英雄王の末裔 ~青のラファール~

カザハナ

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~フィルゼン領域~

からくり屋敷の子供達

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 窓の外をぼんやり見ていると、変わった行動をしている子供達を見付けた。
 僕より小さな子供達が、宿屋のあちこちに入ってはがっかりした様子で出てくるのだ。
 服装から見ても旅人ではなく、街の子供としか見れない。まぁどちらかといえば、金持ちに当たる部類の子供達だろう。
 デ・マームとデ・ティームの中間にあるこのアルタは、とても治安が良い場所ではあるが、だからといって犯罪がない訳ではない。特に宿屋等余所者が多い場所は安全とは言い難いのだ。
 勿論、僕のような旅をする子供もいるし、近くにある普通の家々の子供もいるだろう。
 宿屋の子供達や色んな工房の子供達もこういった宿屋付近を出歩いてはいる。が、何分服装が違うのだ。小綺麗過ぎる。
(保護者はどうした、何してる)
 僕達の場合、物っっ凄く不本意ながら、知らない人達やパッと見の人達は、あの兄さんが保護者だろうと思うだろう。実際の所は僕があの兄さんの面倒を見てる状態だけどね。というか、あの兄さんに保護者の役は無理だ、絶対。
(う~ん、下に行って様子を見るか。この宿にも来そうだし)
 様子を見てると今日が初めてって感じでもない。という事は、そこそこ顔は知られてる子供達って事かな?だからといって危なくないという訳じゃないんだけどね。
 書いてた図案やメモを荷物袋の収納ボックスに入れて、持って行く。部屋はまだ僕一人だし、置いて行くのは危ない。勿論盗まれるという可能ではなく、万一盗もうとした者がいた場合、その相手が危ないのだ。
 盗人取っ捕まえるのは簡単だろうけど、部屋に帰って来たら、そいつがのたうち回ってるとか、勘弁願いたいからね。身動き出来ない状態だったり、凍傷や火傷なら良いけど、流血沙汰で腕が落ちてるとか、アーヤに見せたくないからね。あと、部屋の家具類が破損して弁償とか、割に合わない。勿論その時は、押し入った相手からぶんどるけどね。
 部屋に鍵は掛かるけど、盗人に鍵は関係ないから、宿屋に荷物を置いて行く旅人はほぼいない。あの兄さんならやりかねないけどセスがいるから大丈夫だと思う。チェリクに泊まる時に旅の注意はしてるからね。
 下の食堂に行けば、三人が壁にあるこの街の見取り図を眺めていた。

「行きたい所が決まらないの?」

 僕の言葉に三人が振り向く。

「「ラル」」

 アーヤとセスの声が見事にハモる。

「ここは商人もメカエンジニアも多いから、品数豊富で楽しいけど、似たような店もあちこちあるから気を付けてね。あと、同じ物でも場所によって値段が違う場合もあるから、複数の店で見比べた方が良いよ。ただし、メカを買う気なら僕に声掛けてくれた方がいいかも?市販流通してる物なら値段がある程度決まってるけど、オリジナルのメカだと魔石の産地やメカの性能等々、色んな要素があるから値段も様々なんだよ」
「様々って言うけど、高い物だとどれ位するのさ?」
「高い物だと王都周辺の城とか、土地付きで買えるぐらいはするよ。まぁ、そんな一品は、滅多に出回らないけど」
「そ……そんなにもするんだ……」

 驚いてるとこ悪いけど、兄さんが知らないだけで、兄さんの周りにもそこそこあるよ。兄さんが見た物でも、僕の作ったヘグルス変換機器とか、アーヤの持ってる魔銃弾砲とか。
 僕が作った物でその価値が分かるメカエンジニアや技師なら、もっと値段を釣り上げ買おうとするよ。純度の高いイファデラ産のを使わなくても、ドワーフを師に持つ僕の作品が安い訳ないし、メカエンジニアや技師から見ても、どんなにちゃちな作品でも垂涎物の一品になるんだから。

「あの、ここに泊まってるメカエンジニアさん達に声を掛けて、これの修理をお願い出来ませんか?!」

 先程窓の外にいた子供達が宿の中へと入って来て、その内の一人が、宿屋の店主に話し掛けた。

「悪いが、何度来たって無理な物は無理だ。この街のメカエンジニアや技師達にも声掛けたんだろ?旅してここに来たメカエンジニアや技師達の大半はここで技術を学ぶ為に来た奴らが多い。この街の工房で断られた物を扱える奴なんて名の通った有名な相手でないとどうにもならんと思うぞ」
「でも、一人ぐらいいるかも知れないじゃないか!」
「あのなぁ、お前達、あのからくり屋敷の子供だろ。あそこにある物は、建物から何から、古い物で、二百ティファル(※二百年)以上前の物だって聞いたぞ。あのからくり屋敷の仕掛けだって、五十ティファルぐらい前から動いてないって聞くし、それが最後の一つだろ?既に何人ものメカエンジニアや技師達があの屋敷のからくりに挑戦してるのに、未だ誰も解体出来た奴はいないんだ。大方魔石の寿命が尽きたんだろうが、魔石の交換すら出来ないんだから諦めろ。それこそ、ドワーフなら出来るだろうが、あれは普通のメカエンジニアや技師達ではどうにもならない品物だ。他でも散々言われたろ、諦めて家に帰れ」

 悔しそうな顔をして無言で帰る子供達。
(何その面白話!からくりとかドワーフとか、めっちゃ興味深いんだけど!!)
 近くで聞こえた話に、僕の好奇心が刺激されまくったのは言うまでもない。僕は子供達のあとを追って、人気のない所で話を聞く事にした。
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