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第Ⅰ章 修行
キラーベアー
しおりを挟む「ああ、何ということじゃ。これまでにも幾度か腹に穴を開けて死んでいる魔物を見たことがある。
魔物使いの間では、長い角を持った未知の魔物がいると噂されていたのじゃが、まさかブルーファルコンの仕業じゃったとは……」
「でも、龍かもしれないですよね」
「そうかもしれんが、まあ龍ならまだ合点がいく。だが、ピー助は鳥だぞ。
鳥が自分よりも遥かに大きな獣型の魔物を襲うなど、想像の外側じゃよ。
じゃが、あのやり方だとピー助の方にも大きな負担がありそうじゃが大丈夫じゃろうか」
「ピー助、チョロリー」二匹を呼んで調べたけど、二匹とも血の跡すらついていません。
「何か、体を覆うような特技があるのかもしれんのう……二匹とも」
「チョロリは面白がって真似してるだけみたいです。そんな感じが伝わってきます」
「ともかく、人間だけには仕掛けないように注意しといてくれ」
「ピー助、チョロリ、パーンを人間にやったらダメだからね」
ピー、ピュリーと返事が返ってきます。
最初の村に着くまで二匹の競争は続くのでした。
特に酷かったのは村が見えてきたあたりの森です。
多分、二匹の間でこんな会話があったんだと思います。
『見ろよ、チョロリ。イノシシ魔物がいっぱいいるぞ』
『うん。何匹倒すか競争だね』
『いや、それじゃあ面白くねえ。
一度の攻撃で何匹倒せるか勝負だ』
『うん、了解!』
パンパンパンパンパン!
続いて、パンパンパンパンパン!
パンパンパンパンパンパン!パンパンパンパンパンパン!
下はブヒー、ブギャーと阿鼻叫喚です。
50匹くらいでしょうか。それが一分程度で撲滅されてしまいました。
ミーミーもプルプルしています。
ミーと低い声でうなっています。二匹だけで楽しんでるんじゃないわよとでも言うように。
「まあ、せっかくの肉だ、後で村人に言って取りにこさせよう」
こうして村に到着しました。
村長の家に招かれたので、先生が困りごとはないか尋ねると、イノシシ型の魔物イノシンが大量発生して困っているとのことでした。
先生も困り顔で答えます。
「あー、50匹ほど来る途中で退治してきた。
死骸は放置してあるので、好きにしていいぞ。また移動中に見つけたら狩っておくからな」
「あっ、ありがとうございます。流石は宮廷魔物使いの先生ですな」
お礼だと、乾燥肉と干しキノコをいただきました。
肉を取りに行った村人は困惑します。
死骸は確かにあり、イノシンの足跡はあるのですが、獣や人の足跡がありません。
しかも、すべて腹への一撃です。
どうやったんだべと口々にしますが真相が明かされることはありませんでした。
「やっぱり、人の役に立てるのは嬉しいものですね……」
「うむ、そ、そうだな。帰りに、あの村に立ち寄るのはやめよう。
あの死に方を見たやつらが、どうやったのか聞いてくる。絶対にだ……」
「そうですわね……」
ご褒美の乾燥肉をもらえて、ピー助達は大満足です。
ところが、次の村でもイノシンで困っていると訴えてきました。
まあ、群れは発見できなかったが、適当に狩っておいたからと濁しておきます。
その次の村ではクマが出たと言われました。
キラーベアーという獰猛な種類だそうです。
家畜のヒツジ数頭が犠牲になっており、見過ごしておくと村人が危険だと判断した先生はピー助とチョロリ、それとセイレーンとミーミーを偵察に出すよう指示してきます。
ミーミーはストレス発散に出したみたいですけど。
「いいこと、大きな獣を見つけたら帰ってくること。
決して勝手に攻撃しないこと。分かったわね」
ミー、ピー、ピュルーと返事だけはいいんです。
少ししてピー助が戻ってきました。見つけたようです。
「よし、シーリーンとヴォルフは残れ。万一こっちに来るといかんからな」
「はい」
「よし、シーリア、ユニコに乗れ、いくぞ」
200mほど走るとクマがいました。二本足で立ち上がっており、2mを優に超えています。
「せ、先生、あのクマ、フラフラしてませんか?」
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