人類アンチ種族神

緑茶

文字の大きさ
27 / 46
第一章.はじまり

人類アンチ種族神Ⅴ《混乱と天才①》

しおりを挟む
これはフィクションであり、実在の物とは一切関係ありません。
-----------------

自衛隊のR連隊が私有シェルターの救出作戦を行い、救出には至らず新種のUFB「王」と「女王」を発見、撃退したあの日から3日が経過した。

国会では大仲防衛大臣に質疑が集中した。

内容は主に3つ

1.R連隊の帰還率約30%(損耗約70%)に対する責任論
2.私有シェルターへの次なる施策、計画案
3.同盟国から再三要求されているUFBの情報開示対応

まず、1.責任論については大半の議員はポーズに過ぎず、議員として追及すべき姿勢は見せておきながら内心では想定外の新種との遭遇や後任問題を考慮すると大仲続投を期待していた。
そのため、追及も薄氷を踏むような踏み込んだものはなく、継続議論という名前の「先送り」「実質不問」となった。
 
つぎに、2.私有シェルターの件。多くの議員は人命救助を訴えてはいるものの、内心は「切り捨て」の方針だった。重要視していた日本有数の実力者、大荻山おおぎやま 剛三郎ごうざぶろう氏の生死が不明であること
そして、連絡が継続していた私有シェルターの数も減りつつあり、いくつかの私有シェルター内では内部的な暴動が発生し暴力的な人物のみが生き残っているシェルターもあった。
もはや貴重な自衛隊を再度投入し国民全体を危機に晒すべきではないという感情だった。

また、この件にこだわりを持っていた帝都復権党の舞岡氏は、前回の作戦情報のリーク犯として疑いをかけられており、後ろ盾の大荻山氏の生死不明も相まって強くは主張を出せずにいた。


問題は3である。

同盟国のタラメア合衆国がUFBおよび、王、女王の情報開示を迫っていた。表向きは軍事支援となっているが、UFBが出現したあの日、真っ先に東京から脱出したのがタラメア合衆国の軍隊である。
R連隊への参加打診もあったが、彼らの目的は自衛隊の最新兵器の性能にあることは明白だった。彼らはUFBというモルモットを使って、自衛隊の戦闘能力を知りたいのである。

それには理由があり、ロングレンジ・レールガンも含め、この国が所有する最新鋭機の機密情報は強固に守られていた。平和主義という理念を前面に出すことで兵器を開発・製造・量産していることすら公にはしておらず
配備状況も噂程度にとどめられていた。ところがこの有事にあたって、実践に投入されてきた。これは同盟国からみても予想外の脅威で、UFBは対岸の火事で済むが自衛隊の最新兵器は同盟国としての軍事バランスを揺るがしかねない身に迫る危機なのである。

UFBは死亡すれば霧になって消えてしまう。王と女王は逃がした。となると、UFBの情報開示は最新兵器の戦闘データ開示ということになる。同盟国は軍事的解析能力に優れた大国である。その国に戦闘データを送ることなど出来ようもない。
国会はメディアを追い出して、このテーマについて議論を交わしていたが、紛糾を極めた。

◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆

政治家が議論に時間を溶かしているあいだに、自衛隊では戦闘データの解析作業が進んでいた。

解析には変人研究者の篠原しのはら涼音すずねが指揮を執り、スーパーコンピューターを超えるという天才的頭脳を存分に発揮していた。

研究室にR連隊の隊長、足立あだち昭介しょうすけ仲原なかばらかおり三佐が進捗を確認するために入ってきた。

涼音は足立を見つけると足早に駆け寄った。

「足立隊長!涼音ですー!」

研究室では鉄の仮面とよばれる無表情の篠原だが、足立には表情豊かに笑顔で声をかける。

「篠原さん、解析はどうですか?」

すると待ってましたとばかりに、研究室の卓上モニター3体のUFBを映し出した。

そして嬉しそうに解説を始める。

「まずはこれ、これはぁ今まで私たちがぁ戦ってきた。ふつうの子」

次に中央の筋肉質の個体を差す

「これがぁ、王?でもぉたぶん王じゃないですねぇ。特攻隊長の子ですぅ」

そして女性の個体を差す

「この子はぁ、たぶんサーチって名前ですぅ。周囲の物質を集約硬化させて白い盾をつくれますぅ。みんなは女王って呼びますが、これはたぶん門番?みたいな守備型の子ですぅ」

足立は驚きが隠せなかった。解析と言えば速度や筋力といったスペックを差す。だが篠原はスペックではなく組織のポジション、特徴、名前などを説明したからだ。

「あの、篠原さん?」

「涼音でいいですぅ」

「じゃあ涼音さん」

黙っていた仲原三佐が割って入る。

「隊長!男性が女性の呼称に名前を使うのは規律が乱れます。篠原とお呼びください」

この言葉を聞いて睨みつける篠原を完全に無視する仲原。

険悪な空気を読んだ足立が話を戻す。

「それで、なぜ王ではないと?あと名前、サーチとは?いや、それ以前に頼んでいたUFBの性能解析はどうなってる?」

「はぁい!これはですね、想定される筋力などはこちらのボタンを押すと表示されまぁす」

そういうと、卓上スクリーンをタッチする。

「こーんな感じでぇ、脚力とかもぉ瞬発力とかぁ持久力とかぁ、稼働性能とかぁ、耐久力とかぁ跳躍力とかぁ、多面的に分析しましたぁー」

これがこの篠原涼音が変人研究者と呼ばれる所以である。普通の人間が想像する数倍斜め上まで詳細に研究してしまう執着力。そして僅かなデータから細かい情報を分析してしまう思考力、20代でUFB研究室の室長に抜擢されただけはある。
余りに細かい数値の羅列に仲原が少し後ずさりする。一方足立は前のめりになっていく。

「すごいじゃないか!UFBの能力が丸裸だ!!想定飛行限界高度4000mか・・・意外と低いな。ふむふむ。」

その様子を見た仲原がすぐに自身も前のめりになると問う

「これらの情報は後でゆっくりみますが、名前とか王ではないといった情報の根拠は?」

仲原の質問に篠原は無表情に答える。

「映像を見れば分かりますよね普通。まず、状況。我々が殲滅したのは池袋付近のUFBのみですよ?それで王様が激怒して城から出てくるのは不自然です。だって池袋の周囲にはまだ何万も兵がいるんですよ」

「それに、この子、王という割には戦闘力も半端。統率力も半端。カリスマ性もないですよ。群れの長は圧倒的な力とかまとめる能力が必要なんですよ。この子はその器ではないです」

「最後は味方のサーチちゃんに助けられてますし、総合的に見れば精々戦闘隊長級。もしくは特攻隊長みたいなポジですね」

足立が反応する

「そうだ。サーチ。なぜ、この女がサーチという名前だと分かった?」

篠原は、得意げに答え始める

「はぁい。それはぁ、この映像ですぅ。ここ、ボロボロになった特攻隊長君が、この女の子の名を呼んでいます。きっと予想外だったのだと思います。例えるならぁ、駅前で終電逃して絶望してたら、同期の異性にばったり出会ったみたいなぁ様子ですねー」

「で、口元を拡大してぇ。コマ送りにするとぉ、ここが「さ」ですね。で、このまま口の形がしばらく変わらないので、「さー」と伸ばしていると推測できますぅ。次のコマが「ち」と言って口を閉じてます。つなげると、この女の子はサーチですね!」

「ついでにぃ、この口の使い方からしてぇ、この子達は日本語を使ってますねぇー」

足立は驚きに声も出なかった。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

学園長からのお話です

ラララキヲ
ファンタジー
 学園長の声が学園に響く。 『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』  昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。  学園長の話はまだまだ続く…… ◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない) ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

ざまぁされるための努力とかしたくない

こうやさい
ファンタジー
 ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。  けどなんか環境違いすぎるんだけど?  例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。  作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。  恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。  中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。  ……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。

悪役令嬢の騎士

コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。 異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。 少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。 そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。 少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

悪役令嬢は手加減無しに復讐する

田舎の沼
恋愛
公爵令嬢イザベラ・フォックストーンは、王太子アレクサンドルの婚約者として完璧な人生を送っていたはずだった。しかし、華やかな誕生日パーティーで突然の婚約破棄を宣告される。 理由は、聖女の力を持つ男爵令嬢エマ・リンドンへの愛。イザベラは「嫉妬深く陰険な悪役令嬢」として糾弾され、名誉を失う。 婚約破棄をされたことで彼女の心の中で何かが弾けた。彼女の心に燃え上がるのは、容赦のない復讐の炎。フォックストーン家の膨大なネットワークと経済力を武器に、裏切り者たちを次々と追い詰めていく。アレクサンドルとエマの秘密を暴き、貴族社会を揺るがす陰謀を巡らせ、手加減なしの報復を繰り広げる。

処理中です...