上海ハニー

フランク太宰

文字の大きさ
9 / 25

人工湖畔 Ⅰ

しおりを挟む
 上海の人工湖畔の畔に中国式の屋寝付きテラスがある、三角の屋根の上に金色のボールが刺さっていて、四角形の角にも半分の大きさの金色のボールが刺さっている。This is China といったような建物だ、人工湖畔の水は緑色に藻が張っているし、中央の四つ頭の噴水も緑色の水を吐き出していた。
 そう、そんなところで私は彼女と会った。
 Oは父親の部下というか、なんというか、エリートではあったのだろう、"人として"の問題を置いておけば。
彼女と初め出会ったのは、父親の会社の会議室だった、新宿にあるビルの。
 私は当時、父親の伝でバイトをしていた。私の通っていた学舎はバイト禁止だったのだけれど、実際のところ大抵の学生は地元でバイトをしていた。
私はバイトをする必要は金銭的にはなかったのだが、学生時分、要するに"ガキ"というのは、周りに流される、自分の囲む環境が世界のすべてだと思っているし、はみ出すのは恐怖に思えるものだ。時がたち食うために働くように成ってからは、無理に若い頃、働くのは馬鹿馬鹿しく思える、アルバイトから学べるものなんて、人間の汚い部分を早めに知れるということぐらい、そして社会人として働くことから学べるものは、正直、(ジョークをこの場では書きたいが)何もない。
  それで、当時、唯一学校公認の稼ぎ方というのは"家業の手伝いによる口座を使用しない収入"
であった、要するに"おこずかい"だ。別にまわりとおなじ様に、コンビニなり用心棒なりすればよかったのだけれど、当時の私は教師に良いイメージを持たせて、就職先なり最高学府、何かを紹介、推薦して貰うのが目標であった。当時はJAZZや小説、演劇にはまっていて、勉強などしたくなかったのだ。
馬鹿だったと今は後悔しているが、私は学校公認の出稼者になることができた。
教師の言葉を今でも覚えている。
「君は本当に偉い、俺の息子なんて、髪を金色に染めやがって何がしたいんだか」
先生、今の私には息子さんの気持ちよくわかりますよ、そしてあなた方は、もっと慣用になるべきでした。
 しかし、アルバイトをすることに付随して酒と煙草を覚えた。同じ職場にいた派遣のAさんが、私の事を学生でなく、フリーターにでも思ったらしく、
「酒も煙草も、まだですね」
と言った私に
「いい歳して、お酒童貞、何て情けないよ」と、小バカと言うか、情けない目で私を見てきたので私も自棄になり、彼女に付き合うようになった、あらかじめ、年齢を言っておけば良かったのだろうが、それも詰まらなく感じたのだ。
お陰で酒童貞でない方の童貞も彼女で消失した。
 彼女は特に綺麗でもないが、髪が長くて、それをポーニーテイルに何時もしていた、仕事中は眼鏡をかけていたが、プライベートではコンタクトレンズにしていた。そうすることで彼女の膨らんだ頬がチャーミングに強調された。そして、足を組んで煙草を燻らせる姿が、何ともセクシーで幼い私を興奮させた。
彼女のヘアゴムを後ろから外し、髪をたくしあげて、隠れていた耳を触るのは、当時の私には幸福な前技だった。
彼女に私の歳を教えたのは、北千住の小綺麗なホテルのベットの上だった、驚くべき事に半年近く私は真実をいわなかったのだ。
私は特に考えもなく、彼女に告げた、レバノンに行ったことのある友人の話の延長線上で。
「別れた方がいい」彼女はそう言った。私は何も返事をしなかった。そして、ランプの下に置いてあった、赤いタバコの箱を手に取った。
「若いのにタバコなんて、やめた方がいいわ」
それについても、私は何も言い返さなかった。
  私達は駅で"永遠のお別れ"をした、私はそのバイトをやめ、学校的には違法の、というか社会的にも違法な"とある運動"を手助けすることで、少ない収入を得るようになった、一ヶ月で辞めたけれどね、そこからは無職になった。
 Aと最後に別れるときに、私は一言尋ねた
「本当に何も知らなかった?」
彼女は未だに何も答えてはくれない。
  彼女は私に多くの物を残してくれた、きっと客観的に見ればそう言った言葉が相応しいけれど、私が正直に彼女が残してくれた物を思い浮かべると"煙草"
だけになる。
未だに煙草は止められないし、セーブも出来ない。
酒の量は歳と共に減っていっている気もするが。
  
 それで、そんな最中、私はOと出会った。
 
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

百合ランジェリーカフェにようこそ!

楠富 つかさ
青春
 主人公、下条藍はバイトを探すちょっと胸が大きい普通の女子大生。ある日、同じサークルの先輩からバイト先を紹介してもらうのだが、そこは男子禁制のカフェ併設ランジェリーショップで!?  ちょっとハレンチなお仕事カフェライフ、始まります!! ※この物語はフィクションであり実在の人物・団体・法律とは一切関係ありません。 表紙画像はAIイラストです。下着が生成できないのでビキニで代用しています。

ちょっと大人な体験談はこちらです

神崎未緒里
恋愛
本当にあった!?かもしれない ちょっと大人な体験談です。 日常に突然訪れる刺激的な体験。 少し非日常を覗いてみませんか? あなたにもこんな瞬間が訪れるかもしれませんよ? ※本作品ではGemini PRO、Pixai.artで作成した生成AI画像ならびに  Pixabay並びにUnsplshのロイヤリティフリーの画像を使用しています。 ※不定期更新です。 ※文章中の人物名・地名・年代・建物名・商品名・設定などはすべて架空のものです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

吊るされた少年は惨めな絶頂を繰り返す

五月雨時雨
BL
ブログに掲載した短編です。

上司、快楽に沈むまで

赤林檎
BL
完璧な男――それが、営業部課長・**榊(さかき)**の社内での評判だった。 冷静沈着、部下にも厳しい。私生活の噂すら立たないほどの隙のなさ。 だが、その“完璧”が崩れる日がくるとは、誰も想像していなかった。 入社三年目の篠原は、榊の直属の部下。 真面目だが強気で、どこか挑発的な笑みを浮かべる青年。 ある夜、取引先とのトラブル対応で二人だけが残ったオフィスで、 篠原は上司に向かって、いつもの穏やかな口調を崩した。「……そんな顔、部下には見せないんですね」 疲労で僅かに緩んだ榊の表情。 その弱さを見逃さず、篠原はデスク越しに距離を詰める。 「強がらなくていいですよ。俺の前では、もう」 指先が榊のネクタイを掴む。 引き寄せられた瞬間、榊の理性は音を立てて崩れた。 拒むことも、許すこともできないまま、 彼は“部下”の手によって、ひとつずつ乱されていく。 言葉で支配され、触れられるたびに、自分の知らなかった感情と快楽を知る。それは、上司としての誇りを壊すほどに甘く、逃れられないほどに深い。 だが、篠原の視線の奥に宿るのは、ただの欲望ではなかった。 そこには、ずっと榊だけを見つめ続けてきた、静かな執着がある。 「俺、前から思ってたんです。  あなたが誰かに“支配される”ところ、きっと綺麗だろうなって」 支配する側だったはずの男が、 支配されることで初めて“生きている”と感じてしまう――。 上司と部下、立場も理性も、すべてが絡み合うオフィスの夜。 秘密の扉を開けた榊は、もう戻れない。 快楽に溺れるその瞬間まで、彼を待つのは破滅か、それとも救いか。 ――これは、ひとりの上司が“愛”という名の支配に沈んでいく物語。

敗戦国の姫は、敵国将軍に掠奪される

clayclay
恋愛
架空の国アルバ国は、ブリタニア国に侵略され、国は壊滅状態となる。 状況を打破するため、アルバ国王は娘のソフィアに、ブリタニア国使者への「接待」を命じたが……。

処理中です...