奇跡の確率

カザハナ

文字の大きさ
上 下
47 / 135

45

しおりを挟む
 暫くすると、ルー兄が帰ってきた。


「コーディー大丈夫?何かぐったりしているけれど?」

「うん……。聞かないで……」


 キャパオーバーな僕はクリスに抱き抱えられたまま座り込んでる。クリスに凭れてる状態だけど、クリスが重いって言わない限りいいよね……?

 ルー兄が、ご機嫌なクリスと僕を見比べ僕を気遣ってくれる。


「まぁ、これから毎日みたいだけれど頑張ってね?僕は夕飯を作るけれど、コーディーはまだ休んでいてね。そういえば、クリス君って好き嫌いあるの?というか、そもそも天空の食べ物ってここのとは違うよね?」

「食に関しての拘〈こだわ〉りはないが、天空の食べ物とはかなり違うだろうな。そもそも煮込んだり焼いたりしないし、食事の概念そのものが違う」


 クリスの言葉に驚く僕。

 僕、何も考えずにクリスに温かいご飯あげてたけど、それって無理させてたんじゃ……?


「えっ……もしかして僕、クリスに無理に食べさせてた?」

「いや、コーディーの料理は美味かった。天空では飲み物が食べ物というか、天空の植物は実がそれぞれ飲み物みたいになっていて、それ等の実をそのままかじったりして飲むから、それが食事に当たるんだ」


 ……まさかの食事事情に吃驚だ。

 クリスの腕の中でクリスを見上げながら、呆気に取られる僕。


「じゃあ、肉とか噛むような固形物は食べないってこと?」


 硬い物が好物のルー兄が戸惑いながらクリスに聞く。


「食べないというか、食べれない訳ではないが天空では入手が困難だと思う。地上と違い天空にいる鳥は風霊族の化身だし、地上の動植物は天空の大地では育たないから、食べたければ地上に降りるしかないし、そこまでして食べたいとも思わないからな。ただ、地上の食事に慣れると天空の食事はかなり味気なく感じる」


 まあそうだよね……。地上だと同じ食材でも調理の仕方で味も変わるし、工夫すればレパートリーが無限大に近くなるからね。作れるかは別だけど。





翌朝、いつもより少し早めに目を覚ますとルー兄が身体を起こす。ルー兄は地霊族だからかあまり睡眠を必要としない。そして人の気配に何よりも敏感だ。


「おはようコーディー」

「おはようルー兄」


小声で挨拶を交わしていると、クリスまでが目を覚ます。


「……二人共、早いな。おはようコーディー、ルーフェンス」

「おはようクリス。ごめんね、起こしちゃったよね?」

「いや、いい。気にするな。私は元々眠りが浅い。コーディーの声は心地好く、ずっと聴いていたいぐらいだ」


 朝っぱらから甘いよ!クリス!!


「おはようクリス君。朝っぱらからご馳走様?クリス君って見た目よりも随分甘いけれど、翼人って皆そんな感じなの?」


 ルー兄が苦笑混じりにクリスに聞く。


「?恋人に対して甘くない奴なんているのか?」

「「……」」


 素か……。これが素なのか翼人……。ちょっとルー兄、肩震わせて笑ってるけど、僕にとっては笑い事じゃ済まないからね!
しおりを挟む
1 / 5

この作品を読んでいる人はこんな作品も読んでいます!

【完結】私は、顔も名前も知らない人に恋をした。

恋愛 / 完結 24h.ポイント:120pt お気に入り:1,008

行動あるのみです!

恋愛 / 完結 24h.ポイント:78pt お気に入り:952

出会いと別れと復讐と

ファンタジー / 連載中 24h.ポイント:7pt お気に入り:133

婚約者は聖女を愛している。……と、思っていたが何か違うようです。

恋愛 / 連載中 24h.ポイント:10,231pt お気に入り:9,132

婚約破棄ならもうしましたよ?

恋愛 / 完結 24h.ポイント:85pt お気に入り:2,348

処理中です...