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変な男の人たち

元ヤン その2

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柄の悪そうなツラして金のネックレスでもしていたら、最初からいかなかった。ところが細谷さんは上品な雰囲気の漂う優男。元ヤンだとは分からない風貌をしれっとしているとは、ある意味悪質である。

しかし、細谷さんは徐々に元ヤンの片鱗を見せてきた。

元ヤンは武勇伝が好きだ。

短期間の間にもかかわらず、あまりに元ヤンクオリティのエピソードが多いので、ここからは箇条書きにする。


・特攻服を着た写真とか過去の悪かった時の写真をとにかく見せまくる。
(私以外の人も何人もそれを見ている。俺は只者じゃねえぞ、とビビらせたいのか?)

・従業員数人と食事をしていた時、細谷さんは20代の時の話を突然始めた。昔、都内のディスコでブイブイいわせていたそうで、ディスコに行くと必ず女を引っかけて、ワンナイトを繰り返していたそう。そして細谷さんはグラスを傾けながら、すっかり自分に酔いしれた表情で言った。
「俺、200人くらいの女とやったね」
(きいてねーし!200人?猿か)

・レストランに配属されてきた30代の奥様を見て一言
「あの人の旦那、俺、昔パシリにしてたんだよね」
(だから何だ)

・元カノは20才でおっぱいが大きかった、とよく自慢した。しかも、この元カノの水着写真まで持って来た。
(ロリコン、デカパイ好き。アホの代名詞だ)

・レストランにやって来た細谷さんの友人に私を紹介する時、私の年齢を「25才くらい」と言い、「くらい」とうやむやにするような表現をしたうえ、一才サバを読んだ。
(私が26才だと知っていたはず。ロリコンなので、オーバー25才の女と付き合うのは恥だと感じていたようだ。32才の分際で)

・「俺は政治家になる、それで日本を一夫多妻制の国にする」と、明らかにウケを狙った発言。
(ヤンキーは下ネタが好きだ。しかもつまらない)

・烏賊(イカ)を「かいぞく」と読んだ。
(ろくに勉強してこなかったので、漢字が読めない)

・あの有名なラッセンの絵を知らず、「よくカラオケボックスに飾ってある海の絵」と発言。
(怒れ!ラッセン)

・地元の有名な反社の人と知り合いだ、と言う。
(これは定番だ)

・女が見てると調子こいて喧嘩をしたがる。
(これも定番だ)

・姉もヤンキー。
(その姉の旦那もヤンキー)



本来恥ずべきことを堂々と言い、ヤンチャな俺、イケてると勘違いしている32才。

これはもう二ヶ月だけのリゾート仕事、うやむやにして細谷さんから逃げてやろうと、はっきりと自分の中で結論を出した。
 

ところがある日
「仕事終わったらドライブしよう」
と、細谷さんに誘われた。

夜の海。
車の中でしばらくの沈黙。

すると突然、細谷さんは
「結婚しようよ」
と、言ったのだ。

え!

またこのパターン?早いよ!

付き合い出してまだ1ヶ月ちょっと。
しかも、それほど密に付き合ってもいない。
細谷さんの過去の話はいやと言うほど聞いた。
しかし、私の話はほとんどしていない。
細谷さんは私の趣味、嗜好、何も知らないはずだ。

ヤンキーというのはなぜやたら結婚したがるのだろう。

「・・ちょっとそれは早いんじゃないですか」
私がはっきりそう言うと
女はみんな結婚したい、という幻想を持っていたであろう細谷さんは明らかに狼狽の色を見せた。

すると
「待つよ」
と、しおらしく細谷さんは言った。

そのまま気まずい雰囲気でその場を離れたが

細谷さんは付き合って、と言うのも早かった。

よく素性を知らない相手に、付き合ってくれとか結婚してくれと言ってしまう。とにかく彼女が欲しい、結婚したい、が先に立ってしまうのだろう。年齢的に焦っている、というのが手に取るように分かってしまった。

元ヤンにとっては結婚こそがステイタス。

そう、彼は相手は誰でも良かったのだ。





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