愛されることを知らない僕が隣国の第2王子に愛される

鮎瀬ゆう

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 僕たちが会場に入ると、ざわざわとしていた会場が静かになる。でもそれは、嫌な静けさではなかった。みんなが僕たちの話をきちんと聞こうとしてくれていると雰囲気で感じる。
 僕たちは、2人で並んでたくさんの人を前に話を始めた。

「皆様、本日はお集りいただき、ありがとうございます」

 僕の身体は全部が心臓になってしまったのではないかというくらい、心臓の音がうるさく響いている。それでも、顔だけは前を向いて、背筋を伸ばして立つ。

「本日は皆様に聞いていただきたいことがあり、このような場を設けさせていただきました」

 ぎゅっと、シエロの手に力が込められたのが伝わってくる。僕もそれに返事をするように、力を返した。

「私、シエロ・モルガナイトは、こちらにいるテオと婚約いたしましたことをご報告いたします。テオからも、ご挨拶差し上げます」

 僕は一度シエロと目を合わせてから前を向き、話を始めた。

「シエロ殿下と婚約いたしました、テオと申します。本日はお集まりいただき、ありがとうございます」 

 姿勢を正して、続ける。

「僕は、シエロ殿下と出会えたことが、人生で一番の幸せな出来事だと、そう思っております。シエロ殿下には助けてもらって、支えてもらってばかりだけれど、僕も、シエロ殿下を支えられる、そんな存在になれたらと思っております」

 話しながら、僕は会場の中に目を巡らせて、たくさんの人と目を合わせた。そうしていると、今日来てくれているブライト先生や、ルイ、ソラナ殿下。それから、両陛下と目があう。

「……シエロ殿下だけじゃなく、僕はこの国の方に、たくさん助けていただきました。みんながいなかったら、きっと僕は今、ここにはいません。みんなへの感謝の気持ちを僕は一生、忘れません。その恩返しを、それ以上のことをみなさんへ、この国へ、届けられるように精進したいと思います」

 ずっと、考えていた。僕はみんなにたくさんお世話になったのに、何を返せるんだろうって。その答えは今もわからないけれど、これから見つけたい。僕ができることをコツコツやって、それが、みんなへの恩返しになったらいいなって、そう思う。

「テオと出会って、私は頑張る力をもらいました。頑張る意味を、もらいました。私にとって、テオはいなくてはならない存在です」

 僕はきっと崩れてはいないであろう姿勢に意識を向けて、より一層背筋をピンッとさせた。

「まだまだ未熟者な2人ではありますが、成長していけるよう精進してまいります。こんな私たちですが、今後ともどうぞよろしくお願いいたします」

 締めの言葉と共に、二人で頭を下げる。
 そうすると、割れんばかりの拍手の音で会場が埋め尽くされた。顔を上げると、みんなが祝福して拍手をしてくれていた。それが嬉しくて、嬉しくて、隣を見ると、嬉しそうにしているシエロがいて、それも嬉しくて、どうしようもない気持ちでいっぱいになって、たくさんの人に見られているのに僕は泣いてしまった。
 
 その後もパーティーは続いた。
 僕たちのもとに、代わる代わるたくさんの人が挨拶に来て、祝福の言葉をくれた。僕はそれがすごく嬉しくて、笑顔でお礼を言った。
 それがようやく落ち着いたころ、ルイとソラナ殿下とブライト先生が来てくれた。
 ブライト先生はなぜか涙ぐんでいて少し心配したけれど、良かった、本当に良かった、って言ってくれて、僕も少しつられて泣きそうになってしまった。
 ブライト先生がいなければ、僕はシエロと再会できなかったかもしれない。たくさん、お世話になった。ブライト先生には感謝しかないと、もう一度お礼を言ったら、本格的に泣き出してしまってどうしていいかわからず、あたふたしたけれど、幸せだなって、そう思った。
 
 こうして僕たちは無事に婚約発表のパーティーを終えた。
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