辺境の修理屋さん

モモん

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第一章

第2話 鑑定と偽装

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「ふう、ステータスはこれでいいとして、心もとないのは魔力だよな。ラノベとかだと、限界まで魔力を消費すると増えやすいとか読んだ気もするが……やってみるか。」

 俺は仮眠用の簡易ベッドの横にバケツを用意し、3発水を撃ち込む。
 そしてベッドに腰を掛けて最後の一発を発射。
 少し間をおいて目の前がグルングルンと周りだし、とんでもない嘔吐感・倦怠感・疲労感・頭痛が一気に襲ってくる。

 ま、魔力切れ……半端ねえ……

 そのまま俺は意識を手放した。

 そして目を覚ました時、俺の魔力は5ポイントに増えていた。
 意識を失っていた2時間の間に、魔力は2ポイント回復している。

 だが、あの死にそうな感じは、二度と味わいたくない……

 3日後、俺の魔力は20に増えていた。


 俺の事務所のパソコンは、自分で部品を買い集めて自作したものだ。
 経理用に表計算や請求書発行に使ってきたのだが、そこのツリー形式のメモ帳にこれまでの経緯や発見した事を書いていく。

 ふと、デスクトップに見慣れないアイコンを見つけた。
 ”BBAwiki”って、どう考えても婆さんの関連だろ、これ。

 念のため、全てのデータのバックアップをとり、BBAwikiを起動した。

 ディスプレイに表示されたのは

 ”初期化しますか?”

 NOだろこんなもん。

 ”本当に初期化しますか?”

 NOだって言ってんだろ!

”このままだと浸食されます。初期化しませんか?”

 何だよ浸食って……NOだよ……

”今なら婆ちゃんの子守歌データがついてきます。初期化しましょう。”

 要らねえよそんなもん!

”お前がそんな子に育ってしまうなんて婆ちゃんは悲しい……。初期化しようよ。”

 泣き落としかよ、NOに決まってんだろ!
 せっかく組んだPCを壊されてたまるか!

 NOを選択した途端、ファンファーレが流れた。

”おめでとうございます。全問正解です♪”

 いつクイズになったんだよ!

”それでは、これから音声モードをセットしますのでお好きな声をお選びください。”

 おっ、やっぱ可愛い系のお姉さん……

”1,普段のお婆ちゃん 2,カワイイお婆ちゃん 3,怖いお婆ちゃん 4,不機嫌なお婆ちゃん”

 くっ、何だよこれ……1で。

”ただいま音声データを展開しております”

 少しして音声が流れてきた。

「おお、やっぱりワシの声がいいんじゃな。カワイイボンじゃのう。」

「はあ、他に選択肢がなかっただろ。」

「まあいい。これは独立型AIじゃから、オフラインで使用可能な優れモンじゃ。簡易版がスマホにも入っとるから、有難く使うんじゃぞ。」

「へいへい。それで、質問すれば答えてくれるのか?」

「勿論じゃ。知りたいことがあったら言うてみい。」

「ここはどこなんだ?銀の3番とか言っていたが。」

「ここは、太陽系と似た星域の第4惑星じゃ。公転周期と自転は地球と同じようなものじゃな。」

「それで?」

「ここは、北半球にあるローラ大陸。その中にあるローカラ王国のサンドミリオン辺境領にあたるな。」

「で、ここから一番近い集落はどこなんだ?」

「西に5キロほど行くとロアンという町がある。とりあえず、そこを拠点とするんじゃな。まあ、俊敏が400ポイントになれば瞬間移動が使えるんじゃがな。」

「それ、もう覚えたぞ。」

「わはは。たわけた事を……なにぃ!あり得ん!何でこんなに覚えて……まさか、能力のポイントを1にして、各項目を最大まで引き揚げたのか……」

「ああ。ダメだったか?」

「いや、ワシは独立系AIじゃから、それを判断する立場にはない。」

「そうか。有難いぜ。」

「とはいえ、このステータスでこの魔法の多さはまずいな。」

「普通はどうなんだ?」

「一般的には、持って生まれる魔法が1つから2つ。王族でも3つを超える事はなく、項目のポイントが100を超えるような達人はそれこそ勇者レベルの存在だな。」

「そりゃあ、ヤバそうだな。でも、……ああそうか、鑑定で見られちゃうんだな。」

「そのとおりじゃ。そして鑑定の習熟度をあげることで、偽装という特殊技能を習得出来るはずよ。」

「えっ、習熟度なんていうパラメータがあるんですか。」

「そう。そういうものもちゃんとデータ化できているわ。だから、当面は鑑定を使いこなすのね。」

「くっ、また魔力切れの苦行を続けるのかよ……」

「ああ、魔力切れは効果的に魔力を上げられるけど、マイナスにしないよう注意するのじゃぞ。」

「マイナス?」

「鑑定は魔力を2ポイント消費するじゃろう。残りが1ポイントしかない時に鑑定を使えば、マイナスじゃな。」

「……マイナスになるとどうなる?」

「まあ、あの苦しみが10倍続くだけじゃよ。気を失う事もできずにな。それでも魔力の増加は多くなるから、やりたければ止めんがのう。」

「やらねえよ!何だよその悪趣味な設定は!」

「設定?ボンよ、ここはゲームの世界ではないのじゃぞ。」

「えっ?」

「魔力と魔法があるというだけで、他は過去の地球と変わらんのじゃ。魔力というのは物理法則に干渉できるエネルギーじゃと思えばいい。」

「魔力がエネルギー……」

「そうじゃ。お主等地球人には馴染みがないだけで、電気や光・火・磁力や重力と変わらぬエネルギーと認識すれば良いのじゃ。」

「……なあ婆ちゃん、あんた何者なんだ?」

「ワシは、ラブリーキュートなAI婆ちゃんじゃよ。」

「まさか、神様なんじゃないのか?女神様ってのは俺の良心が拒否ってるが……」

「好きなように感じればよい。何なら、妻とか恋人と思ってくれても良いのだぞ。」

「やめろ!何が悲しくて婆ちゃんを嫁にせにゃならんのだ!」


 こうして俺は、毎日鑑定を繰り返してぶっ倒れる日々を続けた。
 その間に、何かの景品でもらったニンジンとほうれん草のタネを蒔き、目の前の森を切り拓いて街道までの小路も作っておいた。

 鑑定というのは便利な魔法だった。
 モノの状態や素材も見せてくれるので、修理にも役立ちそうだ。

 そして魔力が50ポイントになった時、俺はついに偽装の特殊能力を獲得した。
 婆ちゃんに教わりながら本来のステータス画面をコピーして、見せたくない部分を消していく。
 魔法は水魔法と土魔法、それに鑑定も残しておいた。
 特殊技能は修理だけにしておく。

「では町に行ってみようか。スマホを忘れるでないぞ。」

「何でスマホ?」

「冒険に、嫁を連れて行かぬきか?」

「くっ、誰が嫁だよ!どうせなら、エルフのスレンダー嬢がいい!」

「ほう、ボンはスレンダーエルフが望みなのじゃな。じゃが、30過ぎのチェリーなんぞエルフが相手にしてくれるかのう?」

「うっ、何でそれを……」

「エルフは潔癖なところがあるからのう。このPCに保存してあるエロ動画や画像は早いうちに消しておいた方が良いだろうな。」

「だ、ダメだ!あれは俺の……」

「まあ、確かにスレンダー系が多いようじゃが、おっ、ロリ系もそれなりにあるではないか。」

「や、やめてください……」

「仕方ない、これ全部ワシの顔に変えてやろ。ババ路線じゃ。」

「やめろー!」

「冗談じゃよ。」


【あとがき】
 隔日でお届けしています。
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