稀代の魔物使い

モモん

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第Ⅱ章 二人旅

連絡便構想

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この町でも領主様のスピーチがあり、町民にお酒が振舞われました。

私たちも一緒になってワインをいただいています。

「あっ、レオン君だ!」ギルドのフランさんです。

「んもう、二人して急にいなくなるから、寂しくて死んじゃうところだったんですよ」

「フラン、お二人は国のお呼び出しで活躍され、名誉男爵になられたんだ。
そんな気安く話しかけるんじゃない」

「えっ、貴族になったんですか!」

「いえ、貴族といっても肩書だけですよ。私たちはただの魔物使いで変わりません」

「だって、貴族になったら、王都住まいですよね。もう会えないじゃないですか」

「まあ、時々は顔を出しますよ」

「そんなの、寂しいじゃないですか。ほら、レオン君も寂しいって」

「フラン。そんな駄々っ子みたいなことを言ってないで……」

「ナタリーは平気なんですか。あなただってレオンのために乳を手配したり、日焼けの薬を調達したりしてたじゃないですか」

「私は、お二人の執事を仰せつかった。まあ、フランとも会えなくなるのは寂しいが、仕事だから許してくれ」

「な、何であなたのような見習いがお二人の執事を……、そうだ!私のほうがお二人に相応しいと思います。
魔物使いであり、土系の魔法使いでもあります。ギルドで接客を学びましたのでお客様の対応だって自信あります」

「ま、待てフラン。割り込みは許さんぞ」

「実力優先です。王都への緊急連絡で使っていただいた実績もありますので、信用もあります」

「えっ、フランさん。もしかして鳥系の魔物使いなの?」

「はい。シーリアさんのブルーファルコンほどレアじゃありませんけど、ホワイトファルコン3羽が私の友達です」

「ホワイトファルコンなんて、攻撃力なくて速いだけじゃないの。駄目よ、却下です」

「ちょっと待って。その3羽って全部王都まで飛ばせる?」

「えっ、ええ。大丈夫ですけど」

「それって、あなたが王都にいて、町へ飛ばすこともできるよね」

「ええ、場所さえ覚えさせておけば大丈夫です」

「お姉ちゃん、リントの領主様が王都への連絡用に鳥の使い手を探しているの」

「えっ、ハンス様が」

「トランガの町でも、先生が直接王都へ行ったくらいだから、急ぎの連絡手段は欲しいはずだよ。
しかも3羽いるんだから、シャイリアにも来させられる。
もし、調子の悪い子がいたら、ピー助にフォローさせればいいよね」

「天気の悪い日は中止にしてもらえばいいわね。
うん、名誉男爵として私たちが王都に承諾させれば、信用問題もクリアできるし、費用も国の負担にできるわね。
早速、モンチ様に打診してみましょう」

「うん。フランさんはギルドやめても平気なの?」

「ちょ、ちょっと待ってください。私の執事は……」

「大丈夫よ。二人とも働いてもらうわ」

「私には、家族もいませんし、ギルドもお手伝いみたいなものですからいつでも大丈夫です!」

「できれば、明日いっぱいで仕事を整理して明後日には出発したいわ。できる?」

「はい!」



その夜、領主様に定時連絡便のことを相談すると、快諾されました。

構想としては、朝一番で王都からの連絡を持たせたファルコンを飛ばし、8時頃にはシャイリアの領主邸に到着。
そのまま4時間ほど待機させて、昼一番でこちらからの通信文を持たせたファルコンを出発させるというものです。
開封は信頼できる者が行い、宛先の個所へ回付されます。

「こちらとしては、願ってもないことです。多くの場合、事件は夜起こりますから、その時は朝一番で折り返してもらえますからね。
それにしても、貴族になって最初の仕事が町に聖角灯を点すことで、翌日には王都と町の定時連絡構想ですか。
全ての町は、お二人に救っていただきましたし、本当に国中からの尊敬を集める貴族の誕生ですね」

「やめてください。そんな事を言われると、また私の結婚が……遠くへ……」

「あっはっは、いや、失礼。ジャルク様の一件はこの町にも伝わっていますよ。
率直に申し上げて、シーリーン様に言い寄れる男などいません。
忠義心のある男なら、絶対に言い出せませんし、ロクでもないない男が声をかけようものなら周りが黙っていませんよ。
それに……」

「いわないでください。分かっていますから……それ以上は……
せめて一縷の夢だけは……見ていたいんです」
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