英雄王の末裔 ~青のラファール~

カザハナ

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~港町エルト・デ・ルム~

ジロウム技師

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 翌日の遅めの朝、食堂に人がいない時に修理する機器を分解。オマケにちょっとした負担にならない便利性能も追加して、残りがラスト一つになるけど、時間的にそれは昼過ぎにと回す。
 そんなに時間を掛ける気はないけど、そのまま続けたら昼食の時間帯に入っちゃうからね。いくらお客さんから見えない場所にいるとはいっても、宿屋側の邪魔になって迷惑かけちゃあ意味ないからね。
 おとなしく昼過ぎの、客がいなくなる時間を見計らい、修理を始める。今日はこの機械を使わない料理の提供をお願いした。修理中に来られて作れません、なんてならないようにする為だ。
 全ての修理を終えてアーヤ達も呼び、まったりティータイムを楽しんでいると、店に一人の客が入ってきた。

「いらっしゃい」

 宿屋の店主であるおじさんが入ってきた中年男性に声を掛ける。それに対し、客の男は一言。

「いつものだ」
「調子はどうだい?」
「最悪だ」

 おじさんの質問に即答するお客さん。
(あれ、この人……)
 その時店主のおじさんが、僕の方をチラッと見てくる。

「そうか、それは気の毒に。ああ、そういやぁ今この港町に、この大陸一の凄腕メカエンジニアが来ていたんだけど、一応声を掛けといておこうかい?」

 白々しい笑顔でお客さんに聞く。

 実はこの男、中央では凄腕の技師と知られるジロウムという男で、約1ウィテル(※約1ヶ月だけど、ここでは大体60日前後)程ここ、イファデラ大陸に滞在している。
 その理由は東大陸の近くを航海中に魔物が現れ、船に多大なる傷痕を残した為だが、東に来て絶望的だと思ったのはメカエンジニアを名乗る者達の腕前だった。
 船の修理依頼を出しても来た者の殆どが、魔石交換ぐらいの技術しか持たない者ばかり。試しに船を弄らせるも、余計な事をして逆に船の傷痕を広げるような行為をし出す。そんな連中を1ディフェル(※1日)で帰らせ続け、今では一人、黙々と船を修理し続けている。
 そんな状態なので前例が前例だけに、どうせろくなもんじゃないだろうと思ったが、遅々として進まない修理に取り敢えず人手だけは欲しいので、期待はせずに頼んでみる事にした。

「宜しく頼む」
「分かった。伝えとくよ」

 その客が遅めの昼食を食べて店を去ると、店主は僕に聞いてきた。

「受けてみるかい?」

 僕はずっと思ってた事を口にする。

「いいけど……船か何かの修理だよね?外の人みたいだけど」

 僕の言葉に連れの兄さんが反応する。

「何でそう思うの???」
「あー……説明しなきゃなんない?」

(すっごく鬱陶しいんだけど……)

「えっと、出来れば……」

 はぁ~っと溜め息を吐き僕は説明する。

「先ず僕が外の人って言ったのは、店主が僕に対してこの大陸一って言ったから」

(この大陸の人に向かってわざわざこの大陸・・・・なんて言わないからね)

「次に、メカエンジニアに声を掛けるって事はそういう人が必要って事だけど、あの人自体そういう類いの人だから――」
「――ってちょっと待って!どうしてそういう類いの人って分かったの?!?」

(……っだぁ~~~!!この人はぁ~!)
 直ぐに話の途中で突っ込んでくる兄さんに苛立つ僕。


「あの人から機械油の匂いがしたし、爪の縁も黒く汚れてたから!OK?!」
「おっ、OK……」
「――で、そういう人が他の同業者に頼むって事はかなり時間が掛かる物、かなりでっかい物とかって限られてくる訳!因みにここはどっからどう見ても港町・・!外の人+プラス時間が掛かる物、でっかい物っていったら船の可能性が一番高いの!分かった?!」
「わっ、分かった」

(ったく、ここまで言わすな!少しは考えろっての!)
 取り敢えず僕は店主に話し掛ける。

「おじさん詳しい場所、教えて貰ってもいい?あと取り敢えず、明日の朝に行くだけ行ってみるよ」

 あの人は大丈夫そうな気がするけど、中には子供ってだけで門前払いする人もいるからね。そんな人相手に貴重な時間を潰す気はないから、その場合は即、引き帰らせて貰うんだよね。

「君達は気にならなかったの?今の……」

 兄さんがアーヤとセスに振る。

「ラルが考えもなしに言う訳ないじゃない」
「気にならないって言ったら嘘になるけど、あいつの場合、分かって当然みたいだし、この中じゃ一番経験豊富っぽいから」
「一番って……あの、僕も2ティファル(※2年)ぐらいは旅をしてるよ……」
「2ティファル?!?!!」

 兄さんのその言葉に僕は思わず叫んでしまったが、僕は絶対悪くない。
 この兄さんの常識の無さに、頭痛持ちじゃない僕の頭痛が酷くなる気がした。
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