カウボーイの徒然

フランク太宰

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カウボーイの徒然

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 俺は目が覚めたとき、悲しくもない気持ちであったが 、肺の中に砂のたまっているような嫌なムカつきを感じていた。
  実際に砂が肺に貯まっているのだろうか?
それとも、精神的なものなのか?
  重い体を持ち上げて、ベッドの横の窓から外の風景を見る、荒廃した大地が永遠に続く、いつもと同じ風景。
  コップで水瓶の水を汲み一気に飲みほし、ついでに"ぬるい"水を顔にかける、曇った鏡には老人のような男が写る、痩せ細り髭が伸びきった顔、髪の毛はこの間、雨が降ったとき以来、洗っていないために、油ぎっている。とても二十代には見えない、そんな顔の男を目の前にして、俺はなにもかける言葉が見つからない。
 少量の塩をブラシにつけ歯を磨く、水で口は濯がない、水は貴重なのだ。金で買えない唯一のものがあるとしたら、救いの雨だろう。貧困の地に降り注ぐ一滴の雨粒がこんなにもいとおしいとは、情けない。
  井戸から組み上げられる水は飲めたものじゃない。少なくとも腹痛で死ぬのだけはごめんだ。沸かせば飲めないこともない、沸かした水が水瓶に入っているわけだが、沸かすにも配給制の薪に朝から火を着けてコーヒーを飲む趣味もなければコーヒもこの部屋にはない。
  木製のドアがドンドンとなる、俺は無意識にリボルバーを枕のしたから取り出し、ドアに向かって「誰だ?」といった。
    ドアの外から、「シーよあんたの部屋にくるのなんて私ぐらいのもんでしょ、じゃなきゃ品のない、あんたのお仲間かしら、とにかく開けてよ薪が重いの」
俺はドアを開けた。
「薪なら俺が取りに行くんだから、わざわざ持ってくんなよ」
彼女は薪を床においた、白いエプロンを来ていたが、もはやそれは白いエプロンとは言えないほど、土色をしていた。
「あんたはそうやって、人の善意をいつもいいように受け取らない、いつかバチがあたるわよ」
「どこの誰が掘っ立て小屋に住み着く俺にわざわざバチを当てに来るんだよ?」
彼女はめんどくさそうに答えた
「神様よ神様は空の上から一直線にあんたの胸にナイフを落とすわ」
 神、大地に雨も降らしてくれない奴だ、
俺はずっと信仰を嫌ってきた、礼拝は時間の無駄だ、どんな奴も死ぬのだから。
そう、死の足音は何時でも聞こえている。
 
「おー恐いね、神っていうのは、でも俺は流行りの悪魔崇拝者なんでね」
「バカ言って、どうせあんたはなんにも信じちゃいないでしょう」
 たしかに彼女の言うとうりだ。
でも、時にはなにかを信じたくもなる。
きっとそれは命乞いをするならず者の心情ににているのだろう。
「朝ごはん作るけど、あんたも食べる?」
「頂かせて頂きます」

  俺はハットをかぶり股の破れを幾度なく直したjeansを履き、派手な青いウエスタンシャツを着て一回に降りていった、木の階段を一段おりるたびに"ミシ"と嫌な音がする。このあばら屋も立て替えが必要なのかもしれない…
 1階へ降り左側の通路にあるドアを開けると、シーがいそいそと飯を用意していた。
  白い肌の女、片目がグリーンの女、彼女はとても美しい。口さええ悪くなくて、少し着るものに気を使えば、いくらでも生きる道はあるのだろうに。しかし、彼女は 肺病で死んだ親父の建てたこの宿屋を必死に守っている。何度も危険な目に合いながら。
 処女かどうかもわからない、しかし、彼女を犯そうとした男はショットガンで顔を潰されている。
  誰がショットガンを撃ったのか?
まーそれはどうでもいいことだ。
「はい」と机の上に彼女が飯を置いた。
卵とベーコンとコーヒー、豪勢だ。
「いやに、豪勢な朝食だな、このベーコンは?」
  彼女は自分のぶんの料理を運びながら
「ああ、あの牧場主がくれたのよ、あの爺さん私に優しいのよ、死んだ娘に似てるんだって」
「なるほどな、でも気をつけろよ 、あの爺さんだって玉ついてるんだからな」
彼女は笑いながら席についた。
「そんときは玉なしにしてやるわよ」
「ちげぇねぇ」
「それにあんたもいることだし」
「あんまり期待するなよ」
「そのためにただで住まわせてやってるんだから」  
 そお言って彼女は俺の目を見つめてきた。
俺は別に何も期待はしなかった。
若い女っていうのは"こういう"もんだ。
「都会へは行かないのか?」
彼女は期待はずれな顔をして
「行かないわ」と言った。
「こんなところにいたって何も良いことなんて無いだろうに」
「この宿を守るのが私の人生だから」
「神のお告げか?」
「かもね」
といって彼女は薄いコーヒーを飲んだ。
「まーたまには人殺しの悪魔の助言も聞いてくれよ」
彼女はまた、俺の方を見て言った。
「しかたないわ、全部」
「だとしてもだよ」
俺はそんなことを言った、というかそんなことしか言えなかった。
  俺は窓の外を見た。俺の部屋の窓の景色とは違った景色がここからは見える。
遠くには黒く巨大な棒が地面に突き刺さり遥か空高くそびえ立っていた。
 親父の親父の親父辺りが使っていたあばら屋だ。あれに乗ってここまで来たらしい。こんなところまではるばると。


  時々考える、"救いのない徒然"はあの船からもたらされたものなのか、それともあの船が発射された所にもあったのか、それとも、そう、初めからあったものなのか。


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