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第一章

そして萌ちゃんは料理王になった

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「酵母は、このリンゴの実と皮の間にあるんです。
準備としては、雑菌が入らないように容器を煮沸消毒します。
それと、沸騰させた湯冷ましを作っておきます。
これも、雑菌の繁殖を防ぐためです」

一時間後、作業を再開する。

「リンゴを8等分にして、ビンの中に入れて、砂糖と湯冷ましの水を入れます。
今回はザラメが売っていましたので、これを適量入れて、よく振ります。
あとは一週間、毎日蓋をあけて、糖が分解する時に発生する炭酸ガスを抜いてやります。
この時点で、シードルというお酒になってるんですね」

「じゃあ、飲めるのかい」

「ええ、でも余計な作業は雑菌を入れる元ですから、今回は飲みません。
だいたい28度くらいのところが発酵に適してるんですよ」

基本的には萌ちゃんに任せきりで、俺たちは訓練に励んでいる。

「はーい、一週間で泡がでなくなりました。
これが酵母液で、ワインでもあります。
これを100ccほど小麦粉に混ぜてこねます。
水分が足りないので、卵と水を加えてしっかり捏ねたら30分休ませます」


「ふむ、いい感じですね。
塩を混ぜて更にしっかり捏ね、冷蔵で半日寝かせ、そのあとで3時間ほど常温で発酵させます」

「うん、2倍まで膨らみましたね。
そしたら、打ち粉した台に乗せて、伸ばして畳みます。
これを3回ほど繰り返して形を整えて1時間放置。
出来上がったものをオーブンで焼くだけです。
簡単でしょ」

「「「どこが!」」」

だが、出来上がったのは俺たちの知ってるパンだった。

「うめえ!」

「美味しいわ、さすが私の萌ね」

「こ、こんなパンがあったなんて……」

このレシピを食堂に伝え、パンが全面的に改良された。
そして萌ちゃんは、牛乳でバターを作り、卵とオリーブオイルと酢でマヨネーズを作り出し、焼肉サンドを開発した。
当然、タマゴサンド・野菜サンド・トマトサンド・ハンバーガーへと発展していく。

この功績が称えられ、萌ちゃんに勲章が贈られたことを見ても、どれだけ食糧事情が改善されたかわかるだろう。

萌ちゃんは更に、パスタを発明し、トマトクリームパスタやカルボナーラへと発展させる。
ブイヨンを作り、さらに煮込んでコンソメを作りだし、より複雑な味に広げていく。
コンソメがあればコーンスープも作れるし、シチューにも発展していく。

こうして、萌ちゃんは料理王の称号を獲得した。
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