悪役の僕 何故か愛される

いもち

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プロローグ

第一話 僕は悪役

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第一話 僕は悪役

「僕、悪役のセインだ。」
呟いた声はか細く、高かった。
激痛で飛び起きた僕の目の前には、見知っているはずだが、どこか見慣れない天井。

僕はセイン。セイン・ゴースティ。今は六歳。そんなことはわかっている。けれど、それがわからない僕がいた。つまり、僕の身体にはもう一つの心があることに、今気がついた。
名前は覚えていないが、僕はここではない世界の日本という国で、ずっと家にいた。
確か病気で、外に滅多に出られなかった。年齢の離れた姉が、よく僕の元に本やゲームを差し入れてくれていた。僕の最期はわからないけど、姉がなにか叫んでいたのが僕の覚えている最後だ。

姉の差し入れの中にあったゲームで、僕は悪役として登場する。
『恋と魔法と君と』それがこのゲームの名前。男性同士の恋愛模様を描いたもので、セイン・ゴースティは王子の婚約者であり、王子や攻略対象と仲良くしようとする主人公の邪魔をする悪役だ。王子と主人公が結ばれる結末で、僕は主人公に手をかけたことで処刑される。それ以外の攻略対象のルートでも、僕の末路は散々なものだった。

そして僕が王子の婚約者になるきっかけが、僕のこの痛みの原因。今回の魔法事故だ。
王族主催のお茶会で、体調の悪かった王子が無理をしてお茶会に出てしまい、魔力暴走を起こしてしまう。そして運悪く、王子が暴走させた火魔法の先に僕がいたんだ。
結果として僕は火傷や後遺症を負ってしまう。さらに黒かった髪も、魔法と治療の影響なのか、真っ白になってしまった。

伯爵家の長男に醜い火傷痕が残ってしまったことから、僕の嫁ぎ先も、婿をとることも難しくなってしまった。その罪悪感からか、王家から、僕と王子との婚約をという提案がなされた。
以前の僕であったら、小躍りして喜んだだろう。実は僕は伯爵家の長男だが、彼らとの血の繋がりはない。
僕は教会で世話をされていた孤児だった。生まれた時から親に捨てられ、同じような境遇の子供達と共に必死に生きてきた。教会で面倒を見てもらっていたといっても、金はなく、穴だらけの貧乏教会で、毎日ひもじかった。

そんな日々が様変わりしたのは、ゴースティ伯爵が訪ねてきた時だ。初めて柔らかい肉を食べた。ふかふかで暖かいパンを食べられた。新鮮な生野菜が甘いことを知った。
みんなで奪い合いながら食べていたら、僕だけシスターに呼ばれた。
教会の応接室に行くと、伯爵がいて、いつのまにか僕は伯爵家の長男になり、上等な服を着させられていた。
伯爵家の人間になるのだから教会にはいられないとシスターに言われ、連れ出されるのがわかった時に何故か無性に逃げたくなった。あの時はどうしてそう思ったのかわからなかったけれど、今なら理解できる。僕が、未来でどうなるか知っていたからだろう。でも、できなかった。伯爵家は、僕を養子にする上に、教会に毎月寄付をしてくれると約束していた。僕だけが伯爵家で裕福な暮らしをすることの罪悪感が勝ち、結局僕は引き取られることになった。
それが五歳の頃。

婚約なんて、今の僕にとっては嬉しくもなんともない。だって、概ね死ぬ運命にあるのだから。
できれば婚約も拒否したい。でも、僕からすることはできない。王族からの申し出を断るなんて不敬罪で処されてしまう。なんとか王子の方から拒否してもらえないだろうか。

「死にたくないなあ。嫌だなあ。」
今後のことを考えて絶望していると、涙が出てきてしまう。
服の袖で涙を拭こうとすると、ハンカチが手渡される。
「…ありがとう。君は変わらず優しいね。」
この部屋には僕以外に人はいない。人は。
この子は、生まれた時から僕の世話を焼いてくれる僕の魔法。
僕の意思とは関係なく動き、僕の望むことをしてくれる。影の形をもって、僕の手足となる。だから、今は涙を拭くためにハンカチを取ってきてくれた。

「セイン、起きているのか。」
扉の外から、ゴースティ伯爵の声がする。
急いで魔法に僕の影に隠れるように命令する。
僕の魔法は、人に見られることを極端に嫌う。その理由はわからないけど、今後を生きるのに、必要以上のものを見せるのも悪手だと考えたので、このまま隠していよう。
影に完全に隠れたことを確認して、返事をする。

さあ、僕の生存のための第一歩を始めよう。
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