スキル買います

モモん

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第九章

第141話 イリヤとユリヤ

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「レイミちゃん、バーデストという領地を知っているかしら?」

「バーデスト……うっ、申し訳ございません。知識にございません。」

「あらあら、まだそんな言葉遣いを続けているの。あなたは私の娘になったのだから、普通に話してくださらないかした。」

「ど、努力します。」

「バーデストというのは、今のガーランドでいえば一番北西にあたるのよ。つまり、うちと国境を接している領地になるわね。」

「ああ、その付近はあまり注意していませんでした。」

「その領地の中でも北側の村には、何人かワイルドキャットの女性が嫁になっているらしいのよ。」

「成人になって里を出ていった娘たちですね。」

「それでね。南の里にそこの村から救援の依頼が来たらしいわ。」

「救援?何かあったんですか?」

「領主が力ずくで徴税しているらしいのよ。」

「あっ……」

「そうよ。レイミちゃんが金庫から金貨を持ってきちゃったから、国全体から臨時徴収してる訳ね。責任を感じるでしょ。」

「私は悪くないですよ。悪いのは向こうの皇帝です。」

「まあ、そこはどうでもいいとして、バーデスト領を手に入れれば、ラッシングとの陸路も確保できるし、広大な小麦畑も手に入るのよ。それに、地竜も少し生息しているみたいだから丁度いいのよね。」

「その村を支援するついでに、領地を乗っ取れと?」

「人聞きの悪い事を言わないでよ。あくまでも農民の支援よ。」

「はいはい。でも、ワイルドキャットの血をひいている人がいるんなら、自分たちだけでも抵抗できるんじゃないですか?」

「そこはアレみたいよ。」

「ああ、やっぱりアレですか。」

「その、アレな若者が二人南の里に来ているから、スキルを抜いて戦力にできるわよね。」

「まあ、可能ですね。」

「やり方は任せるから、ともかくバーデスト領を手に入れるのよ。」

 アンヘラという女性は、戦略家としての才能に特化していた。
 まあ、レイミの目から見ても、この町は色々な意味で魅力的といえる。 

「おお嬢ちゃん、忙しいところ悪いな。」

「いえ。その子たちがバーデスト領から来たという二人ですね。」

「おお。イリヤとユリヤ。双子なんだそうだ。」

「へえ、男の子と女の子の双子なんて珍しいですね。」

「男の子とか言うんじゃねえよ。お前、俺よりも年下だろ!」

「ああそっか。ケモノビトだから、実際は30才くらいなのかな?」

「そうだ。お前みたいなガキじゃねえんだよ。」

「やめなさいよイリヤ。相手に失礼よ。レイミ様ですよね。弟が失礼しました。バーデスト領からまいりましたユリヤと申します。」

「レイミ・ベルナールと申します。えっと里長、暴走の件は話したのかしら?」

「ああ、説明してある。イリヤが小さいころ無意識に獣化して暴走したそうじゃ。ユリヤの方は獣化した事はないと言っていた。」

「えっと、ああイリヤ君の方は確かにバーサク持ちね。ユリヤちゃんの方はそのままで大丈夫ね。じゃ、ユリヤちゃんはこれに着替えてきてちょうだい。」

「これは?」

「獣になっても身につけていられる下着よ。ちゃんとシッポの穴も空いてて、伸縮性もバッチリだから安心していいわ。」

 ユリヤは里長に案内されて部屋から出ていった。

 その間にレイミはイリヤの”バーサク”を魔石に移しとる。

「これで獣化しても大丈夫よ。半獣化できればそれだけでパワーアップするから、子供だって大人並みのチカラが出せるようになるわ。」

「だから、子供じゃねえって言ってるだろ!」

「残念ね。30年生きてきたと言っても、やっと毛が生えたくらいでしょ。やっぱり子供なのよね。」

「くっ……」

「ほら、あなたもこれを着て。」

 イリヤはレイミに背を向けて裸になり、下着を身につけた。
 ユリヤも下着姿で戻ってくる。

「バーデスト領までは……100kmくらいね。時速50kmなら2時間か。」

「おいおい、いきなり100km走らせるのは酷じゃろう。」

「大丈夫よ。このベルトを腰につけてちょうだい。このボタンを押すと、身体強化と障壁。それから身体を軽くするスキルが発動するわ。獣化は初めてなんだから、慣れるために走っていきましょう。」

「それって、地竜のと同じやつか。」

「ここの地竜用は身体強化だけだけど、これはフルスペックの魔道具よ。」

「魔道具?」

「そう。超人になれる魔道具なのよ。無くさないでね。」

「はい!」

「じゃあ、獣化してみましょうか。やってみて。」

 ユリヤは髪の色と同じ鮮やかなオレンジの山猫に。
 イリヤは青灰色の山猫に変身した。

「おい!嬢ちゃん、何だその姿は!」

「えっ、ああ、妖狐っていう伝説上の生き物よ。」

「ヨーコ……いや、何で嬢ちゃんが獣化できるんじゃ!」

「ヒ・ミ・ツよ。じゃあ、そのボタンを押して。」

「はい!」
「…………」

 イリヤの方は色々と不服そうだが、レイミに続いて家を出た。

「最初は四つ足で走る感覚をつかむ為にゆっくり走るわよ。ついてきて。」

 妖狐は軽く地を蹴り3mくらい跳んだ。

「す、すげえ!これが獣化かよ。」

「普段使ってない筋肉を使うから、明日は筋肉痛で動けなくなるわよ。」

 3匹の獣は徐々に速度をあげていく。

「こ、こんな事ができるなんて……」

「うふふっ、気持ちいいでしょ。そろそろ慣れてきたかしら?」

「ああ、大丈夫だ!」

「はい!」

「じゃあ、ここからは道を離れて、村へ直線で向かうわよ。」

「えっ?」

 レイミは方向を少し変えて、森の中へ入っていき、二人もそれに続いた。

「うわっ!」

 バキッと音をたててイリヤの身体が太い枝をぶち折って進む。

「障壁が張ってあるから、大木とかでもへし折れるけど、スピードが落ちるから注意してね。」

 3匹の獣は、木の幹や枝を蹴り、森を立体的に駆け抜けていく。

 そして村の外れに3人は立っていた。
 人型に戻ってハアハアと肩で息をしている。

「くそお、行きは3日もかかったのに……」

「はいはい。じゃあ、靴とウェアよ。こんな恰好じゃ、驚かれてしまうわ。」

 レイミはいつものブラウスとタイトスカートだが、二人は下着姿だ。

「これも伸びる素材でできているんですね。」

「そうよ。レーミュンていうスキルで作った布を使ったウェアなの。伸縮性の高いスパッツとノースリーブのシャツよ。」

「でも、これってどこから出したんですか?」

「収納っていうスキルがあるのよ。空間を広げて倉庫を作っている感じかな。」

 レイミは収納から長い竹竿を取り出して見せた。

「くっ、もう、何を見せられても驚かねえぞ!」

「あはは、別にイリヤを驚かせようとかしてないから。」

「じゃ、家に案内します。」

 レイミは1軒のそれほど大きくない家に案内された。

「お母さん、山猫国から来ていただいたの、レイミさんよ。」

「おやおや、随分早かったんだねえ。」

「へへん、驚くなよ。山猫国から2時間で走ってきたんだ!」

「えっ?」

 レイミは挨拶を交わして経過を説明した。
 そのうえで、ケモノビトの住民を集めたうえでシルフィを呼び出し、対象者のバーサクを削除した。

「はあ、やっぱりヒト族と結婚なんてするもんじゃないわね。」

「何でですか?」

「だって、60年で死んじゃったのよ。私らはその後でどれだけ生きていくと思っているのかしら。」

「ああ、300才まで生きたら、240年ですか。そういえば知り合いの夫婦は、女性が20代後半くらいで、男性……これは国王なんですけど、70才くらいなんですよね。」

「それ、もう悲劇しか生まないわよ。男なら、何人も奥さんをもらえばいいけど、女は子供を抱えてるからそういう訳にもいかないじゃない。」


【あとがき】
 ワイルドキャット族女の苦悩。
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