スキル買います

モモん

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第七章

第85話 港町

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 レイミは宰相からつけられた補佐官と共に、海辺の領地であるマイリー領に来ていた。
 先行して派遣された文官も同行している。

「新しい首長は決まりそうですか?」

「今は、小地区毎に代表を選んでもらっています。選出が終わったら、その中から代表を決めてもたらのですが、税は本当に収穫の2割で良いのですか?」

「領主がいないんだから、国への上納が1割で、1割はこの町の運営費にすればいいわ。」

「それで、この町はどのように運営していけば良いのでしょうか?」

「基本的には、船を整備するから、それを使った輸送と漁業が中心になると思うわ。そのためには、もっと大型の船を受け入れられるように港を深くして、荷物や獲れた魚を凍らせて運搬する設備も必要よね。」

「……すみません、具体的なイメージができないのですが……」

「それならば、この町で一番大きな船を作れる工房に連れて行ってもらえませんか。」

「大きな船というと、ロッシ工房ですね。12m級の船を何隻も造ったと聞いています。」

 レイミは二人に案内されて海沿いの船工房を訪れた。

「なんか場違いなヤツがきやがったな。」

「新政府のモノですが、船を作っていただきたいと思いまして。」

「新政府ってのは、皇帝を倒したとかいう奴らか。そんなのが船を何に使うんだ?」

「ラッシングを含めて、各港まで物資を運ぶ予定です。」

「デカルトから来ましたレイミと言います。欲しい船は、マストやオールは必要ありませんが、沖まで出られる20m以上の船で、安定性が欲しいのでV型の船底のものです。」

「バカをいえ。そんな船何に使えるってんだよ!」

「動力は魔道具なんですよ。船体にはアルミで全体を覆いますし、弾力のある防水性の膜で覆いますから、舵付きの船体だけ作っていただければ良いのですが、如何でしょうか?」

「ふざけんな!船大工としてそんな中途半端なモンが造れるか!」

「では、こちらの工房で作れる最大の船を作ってください。マストとオールはなしでお願いします。」

「魔道具といったが、どんな風に走らせるつもりだ?」

「風を吹き出す魔道具を6基つけるつもりです。速度は時速50kmくらいですね。」

「バカを言え。そんな速度で走れるものか!」

「強風の追い風の時なら、帆走でもそれくらい出るハズですよ。」

「そりゃあ、突風で制御不能になった時だ!巡航速度じゃねえよ!」

「大丈夫ですよ。補強しますし、航行の時は障壁も展開しますから。」

「しかも平型でないと、港にもつけらんねえだろ。」

「港も深く掘って整備しますよ。」

「分かった、作らせてもらおう。期間は1ケ月だ。」

「結構です、お願いします。」

 レイミたちは海沿いに港をまわり、何軒かの船工房を訪ねたが概ね似たような内容だった。

 仕方なく、レイミは地面船型の穴を掘って、そこにステンレス製の竜骨をセットした。そこに肋骨のような肋材を組み込み、穴から出して50mmのパネルを張っていく。

「大きいですね。」

「竜骨が28mなので、全長は25mくらいですかね。」

 船尾には6基の噴射孔がセットされ、それは操舵室に配線される。
 船首にも、後退用の噴射孔2基が据え付けられる。
 船内には、浮力を得るための密閉室も作られ、いくつかの部屋も区画される。

 この船には一般的な舵がなく、操舵室のハンドルを回すとヒレのような形状の板がせりだし、そちら側の抵抗が大きくなる事で曲がるようになっている。

 最後にクモ糸で全体がコーティングされた。
 特に、接岸部は厚くコーティングがなされる。

 この状態でレイミは専用の桟橋を作って船を浮かべた。

「えっと、船乗りは雇わないんですか?」

「操船は私ひとりでできるから問題ないわ。バランスはよさそうね。出発するわよ。」

 ブオーッと噴射孔から音が出て船はゆっくりと進み始める。結界を起動しているため、座礁の心配もない。

 船はゆっくりと加速していく。
 時々船が振動するのは、岩礁とかにぶつかっているのだろう。

「うん。舵の動作も問題ないし、速度も時速70kmくらい出てるみたいね。これなら、漁で使ってもらえそうね。」

「こんな大きな船で漁をするんですか?」

「ええ。船で網を引っ張る漁よ。」

 レイミはこの船に冷蔵機能のついた生け簀と、後部には横に広げると30mになるクモ糸製の網を作って設置した。
 他にも、操舵室上部には2基のアイスランス発射器と2基のアイスショットを設置し、方位磁石や探査を使った魔道具のソナーを開発して設置した。
 船室には、仮眠室や休憩室、食堂とトイレにシャワー室も備え、サーチライト等の装備を満載した船である。
 当然、クリーンの魔道具も配備されている。
 
 こうして、レイミは10名の船員を募集して運用に入った。

「獲物を売ったお金は皆さんの賃金として配分してください。ただ、基本的には、全員が操船できるようになること。他の人に迷惑をかけるような人はクビにします。」

「俺たちはタダでこの船を使わせてもらえるって事でいいんですか?」

「そういう事です。でも、私が指示を出した時は従ってください。命令を無視した人はクビですからね。」

「ここに住んじまってもいいんですか?」

「いいわよ。ベッドは10台ありますからね。えっと、あなたが一番まともそうね。あなたを船長に任命します。お名前は?」

「あっ、ジャックです。」

「もう少し整備できたら、商会の事務所を設置するわ。そうしたら、獲物は全て商会で買い上げるわ。それまでは自由にやってちょうだい。」

「了解です。」

 この魔道船は4隻作られ、それぞれ違う港で操業を開始する。
 当面は従来通り市場に魚を卸すが、商会が動き出せば流れが変わってくる。
 
 レイミの構想では、新たに作った桟橋の周りには魚の加工場を作り、そこで干物や切り身にして帝都へ出荷するつもりなのだ。

「こんな構想なんだけど、どうかしらミハイルさん。」

「私は、魚っていうのはあまり食べた事がないのですが、この町の様子を見る限り需要はありそうですね。」

「魚だけじゃなくて、貝やカニやエビ。それに干した海藻も流通させたいのよね。」

「海藻?野菜みたいな感じで食べるんですか?」

「そういう食べ方もできるんだけど、干すと旨味が出てくるのよね。」

「そういうものなんですか。人と場所は確保しますから、あとはレイミ様が指示してください。」

「うふふっ、楽しみよね。あっ、カニ漁もやってみようかしら。」

「何ですかそれ?」

「大きめのカゴにエサを入れて沈めておくのよね。それには目印になるブイが必要よね。……クモ糸なら簡単に作れそうね。」

 レイミはクモ糸のブイを作り、カニ籠を作って試験してみる事にした。

「なるほど、ここから入ると出られなくなるんですか。面白いですね。」

「ブイの上にはレーミン商会って書いてあるから、持っていかれる事はないと思うんだけどね。」

「それで、ここにエサを吊るすんですね。エサは何でしょう?」

「死んだ魚でいいわ。1日おいて引き上げてみてください。」

「了解です。」

「あとは貝よね。」

「貝ですか。」

「こればかりは魔道具って訳にもいかないから人力よね。」

「では、人を集めますか。」

「そうね。小さい子供とか、お年寄りとかでもできる仕事があるから、そういう人も集めて欲しいのよね。」

「そうなると、宿泊施設とか食事とかも考えねばなりませんね。」

「それ含めて任せます。」

「承知しました。そういった全般を任せられる人材も探しましょう。」

 こうして魚介の採取態勢と共に町自体が整備されていった。


【あとがき】
 港町構想始動
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