英雄王の末裔 ~青のラファール~

カザハナ

文字の大きさ
35 / 113
~港町エルト・デ・ルム~

学ぶべき事は学びましょう

 僕が叫んで後退り、硬直状態に陥ってると、兄さんが話し掛けきた。

「なっ、何?その反応は……。ちょっと、ラファールってば……」

(なんっって命知らずな……!)

「信っっじらんねぇ!!剣の腕も大した事ない癖に・・・・・・・・よくまぁこんな大陸出歩けたよなぁ!普通は死ぬよ?!たかが2ティファル(※2年)ぐらいのド素人・・・冒険者なんか!」

 ラルのド素人発言に傷付くリノアーノだが、ラルは更に言葉を続ける。

「っていうか、よく会わなかったねぇこの大陸特有の魔物と。まぁ魔物避けや護衛付き馬車に乗ってただろうから遭遇率も低かったんだろうけど……それでも会うよ、普通は!」

 えらく自信満々で言うから、最低5ティファル以上の冒険者かと思いきや、まさかの2ティファル!
 僕が兄さんに対して思った事を言ってると、セスが僕に聞いてきた。

「この兄さん、そんなに無謀な事してたのか?」
「無謀なんてもんじゃないよ。この兄さんよりランクが高い人でも絶対やんない。出来て僕以上。もしくは長年の経験を持つ熟年のプロ……でも一人でやるかどうか……」

 兄さんのやらかしたとんでもない行動に、僕は溜め息を吐く。

「そっ……そうは言うけど、ラファールってどのくらいの腕前だよ!?人の事を大した事ないだのド素人だの言うけどさ!」

(『僕以上か熟年のプロ』だって?自信家過ぎるよ!!)

「最初に会った時の戦闘なんか、即やられてたじゃないか!」

 威張ってる所悪いけど、あれ僕、被害が出ない為のわざとだし、あれをあんたが食らうと確実に死んでたよ?僕は古代種高位精霊人な上、精霊王の血を継ぐ赤の血族だから、攻撃魔法やその他諸々、半減もしくは無効になるから。
 そもそもあの戦闘自体、周りに被害を出さない為に加減調整してる状態だったから、実力の半分も出てないよ。護衛騎士の兄さん相手にディールとの戦闘を見せた時は、前方が平原だったから調整せずに出来る状態だったけど、村周辺は森だらけだからまんまでやると森林破壊になりかねないんだよね……。
 ってかこの大陸にいる魔物の実態も知らない癖に、よくこんな大陸選んだもんだよ。

「あれはラルが、村や私に被害が出ないよう庇っただけで、ラルが本気で暴れたら、あの辺一帯は森諸とも全壊してたわよ」

 さらっと恐ろしい事を口にするアーヤ。

「しないしない」
「やろうと思えば出来るでしょ?」

 真顔で聞くアーヤに答える僕。

「まぁ、やろうと思えば村の一つや二つは簡単だけど……」

 物騒な事を平然と認める僕に兄さんが後退りする。

「本気で言ってるの?!」

 僕は溜め息吐きつつ兄さんに聞いてみる。

「兄さんさ、兄さんでも知ってるポピュラーで強い魔物を言ってみなよ」
「ポピュラーで強い……?ええっと……ドラゴンとか?」

 まさかの選択。いや、兄さんにしては上出来か。

「いるからね、この大陸に。まぁドラゴンに関しては割りとあちこち分布してるけど」
「えっ、いるの?!」
「目ぇ煌めかせてるとこ悪いけど、会いたいなんて思わないでね?ドラゴンはリックルだけど、機嫌が悪けりゃ問答無用でブレス吐くし、向こうにしたら人間イコール五月蝿い虫程度の認識だから」
「いやいや、虫って……」
「じゃあ兄さんはトカゲの魔物とか、人間同様に接するの?トカゲに限らず他の魔物は?」
「それは……」
「ほらみろ。ドラゴンだって同じだっての」

 この世界には人の姿になれる龍人族ってドラゴン族の頂点に立つ古代種がいるけど、人間嫌いが多いんだよ。何せドラゴンの鱗やら内臓やらを勝手に欲しがり無謀にも殺しに来るのが人間だから。内臓は万病に効くって噂されるけど、本当かどうか、微妙な所だ。試す気も起きないしね。

「じゃあ、ドラゴンの他は?」
「ドラゴンの他?」

 普通ならドラゴンが出ればリ・ガングァが出る筈なんだけど、この兄さんには無理かなぁ?と僕が思ってると、セスが僕に聞いてきた。

「そういやお前って、あのリ・ガングァやヴズーリを一人で倒した事があるって聞いたけど?」
「ああ、何度かね」

 セスさすが。ナイスタイミング!

「ヴズーリって、屈強の戦士が十人ぐらいいないと倒せないってぐら……い……。リ・ガングァって、あのリ・ガングァなの?!!?」

 顔から血の気が引いてるのは分かるけど、僕は満面の笑顔で止めを刺す。

「会わなくて良かったねぇ」
「……え?!まさか?!!」

この二種は、出会うと98%の確率で死ぬと言われる。

「二種共この大陸の至る場所に棲息してるよ、他の大陸よりも遥か多くにね。知らなかったの?特に今の時期は多いよ?」
「……」

 硬直する兄さんを横目に僕は呆れ果てる。
 凄腕の暗殺者アサシンですら一人では倒せないというレベルの魔物なのに、どう考えてもこの兄さんでは勝てないからね。
感想 3

あなたにおすすめの小説

冤罪で辺境に幽閉された第4王子

satomi
ファンタジー
主人公・アンドリュート=ラルラは冤罪で辺境に幽閉されることになったわけだが…。 「辺境に幽閉とは、辺境で生きている人間を何だと思っているんだ!辺境は不要な人間を送る場所じゃない!」と、辺境伯は怒っているし当然のことだろう。元から辺境で暮している方々は決して不要な方ではないし、‘辺境に幽閉’というのはなんとも辺境に暮らしている方々にしてみれば、喧嘩売ってんの?となる。 辺境伯の娘さんと婚約という話だから辺境伯の主人公へのあたりも結構なものだけど、娘さんは美人だから万事OK。

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

【完結】瑠璃色の薬草師

シマセイ
恋愛
瑠璃色の瞳を持つ公爵夫人アリアドネは、信じていた夫と親友の裏切りによって全てを奪われ、雨の夜に屋敷を追放される。 絶望の淵で彼女が見出したのは、忘れかけていた薬草への深い知識と、薬師としての秘めたる才能だった。 持ち前の気丈さと聡明さで困難を乗り越え、新たな街で薬草師として人々の信頼を得ていくアリアドネ。 しかし、胸に刻まれた裏切りの傷と復讐の誓いは消えない。 これは、偽りの愛に裁きを下し、真実の幸福と自らの手で築き上げる未来を掴むため、一人の女性が力強く再生していく物語。

老聖女の政略結婚

那珂田かな
ファンタジー
エルダリス前国王の長女として生まれ、半世紀ものあいだ「聖女」として太陽神ソレイユに仕えてきたセラ。 六十歳となり、ついに若き姪へと聖女の座を譲り、静かな余生を送るはずだった。 しかし式典後、甥である皇太子から持ち込まれたのは――二十歳の隣国王との政略結婚の話。 相手は内乱終結直後のカルディア王、エドモンド。王家の威信回復と政権安定のため、彼には強力な後ろ盾が必要だという。 子も産めない年齢の自分がなぜ王妃に? 迷いと不安、そして少しの笑いを胸に、セラは決断する。 穏やかな余生か、嵐の老後か―― 四十歳差の政略婚から始まる、波乱の日々が幕を開ける。

忘れ去られた婚約者

かべうち右近
恋愛
『僕はレベッカしか選ばない』 甘い声音でそう話したはずの王太子サイラスは、レベッカを忘れてしまった。 レベッカは、王太子サイラスと付き合っていることを、ある事情により隠していた。舞踏会で関係を公表し、婚約者に指名される予定だったのに、舞踊会の夜にサイラスは薬を盛られて倒れ、記憶喪失になってしまう。 恋人が誰なのかわからないのをいいことに、偽の恋人が次々と名乗りをあげ王太子の婚約者の座を狙ってくる。おかげで不信に陥ったサイラスに、レベッカは自分が恋人だと名乗り出せなくなってしまった。 サイラスの記憶喪失を解消するため、薬師兼魔女であるレベッカは恋人であることを隠しながら、事件調査を協力することになった。そうして記憶が戻らないまま二人の距離は再び近づいていく。だが、そんなおりにサイラスの偽の恋人を名乗りでた令嬢たちが、次々と襲われる事件も起き始めて……!? ※他のサイトにも掲載しています。 毎日更新です。

没落貴族は最果ての港で夢を見る〜政敵の公爵令嬢と手を組み、忘れられた航路を拓いて帝国の海を制覇する〜

namisan
ファンタジー
日本の海運会社に勤めていた男は、事故死し、異世界の没落貴族の三男ミナト・アークライトとして転生した。 かつては王国の海運業を牛耳ったアークライト家も、今や政争に敗れた見る影もない存在。ミナト自身も、厄介払い同然に、寂れた港町「アルトマール」へ名ばかりの代官として追いやられていた。 無気力な日々を過ごしていたある日、前世の海運知識と経験が完全に覚醒する。ミナトは気づいた。魔物が蔓延り、誰もが見捨てたこの港こそ、アークライト家再興の礎となる「宝の山」であると。 前世の知識と、この世界で得た風を読む魔法「風詠み」を武器に、家の再興を決意したミナト。しかし、その矢先、彼の前に最大の障害が現れる。 アークライト家を没落させた政敵、ルクスブルク公爵家の令嬢セラフィーナ。彼女は王命を受け、価値の失われた港を閉鎖するため、監察官としてアルトマールに乗り込んできたのだ。 「このような非効率な施設は、速やかに閉鎖すべきですわ」 家の再興を賭けて港を再生させたい没落貴族と、王国の未来のために港を閉鎖したいエリート令嬢。 立場も思想も水と油の二人が、互いの野望のために手を組むとき、帝国の経済、そして世界の物流は、歴史的な転換点を迎えることになる。 これは、一人の男が知識と魔法で巨大な船団を組織し、帝国の海を制覇するまでの物語。

竜の国のカイラ~前世は、精霊王の愛し子だったんですが、異世界に転生して聖女の騎士になりました~

トモモト ヨシユキ
ファンタジー
辺境で暮らす孤児のカイラは、人には見えないものが見えるために悪魔つき(カイラ)と呼ばれている。 同じ日に拾われた孤児の美少女ルイーズといつも比較されていた。 16歳のとき、神見の儀で炎の神の守護を持つと言われたルイーズに比べて、なんの神の守護も持たないカイラは、ますます肩身が狭くなる。 そんなある日、魔物の住む森に使いに出されたカイラは、魔物の群れに教われている人々に遭遇する。 カイラは、命がけで人々を助けるが重傷を負う。 死に瀕してカイラは、自分が前世で異世界の精霊王の姫であったことを思い出す。 エブリスタにも掲載しています。

竜皇女と呼ばれた娘

Aoi
ファンタジー
この世に生を授かり間もなくして捨てられしまった赤子は洞窟を棲み処にしていた竜イグニスに拾われヴァイオレットと名づけられ育てられた ヴァイオレットはイグニスともう一頭の竜バシリッサの元でスクスクと育ち十六の歳になる その歳まで人間と交流する機会がなかったヴァイオレットは友達を作る為に学校に通うことを望んだ 国で一番のグレディス魔法学校の入学試験を受け無事入学を果たし念願の友達も作れて順風満帆な生活を送っていたが、ある日衝撃の事実を告げられ……