神なのか?

モモん

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第一章

第16話 メロン狂いの皇妃はのたまわった

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 店がオープンしてから、10日経っても客足が途絶える事はなかった。
 仕方ないので、スタッフが増員され、交代制にして対応していく事になった。
 当然、家のメイドも借りだされている。

 その1カ月後、一般街に開店したカフェは、カウンター販売の方式をとり、配膳などの人件費が削減された。
 木製のカップも返却式にし、茶葉やコーヒー豆も市販のものも仕入れて安価なメニューが加えられたのだ。
 一般市民向けの販売戦略だ。
 ただ、スイーツの質はそのままで、貴族街の店と同じようにプリンやシュークリームが提供される。
 多分、月に1度くらいは贅沢して食べてくれる人がいるだろうという目論見だった……
 
「月に1度と考えた都民が1万人いたとしたら、こうやって毎日300人来るのも不思議ではないですよね。」

「だって、プリン1個が銅貨5枚だぞ。5千円なんだぞ。」

「5000円というのは知りませんが、いいじゃないですか。プリンを一つ買って、家族4人で少しずつ食べてみる。それで幸せなんですよ。」

「くそっ、想定ミスだ。明日からプリンとシュークリームとタルトを100個増やしてくれ。」

「承知しました。」


 3ケ月が過ぎると、貴族街の店も少し落ち着いてきた。
 そんな中、皇妃と皇女がお忍びで来所する。
 店には一応個室もあるので、初めて個室が使われた。

「随分賑わっていますのね。」

「やっぱり、ロビンさんは凄いですわ。」

「ようこそお越しくださいました。こちら料理部門の責任者マリーとスイーツ部門責任者のリズです。」

 パンツスタイルのマリーとリズは普通に礼をした。
 それに対し、皇女二人は立ち上がって礼で返し名前を名乗ったのに、皇妃は目礼だけだった。

「紅茶でよろしいですか?」

「私はアールグレイでお願いします。」

「私はウバという紅茶をお願いします。」

「お任せしますわ。それと食事もお任せで。」

「私はオムライスで!」

「私はチーズオムレツを食べてみたいです。」

「承知いたしました。」

 部屋から出たところで、マリーさんが聞いてきた。

「皇妃様のお料理はどうしましょう?」

「そうだな、親子丼でも出してみようよ。どういう反応をするか楽しみだ。」

 先に紅茶を出して、時間をあけて料理の完成にあわせてコンソメスープが提供された。
 オムレツにはクロワッサンとバターが添えてある。

「やっぱり、オムライスが一番です!」

「アリスは分かっていませんわ。このオムレツを割った時に、トロットとした中身と一緒に蕩けたチーズが……、至福の時間とはこの時の事なのよね。」

「皇妃殿は召し上がらないのですか?」

「得体のしれない料理人の作ったものなど、私が口にするハズないでしょ。今日はメロンだけで良いのです。」

「えっ、今日はメロンなんて入っていませんよ。」

「な、何を……、昨日メロンが入ったと聞いてきましたのにどういう事ですか!」

 彼は皇妃に出された親子丼を皇女の前に移動し、店員に取り皿とスプーンの追加を指示した。

「皇妃が食べないみたいだから、二人で食べていいよ。」

「何ですかこれは!」

「親子丼と言ってね、甘辛く煮込んだ鶏肉とタマネギを、タマゴでふわっと包んだ料理だよ。マリーの自信作なんだ。」

「お待ちなさい。メロンが無いとはどういう事ですか!」

「昨日入りましたけど、あっという間に売り切れたんですよ。」

「ば、バカな……。メロンは全て陛下に献上するよう言われているハズ。」

「ああ、それはお断りしましたよ。」

「何を……」

「これ!すっごく美味しいです。」

「あーっ、私も頂くわ!」

「メロンが無いというのに、何を二人で騒いでいるのですか!」

「作っていただいたマリーさんに感謝です。」

「オムレツも玉子丼もスープも美味しいです。マリーさんが城の料理人になってくれたらいいのに!」

「不愉快です!帰ります!」

「不愉快なのはこっちだよ。」

「何を!」

「悪かったなマリー、リズ。自分が偉いと勘違いしたバカ女のせいで、不快な想いをさせてしまった。」

「いえ。」

「お主、自分が何を言っているか分かっておるのか!」

「皇女二人は、料理人に敬意を払ってくれている。お前は何様だと思ってるんだ?」

「知らぬのか!私はドルト帝国皇帝の妃じゃ。お前ごときが口を聞ける相手ではない!」

「出自はラーハイド国第3王女。つまり、現王子であるランドの叔母って事だろ。それが国元で厄介払いされて、ラーク皇帝の後妻として嫁いできた。」

「な、何を……」

「気位が高いだけのバカで、皇女二人からも相手にされていない女。」

「くっ、だが陛下は!」

「皇帝がお前を娶ったのは、皇女二人に母親が必要だと感じていたからだよ。」

「バカな!すぐに嫁に出すだけの娘など……」

「陛下は、お前に一度だって手を出したか?」

「そ、そのような事、お前には関係ない!」

「そんな事はないぞ。俺もラーハイドの出身だからな。」

「それなら猶更……」

「あそこの王族は腐りきっているからな。これ以上醜態を晒してほしくないだけだよ。」

「いうに事欠いて、醜態じゃと!」

「陛下はお前をラーハイドに送り返してもいいそうだ。まあ、ラーハイドに帰ったら、そのうちに俺が潰すと思うけどな。」

「ラーハイドを愚弄するつもりか!」

「とはいえ、親もいるし、どうするか悩んでいるんですよね。」

「お、お前はいったい……」

「世界最強の冒険者ですよ。」

「ぼ、冒険者風情が何を!」

「言ったでしょ、世界最強だって。」

「クククッ、最強だろうが、生身の人間が軍には叶わぬであろう。戻り次第陛下に進言し、軍を差し向けてもらう!」

「ムリだろうな。陛下は俺の力を知っているし、国の要職者も俺の価値を認めている。まあ、城に帰って聞いてみればよいだろう。」

「くっ、覚えておれ!」

 皇妃は部屋から出て、待機させていた馬車で城に帰っていった。

「さて、食事を続けましょうか。」

「大丈夫なのですか?」

「あれでも、一応は皇妃……」

「大丈夫ですよ。陛下は私の見方ですから。」

 その後、皇妃は陛下にも拒絶され、体一つでラーハイド国に逃げ帰っていった。
 そもそもが、皇女二人の母親になってくれれば良いと迎え入れただけの存在に、皇帝もそれほど気にしなかった。

 だが、そこに異を唱えたのは財務局長である。
 皇妃が持ち去った宝石類は、総額金貨5000枚程の価値があり、これまで遊行費に使われた金額は金貨3000枚に及ぶと報告され、婚姻を一方的に破棄されたのだから賠償請求を行うべきだと主張した。
 その後開催された局長会議で可決された賠償請求額は金貨2万枚。日本円換算で20億になる。

 ラーハイド国自体は、規模からすれば日本の四国くらいの大きさなのだ。
 日本列島を丸く広げたくらいのドルト帝国からすれば、吹けば飛ぶ程度の国でしかない。

 帝国から送られた請求額に、ラーハイドは沈黙した。
 
「ところでな、二人が新しい母親が欲しいと言い出し始めてな……」

「へえ、良かったじゃないですか。」

「そうか!お前が賛同してくれるなら、俺に異論はない。」

「えっ、俺の知っている人ですか?」

「俺も会ったことがないのだが、ローズマリーというらしい。」

「えっ?」

「料理が上手で、見たことのない料理を作るらしい。味が絶品だと二人とも絶賛しておってな!」

「ダメに決まってるでしょ!」


【あとがき】
 皇妃登場と共に失脚
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