おっさんはただのおっさんだった

モモん

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第一章

エリスはモノじゃない

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 俺は当分の間、仕事にはいかずにエリスの傍にいることにした。
エリスが笑顔になるものを、何か考えてやらないと……
俺でも作れて、何か幸せになるようなもの。
さんざん考えてプリンを作ることにした。
牛はいないので、ヤギのミルクを代用する。
玉子は売ってるし、砂糖もある。

 作り方はよく覚えてないが、よーくかき混ぜながら温めればいいだろう……
それを湯せんで温めるんだったよな。
で、出来上がったのを冷やす。
見事にすがたってしまったが、とりあえずできた。

「何を作ったの?」

「まあ、食べてみてくれ」

「こ、これ、美味しい」

「やっと笑ったな」

「えっ」

「美味しいものを食べると、自然と笑顔になるだろ」

「おじさん……」

 向こうに戻れたら、スイーツの本を買って、いろいろと作ってやろう。
砂糖や生クリームも、いっぱい買ってきてやろう。


「ご主人様、オネエ様がお見えですが」

「ああ、来たか。じゃあ外で対応しよう」

 俺は玄関先でオネエと対峙した。

「エリスが来てるわよね」

「ああ」

「エリスは私のものよ」

「エリスはモノじゃないんだ」

「ともかく返してちょうだい」

「ダメだ。本人が出ていくと言わない限り、エリスはここにいる」

「……じゃあ、売ってあげる」

「金貨2000枚はどうしたんだ」

「そんなのもうないわよ」

「エリスを買おうとは思わない。
だが、仲間だったからな金貨20枚やろう」

「そんなんじゃ足りないわよ!
そうだ、グラビティーロッドをちょうだい。それでいいわ」

「あんなものどうするんだ」

「どいうでもいいでしょ」

「わかった。その代わりここへは二度と来るな

「わかってるわよ……」

 オネエは金貨20枚とグラビティーロッドをもって帰っていった。
オネエを見るのはこれが最後になるだろう。


「大丈夫。オネエはもう帰った。
ここへは二度と来させない」

「ごめんなさい。私のせいで……」

「いいさ、元々は俺とエリスのパーティーだったんだから」

 エリスはその日から歩く訓練を始めた。
最初はバランスを崩していたが、二日三日と続けるうちに何とかさまになってきた。
義足はベルトでとめてあるため、その部分が赤く腫れあがっていた。
俺は、マッサージをしながら赤く腫れた部分を冷やしてやる。

 俺たちは街へ出て、丈の長いスカートとブーツを買った。
金髪のエリスには黄色がよく似合う。

「これなら目立たないだろう」

「うん、ありがとうおじさん」

 俺たちはカフェでお茶を飲み、恋人同士のように他愛もない話をした。
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