ウーバー配達員

motoi

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ウーバー配達員

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 遅い。
 ウーバーを頼んでから、もう40分は経とうとしているが、まだ来ない。配達員の位置を確認すると、さっきから俺の家の周りをぐるぐると周回している。
 一体、どんな方向音痴が配達員をやってるんだろう。
 配達員のトップ画像に顔は載っていなかった。その代わり、筋肉のついた足が乗っている。

『ロードバイクで誰よりも早く届けます!』と一言。

 評価もやたら高いから頼んだのに、せっかく頼んだマックも、もう冷めきっているに違いない。

 これはクレームのひとつでも言わなきゃ、怒りが収まらん!

 俺は携帯を握りしめて、配達員が来るのをじっと待った。



 注文してからちょうど一時間後、俺の家のピンポンが鳴った。
 インターフォンを確認する。帽子を被った若い男が立っていた。顔はよく見えないが、肌が浅黒く日焼けしているのがわかった。

「ウーバーです」

 遅れたことへの謝罪もなく、それだけ言う。
 俺はとりあえずエントランスのカギをあけ、玄関まで来たらなんて叱ろうかを考えていた。

(この距離で、こんなに時間がかかるなんておかしいだろ!これ、どう責任とってくれるんだ!)

 よし、こんな感じで怒ろう。
 普段、怒り慣れていない分、やけに緊張していた。

 チャイムがなる。ウーバーの配達員が玄関前に来た。ドアを開ける。

「お待たせしましたー、こちらですね」

 配達員は汗をかきながらも爽やかな顔で、マックの袋を渡す。
 胸板も厚く、腕も太いが、顔は端正に整っていて、涼し気な目をしている。俺よりもモテそうなやつ。
 そんな奴に気おくれしながらも、俺はマックの袋を受け取らず、声を絞り出した。

「これ、冷めてるし。おそ…遅すぎるよ。責任とって…」
「すみません! お詫びします!」

 配達員は頭を下げるかと思いきや、俺の頭を片手でぐっと固定し、俺の唇に唇を重ねた。驚いている間に、ぬめりとした感触が唇を割って中に入ってくる。
 
 突然の快楽に理解が追い付かず、頭がぼうっとしていた。
 その間にも相手の舌が容赦なく押し入り、俺の舌に絡みついてくる。
 
 ダメだ、ダメだ、ダメだ。
 
 ようやく俺の中の危険信号がなり、身体を両手で引きはがす。

「なっ、え、何してるんですか」
「何って、お詫びです」
「え」
「俺、キスがうまいって言われるので」

 そうしてまたキスをするために顔を近づけてくる。
 俺は目を瞑って、その時を待った。
 
「あれ、期待してる?」

 そう耳元で言われた。
 どさりと、マックの袋が床に落ちる音がした。配達員は空いた右手を俺の股間に添わせる。

「ここ、勃起してますよ」
「え」

 言われてみると、俺の股間はズボンの中ではっきりと屹立していた。
 俺はノンケだ。だから、これは何かの間違い……。

「キス、してほしい?」

 そう耳元で問われながら、俺の陰部の先端を指でなぞられる。
 俺の中の頭にはもう、さっきの快楽を求める声しかなくなっていく。
 またキスしてほしい。またキスしてほしい。またキスしてほしい。

「高評価して、チップつけてくれるなら、またキスしてやってもいいけど?」

 その言葉に二つ返事で頷いた。

「はい! お、お願いします!」

 怒りはどこへやら、俺はいつしか、この男の従順な下僕に成り下がっていた。

 ゆっくりととろけるようなキスに脳内が快楽で満たされる。 
 と同時に、配達員の男は俺のイチモツを服の上から扱いた。

「んっ、んっっ」

 唇をふさがれているので、声も絶え絶えになって、玄関に響く。
 息も荒くなって、キスもどんどん激しくなっていく。
 唇を数センチ話して、その男は言った。

「ほら、いけよ」

 そうして、熱いキスとともに股間を揉みしだかれ、俺はズボンのなかで果てた。
 下腹部に不快感を残したまま、靄がかった頭で、配達員の顔を朧気に見つめる。

「じゃあ、またよろしくな」

 さっきまでの行為がなかったように、爽やかな笑顔でそう返された。

「は、はい!また、お願いします!!」

 俺は低調に頭を下げた。そして、帰り際までその背中を見つめた。

 床にどさりとおかれたマックは当たり前のごとく冷めていたが、皿に移してチンすれば、美味しく食べられる。

『最高の配達員でした』

 チップを最高額にして、星5つの評価を付けた。
 とりあえず、パンツを着替えよう。
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