I can see for miles and miles…

フランク太宰

文字の大きさ
1 / 1

I can see for miles and miles…

しおりを挟む
   Aは孤独な男だ。
しかし、回りは彼を順風満帆でいて、愛に溢れていると感じていた。
 彼は他人から好かれる。誰にでも優しく心身に振る舞うし、彼女にたいしても、サドなSEXなど求めない。
彼女はAと結婚し同じ墓に眠るつもりである。
割かし綺麗な女であるし、性格も悪くない、Aも彼女を愛してはいたし、結婚することは当然であり、式には多くの知り合いが来るであろうと考えていた。
 幸せな男なんだ、本当に。

 しかし、Aは何かパズルのピースがひとつ足りないような気がしていた。そして、そのパズルが完成しないことも理解している。
 しかし、未だに幼稚じみた夢を見る。緑のオーロラのカーテンをすり抜けながら空を飛ぶ、そしてオーロラの女王と男女の関係になる。
もちろん、彼は知っている
オーロラは肉眼では緑に見えない事を。つまりなんというか、彼は心に空洞があるにしても、上手くやっていける人間なのだ。
  数日前、彼は行きつけの喫茶店に行った。古びた煉瓦で出来た苔むして緑の外観の喫茶店。     
いつも通り、タバコを吸おうと思っていたが、席に灰皿はなかった。エプロンの下に黒いポロシャツを着た、女性店員に声をかけた、彼女は振り向き、特に急ぐこともなく、コッコッと鈍い音の鳴るスニーカーで 席に近づいてきた。
 「灰皿もらえるかな」
 彼女は一様申し訳ない素振りで
 「申し訳ないのですが、ランチタイムは全席禁煙になりまして」
 「後、30分は吸えないわけだ」
 「申し訳ありません」
 「いや申し訳なくはないよ、待ちますから。取り敢えずナポリタンとアイスティーもらえるかな?」
 「お待たせしてすみません。ストレートで宜しいですか?」
"甘くて酸っぱいレモンティー"
昔、そんな歌があった。紀元前の民謡だ。
 「ええ、ストレートで」
 「少々お待ち下さい」
窓の外を眺めると、乳母車を牽いた、若い女性が右から左に流れていった。
 ふっと、後ろで会話が聞こえた。老婆の声とさっきの店員の声だ。
 「申し訳ありません」
 「仕方ないわよ、今時タバコなんてね」
 
 なんというか人生は寂しい。時間はただただ過ぎ去る、誰も悪くないが、時には誰かを攻めたくもなる。
自分自身の容量は、とうにパンクしているのだから。

  喫茶店にはモンローの古い写真が飾られているが、昨今、マリリン・モンローは下らない陰謀論の的に成ってしまった。

  誰も彼女の歌声も吐息も知らない。
しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

服を脱いで妹に食べられにいく兄

スローン
恋愛
貞操観念ってのが逆転してる世界らしいです。

あるフィギュアスケーターの性事情

蔵屋
恋愛
この小説はフィクションです。 しかし、そのようなことが現実にあったかもしれません。 何故ならどんな人間も、悪魔や邪神や悪神に憑依された偽善者なのですから。 この物語は浅岡結衣(16才)とそのコーチ(25才)の恋の物語。 そのコーチの名前は高木文哉(25才)という。 この物語はフィクションです。 実在の人物、団体等とは、一切関係がありません。

あなたの愛はいりません

oro
恋愛
「私がそなたを愛することは無いだろう。」 初夜当日。 陛下にそう告げられた王妃、セリーヌには他に想い人がいた。

ママと中学生の僕

キムラエス
大衆娯楽
「ママと僕」は、中学生編、高校生編、大学生編の3部作で、本編は中学生編になります。ママは子供の時に両親を事故で亡くしており、結婚後に夫を病気で失い、身内として残された僕に精神的に依存をするようになる。幼少期の「僕」はそのママの依存が嬉しく、素敵なママに甘える閉鎖的な生活を当たり前のことと考える。成長し、性に目覚め始めた中学生の「僕」は自分の性もママとの日常の中で処理すべきものと疑わず、ママも戸惑いながらもママに甘える「僕」に満足する。ママも僕もそうした行為が少なからず社会規範に反していることは理解しているが、ママとの甘美な繋がりは解消できずに戸惑いながらも続く「ママと中学生の僕」の営みを描いてみました。

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

BL 男達の性事情

蔵屋
BL
漁師の仕事は、海や川で魚介類を獲ることである。 漁獲だけでなく、養殖業に携わる漁師もいる。 漁師の仕事は多岐にわたる。 例えば漁船の操縦や漁具の準備や漁獲物の処理等。 陸上での魚の選別や船や漁具の手入れなど、 多彩だ。 漁師の日常は毎日漁に出て魚介類を獲るのが主な業務だ。 漁獲とは海や川で魚介類を獲ること。 養殖の場合は魚介類を育ててから出荷する養殖業もある。 陸上作業の場合は獲った魚の選別、船や漁具の手入れを行うことだ。 漁業の種類と言われる仕事がある。 漁師の仕事だ。 仕事の内容は漁を行う場所や方法によって多様である。 沿岸漁業と言われる比較的に浜から近い漁場で行われ、日帰りが基本。 日本の漁師の多くがこの形態なのだ。 沖合(近海)漁業という仕事もある。 沿岸漁業よりも遠い漁場で行われる。 遠洋漁業は数ヶ月以上漁船で生活することになる。 内水面漁業というのは川や湖で行われる漁業のことだ。 漁師の働き方は、さまざま。 漁業の種類や狙う魚によって異なるのだ。 出漁時間は早朝や深夜に出漁し、市場が開くまでに港に戻り魚の選別を終えるという仕事が日常である。 休日でも釣りをしたり、漁具の手入れをしたりと、海を愛する男達が多い。 個人事業主になれば漁船や漁具を自分で用意し、漁業権などの資格も必要になってくる。 漁師には、豊富な知識と経験が必要だ。 専門知識は魚類の生態や漁場に関する知識、漁法の技術と言えるだろう。 資格は小型船舶操縦士免許、海上特殊無線技士免許、潜水士免許などの資格があれば役に立つ。 漁師の仕事は、自然を相手にする厳しさもあるが大きなやりがいがある。 食の提供は人々の毎日の食卓に新鮮な海の幸を届ける重要な役割を担っているのだ。 地域との連携も必要である。 沿岸漁業では地域社会との結びつきが強く、地元のイベントにも関わってくる。 この物語の主人公は極楽翔太。18歳。 翔太は来年4月から地元で漁師となり働くことが決まっている。 もう一人の主人公は木下英二。28歳。 地元で料理旅館を経営するオーナー。 翔太がアルバイトしている地元のガソリンスタンドで英二と偶然あったのだ。 この物語の始まりである。 この物語はフィクションです。 この物語に出てくる団体名や個人名など同じであってもまったく関係ありません。

盗み聞き

凛子
恋愛
あ、そういうこと。

処理中です...