くゆる煙のその先に

山橋雪

文字の大きさ
7 / 7

エピローグ

しおりを挟む
 

 くゆる煙のその先に。
 見えた景色は鮮やかで。
 たしかにはっきりと見えたのだ。
 年中靄がかかったような景色から、くっきりとはっきりと鮮やかに艶やかに。
 輝かしい未来と思しき夢さえも見えたのだ。


 そして見たくもなかった現実もまた、払った煙のその先に見えてしまったのだ。
 貴方と、そして貴方にとても良くお似合いの人が一緒に歩く姿を。

 こんなことならいっそ何も見えなくて良かったのかもしれない。
 煙に巻かれて五里霧中、暗中模索で良かったのだ。
 強すぎる刺激に当てられるくらいなら、靄のかかったこの場所で、白い煙の毒に麻痺しているくらいで良かったのだ。

 しかし不思議と後悔はない。
 後悔するということは、貴方との出会いすら否定するということ。
 貴方との出合いに後悔はない。現実に打ちひしがれた今だって。
 ただ一瞬見えかけた夢が、ただの夢であったことが確かめられただけ。
 それを人は絶望とも言うのかもしれないが、貴方から貰えるものならばたとえ絶望であっても愛おしい。
 もはや多くは望まないのだ。
 くゆる煙のその先は見えなくて良い。
 くゆる煙のその先に抱く希望などもはや微塵もない。
 私はここで貴方と顔を合わせられたらもうそれで良い。
 飄々とした貴方に。
 煙のように掴みどころのない貴方に。
 灰になるまで焦がれるだけで丁度良い。

しおりを挟む
感想 0

この作品の感想を投稿する

あなたにおすすめの小説

夫婦交換

山田森湖
恋愛
好奇心から始まった一週間の“夫婦交換”。そこで出会った新鮮なときめき

いちばん好きな人…

麻実
恋愛
夫の裏切りを知った妻は 自分もまた・・・。

雪の日に

藤谷 郁
恋愛
私には許嫁がいる。 親同士の約束で、生まれる前から決まっていた結婚相手。 大学卒業を控えた冬。 私は彼に会うため、雪の金沢へと旅立つ―― ※作品の初出は2014年(平成26年)。鉄道・駅などの描写は当時のものです。

離婚した妻の旅先

tartan321
恋愛
タイトル通りです。

正妻の座を奪い取った公爵令嬢

岡暁舟
恋愛
妹のソフィアは姉から婚約者を奪うことに成功した。もう一つのサイドストーリー。

つかまえた 〜ヤンデレからは逃げられない〜

りん
恋愛
狩谷和兎には、三年前に別れた恋人がいる。

不倫の味

麻実
恋愛
夫に裏切られた妻。彼女は家族を大事にしていて見失っていたものに気付く・・・。

友達婚~5年もあいつに片想い~

日下奈緒
恋愛
求人サイトの作成の仕事をしている梨衣は 同僚の大樹に5年も片想いしている 5年前にした 「お互い30歳になっても独身だったら結婚するか」 梨衣は今30歳 その約束を大樹は覚えているのか

処理中です...