが手と僕の名前にあると思うと、体の中心からぐっと何かがこみあげてくる、みたいな、嬉しい、なんて言葉だけじゃ表せない、そんな気持ちになって。

「僕も、すごく幸せで、どうにかなっちゃいそう」
「ん……こんなに幸せでいいのかな」

 ついぽろっと出た言葉に、シエロが僕をぎゅっと包み込んで言う。

「いいんだよ。これからもっともっと幸せだって感じてもらうからね」
「ふふ、うん。シエロもね」
「うん」

 そうして自然に重なった唇から伝わる熱がくすぐったい。

「……僕ね、ずっと、どうして僕は産まれてきたんだろうって、どうしてお母さんは僕を一緒に天国に連れて行ってくれなかったのかなって思ってた」
「……うん」
「でもね、今は、きっとシエロに出会うために産まれてきたんだって思うようになってね?今まで本当にたくさんつらかったし、怖い思いも、痛い思いもたくさんしたけど、こうして、シエロに出会えて、人を愛する気持ちも、人に愛されることも知って……生きてて、良かったなって思うんだ」
「僕も、テオに出会えて、すごく嬉しいし、幸せ。……テオに出会わなければ、こんなに人生が楽しいだなんて、思わなかったよ」

 シエロの顔が近づいてきて、額がこつんとあたる。

「テオ、愛してるよ」
「僕も、愛してる」

 愛を伝えあって、ぶつかった視線に笑いあって、キスをして。
 シエロが隣にいて、僕に愛を注いでくれて、僕もそれに答える。そんな穏やかな毎日をこれからも過ごせたら、それ以上に幸せなことなんて、ないから。

 シエロ、僕と出会って、隣にいてくれて。僕を、愛してくれて、ありがとう。僕も、言葉で伝えきれないくらい、愛してる。











 いつも以上にたくさん愛を伝えあい、熱い夜を過ごした。
 
 僕の隣で眠るテオの頬をなでる。
 僕の隣にテオがいる。それは、今日も、明日も、これからも変わらない

 何度愛を伝えても足りないくらい、大好きで、愛おしくて、大切な存在。そんな君が、ずっと僕の隣にいて、笑っていたら、それ以上に幸せなことなんてないから。

 テオ、産まれてきてくれて、生きてくれて、僕と出会ってくれて、僕にこの気持ちを教えてくれて、ありがとう。僕も、愛してるなんて言葉で伝えきれないくらい、愛してるよ。
しおりを挟む
感想 42

この作品の感想を投稿する

みんなの感想(42件)

shura
2025.01.24 shura

テオとシエロが甘々で微笑ましいです。テオはこれからもっともっと幸せになってほしいですね
辛い思いを沢山したけれど、シエロと出会えて本当に良かったです!

アナベル伯爵は結局なにがしたかったのでしょうね
時期当主予定の嫡男をいじめたり悪評をたれ流したりしても困るのは伯爵家ですし
他国の王子に毒を盛ったら伯爵家一族皆処刑されても仕方ないぐらいの重罪なので普通なら恐ろしくてできませんよね

解除
キース
2024.09.19 キース

テオくんやっと幸せになって良かったです。
留学してからも無駄に周りから精神攻撃くらっていて可哀想でしたね…
王子も作戦があるにしても彼の心もしっかり守ってあげないと。ただでさえ長年心と体を傷つけられてきたのですから。
馬鹿家族と使用人は軽く処刑か私刑ですかね笑

解除
ぴかぴょん
2024.04.12 ぴかぴょん

完結おめでとうございます!!
最後まで駆け抜けてしまいました(*^▽^*)
2人とも良かったねぇと涙ぐんでしまいました…
素敵なお話をありがとうございます!

2024.04.16 鮎瀬ゆう

ありがとうございます!
そう言っていただけて嬉しいです( *´艸`)
こちらこそ、最後までお読みいただき本当にありがとうございます!!

解除

あなたにおすすめの小説

「自由に生きていい」と言われたので冒険者になりましたが、なぜか旦那様が激怒して連れ戻しに来ました。

キノア9g
BL
「君に義務は求めない」=ニート生活推奨!? ポジティブ転生者と、言葉足らずで愛が重い氷の伯爵様の、全力すれ違い新婚ラブコメディ! あらすじ 「君に求める義務はない。屋敷で自由に過ごしていい」 貧乏男爵家の次男・ルシアン(前世は男子高校生)は、政略結婚した若き天才当主・オルドリンからそう告げられた。 冷徹で無表情な旦那様の言葉を、「俺に興味がないんだな! ラッキー、衣食住保証付きのニート生活だ!」とポジティブに解釈したルシアン。 彼はこっそり屋敷を抜け出し、偽名を使って憧れの冒険者ライフを満喫し始める。 「旦那様は俺に無関心」 そう信じて、半年間ものんきに遊び回っていたルシアンだったが、ある日クエスト中に怪我をしてしまう。 バレたら怒られるかな……とビクビクしていた彼の元に現れたのは、顔面蒼白で息を切らした旦那様で――!? 「君が怪我をしたと聞いて、気が狂いそうだった……!」 怒鳴られるかと思いきや、折れるほど強く抱きしめられて困惑。 えっ、放置してたんじゃなかったの? なんでそんなに必死なの? 実は旦那様は冷徹なのではなく、ルシアンが好きすぎて「嫌われないように」と身を引いていただけの、超・奥手な心配性スパダリだった! 「君を守れるなら、森ごと消し飛ばすが?」 「過保護すぎて冒険になりません!!」 Fランク冒険者ののんきな妻(夫)×国宝級魔法使いの激重旦那様。 すれ違っていた二人が、甘々な「週末冒険者夫婦」になるまでの、勘違いと溺愛のハッピーエンドBL。

異世界で8歳児になった僕は半獣さん達と仲良くスローライフを目ざします

み馬下諒
BL
志望校に合格した春、桜の樹の下で意識を失った主人公・斗馬 亮介(とうま りょうすけ)は、気がついたとき、異世界で8歳児の姿にもどっていた。 わけもわからず放心していると、いきなり巨大な黒蛇に襲われるが、水の精霊〈ミュオン・リヒテル・リノアース〉と、半獣属の大熊〈ハイロ〉があらわれて……!? これは、異世界へ転移した8歳児が、しゃべる動物たちとスローライフ?を目ざす、ファンタジーBLです。 おとなサイド(半獣×精霊)のカプありにつき、R15にしておきました。 ※ 造語、出産描写あり。前置き長め。第21話に登場人物紹介を載せました。 ★お試し読みは第1部(第22〜27話あたり)がオススメです。物語の傾向がわかりやすいかと思います★ ★第11回BL小説大賞エントリー作品★最終結果2773作品中/414位★応援ありがとうございました★

やっと退場できるはずだったβの悪役令息。ワンナイトしたらΩになりました。

毒島醜女
BL
目が覚めると、妻であるヒロインを虐げた挙句に彼女の運命の番である皇帝に断罪される最低最低なモラハラDV常習犯の悪役夫、イライ・ロザリンドに転生した。 そんな最期は絶対に避けたいイライはヒーローとヒロインの仲を結ばせつつ、ヒロインと円満に別れる為に策を練った。 彼の努力は実り、主人公たちは結ばれ、イライはお役御免となった。 「これでやっと安心して退場できる」 これまでの自分の努力を労うように酒場で飲んでいたイライは、いい薫りを漂わせる男と意気投合し、彼と一夜を共にしてしまう。 目が覚めると罪悪感に襲われ、すぐさま宿を去っていく。 「これじゃあ原作のイライと変わらないじゃん!」 その後体調不良を訴え、医師に診てもらうととんでもない事を言われたのだった。 「あなた……Ωになっていますよ」 「へ?」 そしてワンナイトをした男がまさかの国の英雄で、まさかまさか求愛し公開プロポーズまでして来て―― オメガバースの世界で運命に導かれる、強引な俺様α×頑張り屋な元悪役令息の元βのΩのラブストーリー。

婚約破棄されて追放された僕、実は森羅万象に愛される【寵愛者】でした。冷酷なはずの公爵様から、身も心も蕩けるほど溺愛されています

水凪しおん
BL
貧乏男爵家の三男アレンは、「魔力なし」を理由に婚約者である第二王子から婚約破棄を言い渡され、社交界の笑い者となる。家族からも見放され、全てを失った彼の元に舞い込んだのは、王国最強と謳われる『氷の貴公子』ルシウス公爵からの縁談だった。 「政略結婚」――そう割り切っていたアレンを待っていたのは、噂とはかけ離れたルシウスの異常なまでの甘やかしと、執着に満ちた熱い眼差しだった。 「君は私の至宝だ。誰にも傷つけさせはしない」 戸惑いながらも、その不器用で真っ直ぐな愛情に、アレンの凍てついた心は少しずつ溶かされていく。 そんな中、領地を襲った魔物の大群を前に、アレンは己に秘められた本当の力を解放する。それは、森羅万象の精霊に愛される【全属性の寵愛者】という、規格外のチート能力。 なぜ彼は、自分にこれほど執着するのか? その答えは、二人の魂を繋ぐ、遥か古代からの約束にあった――。 これは、どん底に突き落とされた心優しき少年が、魂の番である最強の騎士に見出され、世界一の愛と最強の力を手に入れる、甘く劇的なシンデレラストーリー。

「役立たず」と追放された神官を拾ったのは、不眠に悩む最強の騎士団長。彼の唯一の癒やし手になった俺は、その重すぎる独占欲に溺愛される

水凪しおん
BL
聖なる力を持たず、「穢れを祓う」ことしかできない神官ルカ。治癒の奇跡も起こせない彼は、聖域から「役立たず」の烙印を押され、無一文で追放されてしまう。 絶望の淵で倒れていた彼を拾ったのは、「氷の鬼神」と恐れられる最強の竜騎士団長、エヴァン・ライオネルだった。 長年の不眠と悪夢に苦しむエヴァンは、ルカの側にいるだけで不思議な安らぎを得られることに気づく。 「お前は今日から俺専用の癒やし手だ。異論は認めん」 有無を言わさず騎士団に連れ去られたルカの、無能と蔑まれた力。それは、戦場で瘴気に蝕まれる騎士たちにとって、そして孤独な鬼神の心を救う唯一の光となる奇跡だった。 追放された役立たず神官が、最強騎士団長の独占欲と溺愛に包まれ、かけがえのない居場所を見つける異世界BLファンタジー!

悪役令息を改めたら皆の様子がおかしいです?

  *  ゆるゆ
BL
王太子から伴侶(予定)契約を破棄された瞬間、前世の記憶がよみがえって、悪役令息だと気づいたよ! しかし気づいたのが終了した後な件について。 悪役令息で断罪なんて絶対だめだ! 泣いちゃう! せっかく前世を思い出したんだから、これからは心を入れ替えて、真面目にがんばっていこう! と思ったんだけど……あれ? 皆やさしい? 主人公はあっちだよー? ご感想欄 、うれしくてすぐ承認を押してしまい(笑)ネタバレ 配慮できないので、ご覧になる時は、お気をつけください! ユィリと皆の動画つくりました! お話にあわせて、ちょこちょこあがる予定です。 インスタ @yuruyu0 絵もあがります Youtube @BL小説動画 アカウントがなくても、どなたでもご覧になれます プロフのWebサイトから、両方に飛べるので、もしよかったら! 名前が  *   ゆるゆ  になりましたー! 中身はいっしょなので(笑)これからもどうぞよろしくお願い致しますー!

婚約破棄された俺の農業異世界生活

深山恐竜
BL
「もう一度婚約してくれ」 冤罪で婚約破棄された俺の中身は、異世界転生した農学専攻の大学生! 庶民になって好きなだけ農業に勤しんでいたら、いつの間にか「畑の賢者」と呼ばれていた。 そこに皇子からの迎えが来て復縁を求められる。 皇子の魔の手から逃げ回ってると、幼馴染みの神官が‥。 (ムーンライトノベルズ様、fujossy様にも掲載中) (第四回fujossy小説大賞エントリー中)

噂の冷血公爵様は感情が全て顔に出るタイプでした。

春色悠
BL
多くの実力者を輩出したと云われる名門校【カナド学園】。  新入生としてその門を潜ったダンツ辺境伯家次男、ユーリスは転生者だった。  ___まあ、残っている記憶など塵にも等しい程だったが。  ユーリスは兄と姉がいる為後継者として期待されていなかったが、二度目の人生の本人は冒険者にでもなろうかと気軽に考えていた。  しかし、ユーリスの運命は『冷血公爵』と名高いデンベル・フランネルとの出会いで全く思ってもいなかった方へと進みだす。  常に冷静沈着、実の父すら自身が公爵になる為に追い出したという冷酷非道、常に無表情で何を考えているのやらわからないデンベル___ 「いやいやいやいや、全部顔に出てるんですけど…!!?」  ユーリスは思い出す。この世界は表情から全く感情を読み取ってくれないことを。いくら苦々しい表情をしていても誰も気づかなかったことを。  寡黙なだけで表情に全て感情の出ているデンベルは怖がられる度にこちらが悲しくなるほど落ち込み、ユーリスはついつい話しかけに行くことになる。  髪の毛の美しさで美醜が決まるというちょっと不思議な美醜観が加わる感情表現の複雑な世界で少し勘違いされながらの二人の行く末は!?    

処理中です...
本作については削除予定があるため、新規のレンタルはできません。

このユーザをミュートしますか?

※ミュートすると該当ユーザの「小説・投稿漫画・感想・コメント」が非表示になります。ミュートしたことは相手にはわかりません。またいつでもミュート解除できます。
※一部ミュート対象外の箇所がございます。ミュートの対象範囲についての詳細はヘルプにてご確認ください。
※ミュートしてもお気に入りやしおりは解除されません。既にお気に入りやしおりを使用している場合はすべて解除してからミュートを行うようにしてください。