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第十章
第166話 ルンマーの服飾工房
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「ナンシーさん、とりあえず首都で5か所くらいで説明会をセットしてもらえますか。」
「対象は貧しくて仕事に就いていない人と言う事でいいんですか?」
「ええ、それで結構です。あっ、仕事的には女性限定でお願いします。」
「人数はどれくらいですか?」
「何人でもいいけど、スキルの用意があるから100名以内でお願いします。」
「スキルですか?」
「ええ、クモ糸というスキルを使って、シャツやパンツを作ってもらいます。材料費はかかりませんし、ライトの魔道具も提供しますので、自分の好きな時間働く事ができるんですよ。」
「そのスキルって無償で提供できるんですか?」
「ええ、そうよ。」
「そうなると、スキル目当ての者が大挙するのではないでしょうか?」
「まあ、その辺は内緒でいきましょう。」
そうなると、クモ糸の吹き付けに使うトルソーの準備も必要であり、レイミは100体のトルソーを職人に指示して作成していった。
「こんなもの、何に使うんですか?」
木工職人も依頼は受けたものの、用途が分からないために指示されたとおりに作るしかなく、ブツブツと文句をいいながら図面通りに気を削っていった。
最初の説明会場に集まったのは10人の女性たちだった。
皆、一目で分かる粗末な服を着ており、乳飲み子を抱いた母親もいる。
全員を会議室の長椅子に座らせてナンシーが説明を始める。
「皆さんには今後服やパンツを作ってもらいます。」
「えっ、でもそんな技術はありませんよ。」
「大丈夫です。とりあえず作った服は、出来が悪くても最低価格の銅貨3枚で産業局が買い取ります。」
「でも、銅貨3枚では……」
「1枚で銅貨3枚ですので、5枚作れば銀貨1枚と銅貨5枚になります。」
「そんなに作れるんですか?」
「では見本をみてもらいましょう。」
ここでレイミが10台のトルソーにクモ糸を吹きかけてシャツに仕上げていく。
「その人型から脱がせたシャツは、サンプルとしてお持ち帰りください。」
「こ、こんな柔らかな布は……」
「慣れるまで、薄く均一の糸は出せませんから、買い取りは安いですけど、慣れてくれば品質が安定すれば倍の価格で買取します。ただ、自分で売りさばくのは禁止します。これからスキルを付与しますけど、違反したらスキルは没収します。収入もなくなりますから注意してくださいね。」
初日は、壁にセットした金型にクモ糸を吹き付けて布を作るだけの作業だ。
「子供さんの面倒をみる担当者もいますから、明日から毎日この工房に来てください。稼げるようになるまで、お昼ご飯も無償で提供しますから安心してください。」
初日に作られたクモ糸の布は、兵士のタオルとして使われ、不出来な布も武器の整備用に回されたりして、無駄はない。
10人の女性は、初日分の手当として銅貨5枚を受け取って帰っていった。
銅貨5枚あれば、トーライモが2つか3つ買える。
2日目からは、集合した時点でクリーンの魔道具で指先を清潔に保ち、身なりを整えてから仕事を始める。
そして、昼にはシチューとパンが提供された。
「何で、こんなに優しくしてくれるんですか?」
「これからのルンマー帝国は、全員が飢えることのない国造りを目指します。貴族に搾取される事もないですし、安心して生活できるように頑張りましょう。」
10人の職人は、全員が涙を流して新しい皇帝の政治に感謝した。
1週間もすると、全員がシャツを形にできるようになってくる。
ゆっくりとした作業でも、シャツ3枚くらいは形にできる。
それが買い取られ、皆が銀貨1枚程度を手にして帰っていった。
少し離れた場所での説明会でも15人程度の女性が集まり、服飾工房としてシャツの生産が軌道に乗ってくる。
こうなると面白くないのは貴族たちである。
スキルを持った女性を引き抜こうとしたり、次の説明会に手下の女性を潜り込ませるような工作がみられたが、そういう女性は手を見れば分かる。
ボロを着ていても、あっという間に見抜かれて対象から除外されてしまう。
そしてついには動き出した工房に乗り込んでくる貴族もあらわれる。
「この地区の服飾工房は我が傘下に入ってもらう事になっておる。勝手な事をされては困るな。」
「あら、陛下の指示には、そのような注意はありませんでしたわよ。」
「現陛下は、港町の出身だからな。まだ知らぬのであろう。」
「では、その規則は私の権限で廃止にしましょう。」
「なにぃ!」
「新産業に関する全権を陛下から与えられております。それを無視されるというのであれば、陛下に直訴するだけですわ。」
「ふざけるな!おい、こいつを捕えろ!手に余るようなら殺しても構わぬ!」
「あらあら、20名程度の兵士で私をどうするおつもりでしょう?」
レイミは一瞬で兵士たちを拘束し、ナンシーに命じて城の衛兵を呼んでもらった。
「みなさん、クモ糸のスキルはこういう使い方もできますからね。もし、乱暴を受けたら、相手が貴族であっても抵抗していいですからね。」
こうして、服飾工房は広がっていった。
【あとがき】
産業の展開が始まる。
「対象は貧しくて仕事に就いていない人と言う事でいいんですか?」
「ええ、それで結構です。あっ、仕事的には女性限定でお願いします。」
「人数はどれくらいですか?」
「何人でもいいけど、スキルの用意があるから100名以内でお願いします。」
「スキルですか?」
「ええ、クモ糸というスキルを使って、シャツやパンツを作ってもらいます。材料費はかかりませんし、ライトの魔道具も提供しますので、自分の好きな時間働く事ができるんですよ。」
「そのスキルって無償で提供できるんですか?」
「ええ、そうよ。」
「そうなると、スキル目当ての者が大挙するのではないでしょうか?」
「まあ、その辺は内緒でいきましょう。」
そうなると、クモ糸の吹き付けに使うトルソーの準備も必要であり、レイミは100体のトルソーを職人に指示して作成していった。
「こんなもの、何に使うんですか?」
木工職人も依頼は受けたものの、用途が分からないために指示されたとおりに作るしかなく、ブツブツと文句をいいながら図面通りに気を削っていった。
最初の説明会場に集まったのは10人の女性たちだった。
皆、一目で分かる粗末な服を着ており、乳飲み子を抱いた母親もいる。
全員を会議室の長椅子に座らせてナンシーが説明を始める。
「皆さんには今後服やパンツを作ってもらいます。」
「えっ、でもそんな技術はありませんよ。」
「大丈夫です。とりあえず作った服は、出来が悪くても最低価格の銅貨3枚で産業局が買い取ります。」
「でも、銅貨3枚では……」
「1枚で銅貨3枚ですので、5枚作れば銀貨1枚と銅貨5枚になります。」
「そんなに作れるんですか?」
「では見本をみてもらいましょう。」
ここでレイミが10台のトルソーにクモ糸を吹きかけてシャツに仕上げていく。
「その人型から脱がせたシャツは、サンプルとしてお持ち帰りください。」
「こ、こんな柔らかな布は……」
「慣れるまで、薄く均一の糸は出せませんから、買い取りは安いですけど、慣れてくれば品質が安定すれば倍の価格で買取します。ただ、自分で売りさばくのは禁止します。これからスキルを付与しますけど、違反したらスキルは没収します。収入もなくなりますから注意してくださいね。」
初日は、壁にセットした金型にクモ糸を吹き付けて布を作るだけの作業だ。
「子供さんの面倒をみる担当者もいますから、明日から毎日この工房に来てください。稼げるようになるまで、お昼ご飯も無償で提供しますから安心してください。」
初日に作られたクモ糸の布は、兵士のタオルとして使われ、不出来な布も武器の整備用に回されたりして、無駄はない。
10人の女性は、初日分の手当として銅貨5枚を受け取って帰っていった。
銅貨5枚あれば、トーライモが2つか3つ買える。
2日目からは、集合した時点でクリーンの魔道具で指先を清潔に保ち、身なりを整えてから仕事を始める。
そして、昼にはシチューとパンが提供された。
「何で、こんなに優しくしてくれるんですか?」
「これからのルンマー帝国は、全員が飢えることのない国造りを目指します。貴族に搾取される事もないですし、安心して生活できるように頑張りましょう。」
10人の職人は、全員が涙を流して新しい皇帝の政治に感謝した。
1週間もすると、全員がシャツを形にできるようになってくる。
ゆっくりとした作業でも、シャツ3枚くらいは形にできる。
それが買い取られ、皆が銀貨1枚程度を手にして帰っていった。
少し離れた場所での説明会でも15人程度の女性が集まり、服飾工房としてシャツの生産が軌道に乗ってくる。
こうなると面白くないのは貴族たちである。
スキルを持った女性を引き抜こうとしたり、次の説明会に手下の女性を潜り込ませるような工作がみられたが、そういう女性は手を見れば分かる。
ボロを着ていても、あっという間に見抜かれて対象から除外されてしまう。
そしてついには動き出した工房に乗り込んでくる貴族もあらわれる。
「この地区の服飾工房は我が傘下に入ってもらう事になっておる。勝手な事をされては困るな。」
「あら、陛下の指示には、そのような注意はありませんでしたわよ。」
「現陛下は、港町の出身だからな。まだ知らぬのであろう。」
「では、その規則は私の権限で廃止にしましょう。」
「なにぃ!」
「新産業に関する全権を陛下から与えられております。それを無視されるというのであれば、陛下に直訴するだけですわ。」
「ふざけるな!おい、こいつを捕えろ!手に余るようなら殺しても構わぬ!」
「あらあら、20名程度の兵士で私をどうするおつもりでしょう?」
レイミは一瞬で兵士たちを拘束し、ナンシーに命じて城の衛兵を呼んでもらった。
「みなさん、クモ糸のスキルはこういう使い方もできますからね。もし、乱暴を受けたら、相手が貴族であっても抵抗していいですからね。」
こうして、服飾工房は広がっていった。
【あとがき】
産業の展開が始まる。
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