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第一章

熱があるぞ

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一週間、毎日!俺って最強だぜ!”をやった。
マラソンも、大声出すのも体力のない萌ちゃんにはきついようだ。

「大丈夫か?」

「これくらい……」 ハアハア

「顔が赤いぞって、熱があるじゃねえか」

「だ、大丈夫……じゃないかもです」

「ゾネス教官、萌ちゃんは熱があるみたいなので休ませます」

「ああ、萌は料理王だからな。
ジン、部屋に連れて行って寝かせてやれ」

「ういっす」

「私が連れて行くから、あんたはマラソンを続けてなさい」

「私はジンに指示したんだぞ。
智代梨はマラソンを続けるように」

「くっ……余計なことを……」

「ほれ、おぶされ」

「えっ、大丈夫ですよ……」

「いいから、無理するな」

萌ちゃんは軽かった。
部屋に連れていき、着替えるように言って俺は食堂で氷を分けてもらう。
氷水でタオルを冷やして、おでこに乗せてやるのだ。

「す、すみません」

「体調の悪い時には、無理すんなよ。
食堂で洋ナシみたいなフルーツをもらってきたから、今剥いてやっからよ」

「だ、大丈夫ですよ」

「風邪の時は、水分をとったほうがいいんだよ、待ってろよ」

俺は洋ナシもどきを剥いて、萌ちゃんのところに戻った。

「ほれ、食え」

「ん、冷たくて美味しい……」

「突然、こんな所に連れて来られたけど、あのままだったら死んでたんだもんな」

「ですね。不思議な感じです」

「じゃ、しっかり寝ておけよ。俺は戻るから」

「あ、ありがとうございます」

「気にすんな、体調の悪いときはお互い様だから」


「萌に余計なちょっかいを出さないでよ」

昼食の時だった。

「だったら、お粥でも頼んで持っていったらどうだ」

「くっ……、今から頼もうとしてたのよ」

「それに、そんなに気になるなら、どうして熱があるって気付いてやれなかったんだ」

「おい、恭介、言い過ぎだ……」

「私だって、調子が悪そうなのは分かってたわよ……でも、自分のことで手いっぱいで……」

「いいから、萌ちゃんのところに行ってやれよ。お粥は頼んでおくから」

「……」


食事後、食堂のおばちゃんに頼んでおいたお粥を持っていく。
一応二人分だ。

トントン

「どうぞ」

「ほれ、お粥を作ってもらったぞ」

「ありがとうございます。
本当にすみません」

「気にすんなって言ったろ」

「えへっ、そうでした」

「だいぶ元気になったみたいだな」

「洋ナシを食べて寝てたら、スッキリしました。もう大丈夫です」

「智代梨は寝てるのか」

「心配かけちゃったから……」

「なあ、もっと俺たちを頼ってくれていいんだぞ」

「仁君は優しいんですね」

「そんなんじゃねえよ。
でも、この世界には4人しかいねえんだからよ」

「はい。そうします」

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