英雄王の末裔 ~青のラファール~

カザハナ

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~デ・フォン領域~

僕の送り迎えは争奪戦らしいです?

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「僕、送り迎えはいらないよ?会わせたくない人がいるから」

 アーヤやセスなら特部の兄さん達に会わせてもいいんだけどなぁ。
 僕の言葉にウィル兄が確認をしてくる。

「ああ、常識知らずが連れの中にいるらしいな」
「特部だと名乗らなきゃいいんだろ?心配すんな」
「本部に知り合いがいるってだけで、自慢になるとか言うおのぼりさんだよ?しかも僕の保護者として一緒にくるとか寝言をほざくし」

 本当ふざけてるよねって僕が言う前に兄さん達が口を開く。

「「ラルの保護者?」」
「「「ーーだと?」」」

 あっ、凄い。見事に異口同音で揃ったや。

「当然僕は認めてないよ。僕の保護者はラファス兄一択だもん。しかも剣の腕は一般評価で中の中。一般人より少し上って程度だよ?そんなのに特部の兄さん達と会わせたくないんだよね~」
「ああ、アーヴェルから聞いた。中央デ・トルト出身で、たかが2ティファル(※2年)の新米冒険者が、イファデラに挑戦していたそうだな」

 レノ兄の言葉に、そこまで詳しく聞いてなかったのだろう三人の兄さん達が顔を引きつらせてる。

「マジか……」
「よく生きてたね、そいつ……」
「特部の俺達ですら、未だに足を踏み入れていないというのに……」

 実力的には充分来れる特部の兄さん達ですら、東は別格として捉え、東に行くには万全の準備と心構えを持ってからというのに、あの兄さんは近所に散歩気分なノリで踏み入れたようなものだもんねぇ。普通なら死ぬし、無謀にも程がある。
 ああ、因みに特部の兄さん達は何かしらの特級から伝説級のランクである技能持ちで、武器等の腕は一般評価じゃ当然上の上。皆僕より上だから当然だよね。
 一般評価じゃなくて僕が定めた評価として、ラファス兄を上の上、凄腕の暗殺者アサシンを中の中評価にすると、僕が大体中の上かギリギリ上の下ぐらいかな。それでいくと、アル兄は上の上だけど、他の特部の兄さん達は大体上の中になる。
 因みに僕が認める凄腕の暗殺者って、関係者以外は出入り不可の上級ランクの仕掛けや魔法が施された場所にいる標的をり、暗殺と気付かれず疑われないままの腕、特級ランクの暗殺者って所かな。ここまでいくと上位の魔物でない限り、存在を気付かれずに殺れるから。

「そんな奴がラルの保護者気取りか」

 呆れ果てた声でウィル兄が呟く。

「まぁまぁウィオラル。ボクがラルを送った後、そいつにちゃんと釘をさしとくからさ」
「待て、トゥーサー。抜け駆けすんなっつっただろ。王族だっつっても顔が知られてる訳じゃねえ、言わなきゃ良いだけの話だろ。ラルの送り迎えは俺がする」
「レノンだと威圧感強過ぎるでしょ、やっぱりここはボクが送り迎えをするよ」

 えっ、またそこに戻るの?まぁいいけどさぁ。

「レン兄は口が悪いから、王子だなんて誰も気付かないよね」
「俺は元々王位には無縁だからな。精霊使いの素質が高い王族は、精霊使いとして育てられ、世界を廻る。世界を廻る事の出来る王族は精霊使いだけだ。兄姉達とは仲は良いが、精霊使いで良かったと俺は思ってるからな」
「ラルの送り迎えするって言うけど、レノンは外せない仕事が入っていたよね?」
「そんなもの、2~3デェフィル(※2~3日)で終わらせる」

 二人が良い笑顔で言い合ってるけど、結局僕の事だよね。

「いや、だから僕、一人で行き帰り出来るよ?」
「トゥーサー、レノン、俺も送り迎えをする内の一人に入れておけ。そしてラルは諦めろ。お前は特部全員の妹みたいなものだ。レヴァーノもアーヴェルも顔が知れ渡っている自覚があるから参戦しないだけで、デ・マームでなければ参戦している筈だ」
「最初は皆、僕を弟だと思ってたけどね」
「あー……、それについては謝る。悪かった」
「別に謝る必要はないよ?わざとだし、間違われたくなければそれ相応の格好をすればいいだけだしね」

 一応中性的な顔立ちだから、付け毛ウィッグをして女の子の姿カッコをすれば大丈夫。
 ラファス兄との旅の最中に、地道に稼ぐ方法や手段、潜入や囮といった経験も積んでおけば、何があっても対処出来るから、人によっては弱点となる年齢、性別を逆手に取り、嵌めるやり方も教えて貰ってるからね♪

「ラルは髪を伸ばさないのか?」
「う~ん、今の所伸ばす気はないかな~」

 別に伸ばしてもいいんだけど、前に肩下程の付け毛を着用して女の子の姿した時、ラファス兄が微妙な顔したんだよね~。
 僕、色合いこそ違うけど、亡くなったお父さんと瓜二つらしく、そのお父さんが女装したらこんな感じだったんだろうなと思わず想像しちゃったらしい。
 お父さんは髪が肩下程まであったんだって。なので、僕はなるべく肩下程の付け毛は避けて、腰程の付け毛を着用してる。
 ラファス兄は子供の頃、お父さんに散々振り回されたらしく、僕がお父さんに性格まで似なくて良かったって心底思ってるみたい。
 大好きなラファス兄の心の負担は少ない方がいいよね、うん。
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