人類アンチ種族神

緑茶

文字の大きさ
13 / 46
第一章.はじまり

人類アンチ種族神Ⅴ《対決⑤ 代償と推論》

しおりを挟む
※この作品はフィクションです。実在の人物・団体・事件とは一切関係がありません。
---------------

神災じんさいから30日が経過した。

埼玉側シェルター内の救出部隊待機室。

部下を15人も失った隊長の足立あだち 昭介しょうすけは、あの日のガーゴイルとの戦いの映像を寝る間もなく凝視していた。
そこへ副隊長の仲原なかばらかおり三佐がやってきた。

仲原は純粋に驚いた。足立の一人反省会は24時間の不眠のはずなのに、いまだ続いていた。


「隊長。まだ見てるんですか?交戦時間はたったの180秒ですよ。そんなに見直しても死んだ隊員は返ってきませんよ」

「わかってる。だが15人も失ったんだ。この180秒からできる限りヤツらの情報を入手するんだ」

目が座って、クマができた足立の表情。だが目の奥には怒りにも似た何か執念のようなものが輝いていた。

「しかし、180秒の映像ではほとんど何も分からないと分析チームも言ってますが……」

足立は仲原の方を振り返るとモニターを指さした。
足立の分析はこうだ。

1.ガーゴイルの敵認識の能力

 「では三佐。ガーゴイルは対岸いた。我々の発砲音に気が付いて上空に上がって視認したあと、一直線に襲っている。これをどう見る?」

 「音に反応して、飛び上がり、即座に我々を認識する視力を持っている。つまり、音が聞こえる。離陸能力が高い。視力もよい。こんなところでしょうか?」

 足立はため息をつくと、慣れた手つきでガーゴイルの映像を拡大した。

 「まず、敵は未知の生物だ。そこから弱点を探さねばならない。このシーンで分かるやつらの弱点は、目視しないと敵の位置を把握できないということだ。
  当たり前のようだが、コウモリのように視覚以外の空間把握器官がないことがわかる」

 ⇒【つまり、ヤツラも目に頼っている】

2.ガーゴイルの飛行性能

 「それだけではない。飛び上がった時の高度にも疑問がある。荒川の周囲一帯を見渡すために上昇したとしても高度が高すぎる。高度を上げすぎれば我々からも発見しやすく
  我々との直線距離も伸びてしまう。なのになぜ、ここまで上昇した?」

 「知性がないからですか?」

 「かもしれん、三佐はタカを知っているか?タカという鳥は、高速で獲物を狩るイメージがあるが、じつは水平飛行は80km/hくらいなんだ。だが、急降下飛行になると
  300km/hを超える。奴らは並行飛行が苦手で急降下したかったというのが私の仮説だ」

 「確かに……こうしてみると上昇時の映像がなく、憶測にはなりますが我々を視認してから急降下しているように見えます。この速度が異常に早く我々の陣形を崩しました」

 ⇒【水平飛行は苦手。急降下することで速度を得る】

3.ガーゴイルの陣形

 「このシーンではまだわかることがあるぞ」

 「まだあるんですか?」

 「ああ、これは偵察の情報との合わせ技なんだが、ヤツラは荒川の対岸付近にいた。そして作戦前の偵察情報をもとにした観測地点の地図がこれだ」

 「!!見事に荒川を挟んで埼玉側に1匹もいませんね」

 「そうだ。人間の軍隊なら渡河とかの問題があるだろうが、飛行できるヤツらがなぜ荒川を超えない?」

 「縄張りですかね?」

 「かもしれん。だが我々を発見したら躊躇なく超えてきた。これは縄張りというより防衛線。つまり指揮系統が存在すると見て取れないか?」

 ⇒【荒川を境界線とした防衛陣形】

4.ガーゴイルの知的レベル

 「そうなると、ヤツラの知性は相当高いことになりますよ?」
 
 「そうだ、でだ、次に我々が強襲されているシーンだ。2体のガーゴイルに蹂躙された形だが、二体の位置取りと向きを見て何か感じないか?」

 「……これは、互いに背中を守りながら機動的に、連携して戦っている???」

 「ああ、訓練されたものではないが、味方を認識し背後を互いにカバーしている。少なくとも霊長類クラス。もしくはライオンのような高度な集団戦闘技術が必要だ。」

 「加えて、この戦闘でヤツラは一度も炎を吐いていない。これも同士討ちを警戒したとみれば妥当な行動だと思わないか?」

 「そうですね。私も格闘技の経験がありますが、味方との協力戦闘は瞬発的な判断能力や相手の行動予測などの知性が問われます」

 ⇒【霊長類クラスの知性。もしくは集団戦に長けた戦闘技術を持っている】

5.導き出した答え

 「だとすれば、どうだ。指揮官、もしくは群れのリーダーがどこかにいて、これを叩けばーー」

 「そうだ。統制を失い瓦解する可能性もある!」

 仲原は興奮した面持ちで、立ち上がる。

 「すぐにこの情報を大仲大臣に!」

 だが、足立はそれを静止した。

 「まだだ、まだ情報が得られるはずだ。もっと決定的な何かを探すんだ!」

二人の分析は明け方まで続くのであった。


◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  ◆◆◆  

その頃、帝都復権党本部。

極秘に引かれた光ファイバーを使用し私設のシェルターと党本部で話し合いが行われた。

帝都復権党からは舞岡氏。シェルター側の代表は、日本有数の実力者、大荻山おおぎやま 剛三郎ごうざぶろうである。

大荻山は、淡々と話を進めた。

「昨日の救出作戦。これはどういうことですか?池袋に最短でくるルートと聞いていますが、荒川も渡れず撤退したそうですが?」

大荻山は帝都復権党の資金源として、大きな影響力があり、舞岡の議員バッジを取り上げることなど簡単にできる。
それゆえに、舞岡は対応に苦しんでいる。

「そのことですが、防衛省の大仲議員が一般の避難民の安全を優先するので、救出部隊の規模が小さく、この件は本日の国会で追及いたします」

「一般人ねぇ。その一般人の生活を支えているのは誰ですか?経済を回して衣食住を提供しているのは誰ですか?守るべき対象を間違えていると思わないかね?」

「そうなんです!あの、大仲議員は大衆ウケばかりで、救うべき人々を間違っている。私は何度も国会で提言しましたが、全く聞く耳を持たず。ですから
 救出作戦の失敗も大仲議員の失策でして、私は帝都復権党として大荻山さんを一番に助けられるように計画を作っているのですが、大仲議員が邪魔をするので
 進まないのです!」

大荻山はやや低いトーンで舞岡に迫る。

「1日に3億だ。私が動かしていたカネだ。このカネが動かせない状況を賢い君ならわかるだろう。舞岡君。きみが最優先にすべきことは何かね?」

怯えた様子の舞岡は苦し紛れに答えを返す。

「ですが、自衛隊は防衛大臣の管轄です。せめて防衛大臣が大仲でなければ……!!!!」

数秒の沈黙が重鎮の思考を感じさせる。

「大仲か。ふむ嫌いではなかったが」
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

いまさら謝罪など

あかね
ファンタジー
殿下。謝罪したところでもう遅いのです。

三十年後に届いた白い手紙

RyuChoukan
ファンタジー
三十年前、帝国は一人の少年を裏切り者として処刑した。 彼は最後まで、何も語らなかった。 その罪の真相を知る者は、ただ一人の女性だけだった。 戴冠舞踏会の夜。 公爵令嬢は、一通の白い手紙を手に、皇帝の前に立つ。 それは復讐でも、告発でもない。 三十年間、辺境の郵便局で待ち続けられていた、 「渡されなかった約束」のための手紙だった。 沈黙のまま命を捨てた男と、 三十年、ただ待ち続けた女。 そして、すべてを知った上で扉を開く、次の世代。 これは、 遅れて届いた手紙が、 人生と運命を静かに書き換えていく物語。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

悪役令嬢の慟哭

浜柔
ファンタジー
 前世の記憶を取り戻した侯爵令嬢エカテリーナ・ハイデルフトは自分の住む世界が乙女ゲームそっくりの世界であり、自らはそのゲームで悪役の位置づけになっている事に気付くが、時既に遅く、死の運命には逆らえなかった。  だが、死して尚彷徨うエカテリーナの復讐はこれから始まる。 ※ここまでのあらすじは序章の内容に当たります。 ※乙女ゲームのバッドエンド後の話になりますので、ゲーム内容については殆ど作中に出てきません。 「悪役令嬢の追憶」及び「悪役令嬢の徘徊」を若干の手直しをして統合しています。 「追憶」「徘徊」「慟哭」はそれぞれ雰囲気が異なります。

学園長からのお話です

ラララキヲ
ファンタジー
 学園長の声が学園に響く。 『昨日、平民の女生徒の食べていたお菓子を高位貴族の令息5人が取り囲んで奪うという事がありました』  昨日ピンク髪の女生徒からクッキーを貰った自覚のある王太子とその側近4人は項垂れながらその声を聴いていた。  学園長の話はまだまだ続く…… ◇テンプレ乙女ゲームになりそうな登場人物(しかし出てこない) ◇ふんわり世界観。ゆるふわ設定。 ◇なろうにも上げています。

ざまぁされるための努力とかしたくない

こうやさい
ファンタジー
 ある日あたしは自分が乙女ゲームの悪役令嬢に転生している事に気付いた。  けどなんか環境違いすぎるんだけど?  例のごとく深く考えないで下さい。ゲーム転生系で前世の記憶が戻った理由自体が強制力とかってあんまなくね? って思いつきから書いただけなので。けど知らないだけであるんだろうな。  作中で「身近な物で代用できますよってその身近がすでにないじゃん的な~」とありますが『俺の知識チートが始まらない』の方が書いたのは後です。これから連想して書きました。  ただいま諸事情で出すべきか否か微妙なので棚上げしてたのとか自サイトの方に上げるべきかどうか悩んでたのとか大昔のとかを放出中です。見直しもあまり出来ないのでいつも以上に誤字脱字等も多いです。ご了承下さい。  恐らく後で消す私信。電話機は通販なのでまだ来てないけどAndroidのBlackBerry買いました、中古の。  中古でもノーパソ買えるだけの値段するやんと思っただろうけど、ノーパソの場合は妥協しての機種だけど、BlackBerryは使ってみたかった機種なので(後で「こんなの使えない」とぶん投げる可能性はあるにしろ)。それに電話機は壊れなくても後二年も経たないうちに強制的に買い換え決まってたので、最低限の覚悟はしてたわけで……もうちょっと壊れるのが遅かったらそれに手をつけてた可能性はあるけど。それにタブレットの調子も最近悪いのでガラケー買ってそっちも別に買い換える可能性を考えると、妥協ノーパソより有意義かなと。妥協して惰性で使い続けるの苦痛だからね。  ……ちなみにパソの調子ですが……なんか無意識に「もう嫌だ」とエンドレスでつぶやいてたらしいくらいの速度です。これだって10動くっていわれてるの買ってハードディスクとか取り替えてもらったりしたんだけどなぁ。

悪役令嬢の騎士

コムラサキ
ファンタジー
帝都の貧しい家庭に育った少年は、ある日を境に前世の記憶を取り戻す。 異世界に転生したが、戦争に巻き込まれて悲惨な最期を迎えてしまうようだ。 少年は前世の知識と、あたえられた特殊能力を使って生き延びようとする。 そのためには、まず〈悪役令嬢〉を救う必要がある。 少年は彼女の騎士になるため、この世界で生きていくことを決意する。

傷物転生令嬢マグダリーナと原初の魔法使いエステラの幻想譚-女神とスライムの光とともに- (旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異

天三津空らげ
ファンタジー
日本の田舎で平凡な会社員だった松田理奈は、不慮の事故で亡くなり10歳のマグダリーナに異世界転生した。転生先の子爵家は、どん底の貧乏。父は転生前の自分と同じ歳なのに仕事しない。二十五歳の青年におまるのお世話をされる最悪の日々。転生チートもないマグダリーナが、美しい魔法使いの少女に出会った時、失われた女神と幻の種族にふりまわされつつQOLが爆上がりすることになる―― ※他サイトでも掲載しています ※ちょいちょい手直ししていってます 2026.12.14 タイトル変更 旧タイトル:ナイナイづくしで始まった、傷物令嬢の異世界生活

処理中です...