上海ハニー

フランク太宰

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フライト

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 成田空港からモスクワのシェレメチボ空港へは、だいたいだいたい8時間のフライトと言ったところだ。私のとなりの席にはKが座り、長時間時間を潰すのには良いと思っていた。
Kは私に就職の話題を提供してきた、普遍的な話題だ 、北の都に行くというのに、しかしKにしてみれば大学の単位のために短期留学に参加していたのだし、ソユーズに興味があっても、ロシア語学科の人間と暗い話をするよりはましだったのだろう。そう、この短期留学は確か二単位だったと思う。
 無論、少しの睡眠を含めてだが、ずいぶんと長く世間話を二人でしていた。
女性と数時間も実のない話をするのも久しぶりというか私の人生ではあまりないことだった。
 「結局のところ、貴方は港港で女性を作りながら、生きていきたいわけだ」
 「さぁー、それが悪いとは思えないけど、幸せな生き方でもないんじゃないかな」
 こんな調子だった
  
 フライトが五時間ほど経過したときに機内が騒々しくなり、キャビンアテンダントのロシア人女性が医者を探し始め、機長は聞き取りにくいロシア語訛りの英語でブツブツト、緊急着陸をすることを僕らに伝えた。 我々は最初、たいしてドギマギなどしなかった、そういうこともあるだろう、それに赤の他人だ。
しかし、グループ長が慌て出して飛行機が着陸体勢に入る直前
に倒れたのはOだということが分かった。
 
    私たちの乗った機はシベリアの名前も聞いたことのない空港に降り立ち、そのときは不安が機内を包んだけれど、小一時間ほどで再び飛行機は飛び上がった。
 Oがどうなったのかは最初分からなかった、運び出されたようであったが、席が離れすぎていたのだ。
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