稀代の魔物使い

モモん

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第Ⅲ章 アルトハイン

コメとソイソース

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「なあ、お前はなんでこんなに色々と作れるんだ」

「美味しいって喜んでもらえると、幸せな気持ちになれるんです。
でも、私だけのアイデアではなくて、うちのメイドたちがいろいろと提案してくれるんですよ」

「メイドが?」

「はい、茹でたジャガイモをつぶしたら、触感が変わって面白いとか、子供のころにかじった木が甘じょっぱくて変わった味がしたとか。
次の料理がその木を煮詰めて作ったソイソースを使ってます。
イノシンの生姜焼き・ソイソース仕立てです。
それと、メイドが麦とは違った穀物が湿地に生えているというので、それを炊いてみました。
ライスと生姜焼きの組み合わせは絶品だと思います」

「「「……!!」」」

「あら、お気に召しませんでしたか?」

「うめー!」 「ぐおー!」 「なんじゃこりゃ!」

「おい、シーリア。俺も初めて喰ったが、なんだこれは!」

「ライスとイノシンの生姜焼き・ソイソース仕立てですが……」

「くー、明日から毎日出してくれ」

「リア、私もよ」

「もう、ライスがありません。今年の分は秋に収穫できますけど……」

「農林局長!なんでこんなものが世に出てこないんだ!」

「いや、私も初めて口にしました」

「今回お出ししたのは、麦が獲れなかった時のために、非常食として蓄えていたものを買い取りました。
麦よりも硬くて、粉にするのも手間がかかるので、普段は食べないで捨ててしまうものらしいですよ」

「こんなに柔らかくてうまいではないか!」

「この形にするまで、結構手間がかかるんです。
試行錯誤して、やっとこの形にできました」

「で、この秋には大量に収穫できるんだな」

「ええ、我が家で一年間食べられるくらいですけど」

「「「えっ?」」」

「だって、こんなに美味しくなるなんて思ってなかったですから。
でも、その辺の湿地に生えてきますから、全部刈り取って来年分にすればよろしいのでは?」

「ぐ、食せるのは来年の秋か……」

「この際だ、麦飯でもいい。ソイソースだ!こっちはあるんだろうな」

「ソイという木の皮を使うんですが、結構珍しい木なんです。
この辺りのは全部うちに植え替えしましたから、他を探さないと……」

「農林局長!土木局長!総員でソイの木を探せ!」

「おい、その木を俺にも教えろ。それとライスの方もだ」

「どうせすぐには帰れないんですから、ゆっくり教えてあげますよ。
それに、水の入った田を作るのに、たぶん水牛は最適だと思います。
アルトハイン王国は平地で水も多いと聞いていますから、数年でライスが主流になるのではないでしょうか」

「おまえ、それを見越してこの場に出したのか」

「イノシンとソイの木は、我が国の方が適しているでしょう。
ライスはアルトハイン王国。得意なものを発展させて、交易をすればいいんです。
王に提案して、イノシンの家畜化を始めたところですが、数年で出荷可能なところまでもっていくつもりです」
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