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アフリカ編
第9話「ニンバの記憶ブレスレット」
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暑く、ジメジメした朝だった。
「はぁぁぁ……、何だってこんな朝っぱらから王宮にまで飯を貰いに行かなきゃいけないんだ……。」
ギニアがそう零すと、隣のシエラレオネが返した。
「地味に遠いからねぇ、でもこの過酷さもだいぶ覚えてきたというか、慣れてきたよ。」
「嬉しくない慣れだな。」
シエラレオネは左手にブレスレットを握っている。
彼はいつだって、そのブレスレットを肌身離さず持っていた。
飾られたほんの少しのダイヤモンドが日光を反射し、ギラギラ輝いていた。
と、そこでギニアビサウが唐突に口を開く。
「あ、そうだ。来週ヴェルデくん、こっちに遊びに来るから。よろしくね。」
「ヴェルデ、?……あぁ、カーボベルデの事か。にしても急だなぁ、全く。いつ決まったんだ?」
「昨日。」
「昨日!?」
「詳細はまたそのうち手紙送って決めようと思ってるんだ。」
「なるほど、だから今日はそんなに沢山の便箋を貰ってきたんだな。」
「そういうこと。」
「定期的に文通なんて、仲いいねぇ。」
「でしょう?」
家はもう少しだった。
暑さを会話で紛らわせるのでいっぱいで、周りなんて見えていなかった。
そのせいだったのかもしれない。
ギニアビサウが叫んでから、その存在に気づいたのだった。
「ギニア!トロッコが!トロッコが走ってくるよ!」
「え!?」
もう遅かった。
「うわぁぁーーッ……!!!」
「やめて!!盗らないで……!!!」
そんな声が聞こえた、気がした。
轢かれそうになるくらいの距離感で、土埃を巻き上げてその猛スピードのトロッコは去っていった。
「はぁ、はぁ、何だ……今のは……、」
怒涛だった。
左を見る。
シエラレオネが震える左手を呆然と眺めていた。
右を見る。
そこには、ギニアビサウがいる……はずだった。
いない。
ギニアビサウが、いなかったのだ。
「え……、ビサウ……!? ビサウが……!!」
車が走っていったであろう方向に目を向けるも、当たり前に車はもういない。
バオバブがポツンと生えていた。
「……と、とりあえず家に戻らないと!! レオン!帰るぞ!!」
返事のないシエラレオネの手を掴み、一目散に家の方向へと走る。
家はもう少しだった。
「リ、リベリア!!!」
勢い余ってドアを強く開ける。
「お、おう。おかえり。……どうした?そんな慌てて。」
調理のために、炭を焚べていたリベリアが落ち着いた声で問いかける。
「ビサウが……!!誘拐された……!!!」
「……誘拐??」
「物凄い速さのトロッコに!!連れ去られたんだ!!!誰が運転してたのかは分かんないけど、それはもう目には見えないスピードで……!!!」
「……ふぅん。」
「ほ、ほんとに怖かったんだ!!!ね、そうだよね!?レオン!!」
また返事がない。
「…………レオン???」
「……レオン?それは、誰ですか?」
「……へ?」
「そういえば、貴方たちは誰ですか?ここは、何処なのですか?」
「レオン……?もしかして……!!!」
もう一度彼の左手を確認する。
「ない……!!ブレスレットが、無くなってる!!」
ニンバの記憶ブレスレット。
シエラレオネにとっての形見であり、呪物である。
そういえば、聞こえた気がする。
『やめて!!盗らないで……!!!』
「記憶喪失……なの、か……??」
思わず、涙が零れる。
絶対に取り戻してみせる。
ビサウを、ブレスレットを、レオンの記憶を。
忘れさせない。必ず。
そう決意したギニアを見つめた後、左斜め上の遠くの方を仰ぎ眺めたリベリアは、不思議そうな、怪訝そうな、顔をしていた。
【獲得物】
・ニンバの記憶ブレスレット
(シエラレオネより剥奪)
・子供一人
「はぁぁぁ……、何だってこんな朝っぱらから王宮にまで飯を貰いに行かなきゃいけないんだ……。」
ギニアがそう零すと、隣のシエラレオネが返した。
「地味に遠いからねぇ、でもこの過酷さもだいぶ覚えてきたというか、慣れてきたよ。」
「嬉しくない慣れだな。」
シエラレオネは左手にブレスレットを握っている。
彼はいつだって、そのブレスレットを肌身離さず持っていた。
飾られたほんの少しのダイヤモンドが日光を反射し、ギラギラ輝いていた。
と、そこでギニアビサウが唐突に口を開く。
「あ、そうだ。来週ヴェルデくん、こっちに遊びに来るから。よろしくね。」
「ヴェルデ、?……あぁ、カーボベルデの事か。にしても急だなぁ、全く。いつ決まったんだ?」
「昨日。」
「昨日!?」
「詳細はまたそのうち手紙送って決めようと思ってるんだ。」
「なるほど、だから今日はそんなに沢山の便箋を貰ってきたんだな。」
「そういうこと。」
「定期的に文通なんて、仲いいねぇ。」
「でしょう?」
家はもう少しだった。
暑さを会話で紛らわせるのでいっぱいで、周りなんて見えていなかった。
そのせいだったのかもしれない。
ギニアビサウが叫んでから、その存在に気づいたのだった。
「ギニア!トロッコが!トロッコが走ってくるよ!」
「え!?」
もう遅かった。
「うわぁぁーーッ……!!!」
「やめて!!盗らないで……!!!」
そんな声が聞こえた、気がした。
轢かれそうになるくらいの距離感で、土埃を巻き上げてその猛スピードのトロッコは去っていった。
「はぁ、はぁ、何だ……今のは……、」
怒涛だった。
左を見る。
シエラレオネが震える左手を呆然と眺めていた。
右を見る。
そこには、ギニアビサウがいる……はずだった。
いない。
ギニアビサウが、いなかったのだ。
「え……、ビサウ……!? ビサウが……!!」
車が走っていったであろう方向に目を向けるも、当たり前に車はもういない。
バオバブがポツンと生えていた。
「……と、とりあえず家に戻らないと!! レオン!帰るぞ!!」
返事のないシエラレオネの手を掴み、一目散に家の方向へと走る。
家はもう少しだった。
「リ、リベリア!!!」
勢い余ってドアを強く開ける。
「お、おう。おかえり。……どうした?そんな慌てて。」
調理のために、炭を焚べていたリベリアが落ち着いた声で問いかける。
「ビサウが……!!誘拐された……!!!」
「……誘拐??」
「物凄い速さのトロッコに!!連れ去られたんだ!!!誰が運転してたのかは分かんないけど、それはもう目には見えないスピードで……!!!」
「……ふぅん。」
「ほ、ほんとに怖かったんだ!!!ね、そうだよね!?レオン!!」
また返事がない。
「…………レオン???」
「……レオン?それは、誰ですか?」
「……へ?」
「そういえば、貴方たちは誰ですか?ここは、何処なのですか?」
「レオン……?もしかして……!!!」
もう一度彼の左手を確認する。
「ない……!!ブレスレットが、無くなってる!!」
ニンバの記憶ブレスレット。
シエラレオネにとっての形見であり、呪物である。
そういえば、聞こえた気がする。
『やめて!!盗らないで……!!!』
「記憶喪失……なの、か……??」
思わず、涙が零れる。
絶対に取り戻してみせる。
ビサウを、ブレスレットを、レオンの記憶を。
忘れさせない。必ず。
そう決意したギニアを見つめた後、左斜め上の遠くの方を仰ぎ眺めたリベリアは、不思議そうな、怪訝そうな、顔をしていた。
【獲得物】
・ニンバの記憶ブレスレット
(シエラレオネより剥奪)
・子供一人
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