1 / 1
ウーバー配達員
しおりを挟む遅い。
ウーバーを頼んでから、もう40分は経とうとしているが、まだ来ない。配達員の位置を確認すると、さっきから俺の家の周りをぐるぐると周回している。
一体、どんな方向音痴が配達員をやってるんだろう。
配達員のトップ画像に顔は載っていなかった。その代わり、筋肉のついた足が乗っている。
『ロードバイクで誰よりも早く届けます!』と一言。
評価もやたら高いから頼んだのに、せっかく頼んだマックも、もう冷めきっているに違いない。
これはクレームのひとつでも言わなきゃ、怒りが収まらん!
俺は携帯を握りしめて、配達員が来るのをじっと待った。
注文してからちょうど一時間後、俺の家のピンポンが鳴った。
インターフォンを確認する。帽子を被った若い男が立っていた。顔はよく見えないが、肌が浅黒く日焼けしているのがわかった。
「ウーバーです」
遅れたことへの謝罪もなく、それだけ言う。
俺はとりあえずエントランスのカギをあけ、玄関まで来たらなんて叱ろうかを考えていた。
(この距離で、こんなに時間がかかるなんておかしいだろ!これ、どう責任とってくれるんだ!)
よし、こんな感じで怒ろう。
普段、怒り慣れていない分、やけに緊張していた。
チャイムがなる。ウーバーの配達員が玄関前に来た。ドアを開ける。
「お待たせしましたー、こちらですね」
配達員は汗をかきながらも爽やかな顔で、マックの袋を渡す。
胸板も厚く、腕も太いが、顔は端正に整っていて、涼し気な目をしている。俺よりもモテそうなやつ。
そんな奴に気おくれしながらも、俺はマックの袋を受け取らず、声を絞り出した。
「これ、冷めてるし。おそ…遅すぎるよ。責任とって…」
「すみません! お詫びします!」
配達員は頭を下げるかと思いきや、俺の頭を片手でぐっと固定し、俺の唇に唇を重ねた。驚いている間に、ぬめりとした感触が唇を割って中に入ってくる。
突然の快楽に理解が追い付かず、頭がぼうっとしていた。
その間にも相手の舌が容赦なく押し入り、俺の舌に絡みついてくる。
ダメだ、ダメだ、ダメだ。
ようやく俺の中の危険信号がなり、身体を両手で引きはがす。
「なっ、え、何してるんですか」
「何って、お詫びです」
「え」
「俺、キスがうまいって言われるので」
そうしてまたキスをするために顔を近づけてくる。
俺は目を瞑って、その時を待った。
「あれ、期待してる?」
そう耳元で言われた。
どさりと、マックの袋が床に落ちる音がした。配達員は空いた右手を俺の股間に添わせる。
「ここ、勃起してますよ」
「え」
言われてみると、俺の股間はズボンの中ではっきりと屹立していた。
俺はノンケだ。だから、これは何かの間違い……。
「キス、してほしい?」
そう耳元で問われながら、俺の陰部の先端を指でなぞられる。
俺の中の頭にはもう、さっきの快楽を求める声しかなくなっていく。
またキスしてほしい。またキスしてほしい。またキスしてほしい。
「高評価して、チップつけてくれるなら、またキスしてやってもいいけど?」
その言葉に二つ返事で頷いた。
「はい! お、お願いします!」
怒りはどこへやら、俺はいつしか、この男の従順な下僕に成り下がっていた。
ゆっくりととろけるようなキスに脳内が快楽で満たされる。
と同時に、配達員の男は俺のイチモツを服の上から扱いた。
「んっ、んっっ」
唇をふさがれているので、声も絶え絶えになって、玄関に響く。
息も荒くなって、キスもどんどん激しくなっていく。
唇を数センチ話して、その男は言った。
「ほら、いけよ」
そうして、熱いキスとともに股間を揉みしだかれ、俺はズボンのなかで果てた。
下腹部に不快感を残したまま、靄がかった頭で、配達員の顔を朧気に見つめる。
「じゃあ、またよろしくな」
さっきまでの行為がなかったように、爽やかな笑顔でそう返された。
「は、はい!また、お願いします!!」
俺は低調に頭を下げた。そして、帰り際までその背中を見つめた。
床にどさりとおかれたマックは当たり前のごとく冷めていたが、皿に移してチンすれば、美味しく食べられる。
『最高の配達員でした』
チップを最高額にして、星5つの評価を付けた。
とりあえず、パンツを着替えよう。
2
この作品の感想を投稿する
あなたにおすすめの小説
久々に幼なじみの家に遊びに行ったら、寝ている間に…
しゅうじつ
BL
俺の隣の家に住んでいる有沢は幼なじみだ。
高校に入ってからは、学校で話したり遊んだりするくらいの仲だったが、今日数人の友達と彼の家に遊びに行くことになった。
数年ぶりの幼なじみの家を懐かしんでいる中、いつの間にか友人たちは帰っており、幼なじみと2人きりに。
そこで俺は彼の部屋であるものを見つけてしまい、部屋に来た有沢に咄嗟に寝たフリをするが…
ユーザ登録のメリット
- 毎日¥0対象作品が毎日1話無料!
- お気に入り登録で最新話を見逃さない!
- しおり機能で小説の続きが読みやすい!
1~3分で完了!
無料でユーザ登録する
すでにユーザの方はログイン
閉じる