稀代の魔物使い

モモん

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第Ⅳ章 ワイバーンの故郷

戦(いくさ)

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お城の正面に、5人の侍女をひきつれた女性が待っていました。
金髪でかたにかかる髪を左右で結んでいます。
白いロングドレスが風でゆれています。
いつもの冒険者風の服装である私とは比べようもありません。

「ゼン、久しいな」

「これは、ラン王女。
お出迎えありがとうございます」

「うむ。
で、その女はなんじゃ」

「シュトーリア王国のシーリア・アートランド子爵にございます。
今回、彼女の方でも用があるというので同行させました」

「シーリア・アートランドでございます」

「ふん、子爵にしてはみすぼらしいのう」

「子爵である前に、一介の魔物使いでございますので、服装についてはご容赦を」

「魔物使いとな。
ふむ。
その3匹が従魔か。
白い猫は抱き心地がよさそうじゃの。
わらわに献上せよ」

「お戯れを。
大切な仲間ですのでご容赦くださいませ」

「なにっ。
わらわの指示に逆らうと申すか!」

「まあまあ。
それよりも要件の方を……」

「はい。
数か月前のことです。
我が国の山中で、一匹のワイバーンが息を引き取りました」

「なに!」

「そのワイバーンと一緒にいたであろう人物も遺体となっており、こちらが遺品になります。
ご家族にでもお返しできればと参上いたしました」

「ふん。わざわざご苦労なことだが、その必要はない」

「えっ?」

「山越えの訓練中にワイバーンと共に行方をくらました男の名は、カイジ・シュータイ。
一族はすべて捕らえられ、死罪となった。
よって、身寄りはおらん」

「そんな……」

「当然であろう。
ワイバーンは貴重な戦力故に、それを奪って逃走するなど言語道断。
見せしめのために死罪にしてやったわ」

「では、無駄だったと……」

「無駄ではないぞ。
ワイバーン共々死んだことが確認できたのでな。
しかもノコノコやってきたということは、戦のための訓練が知られていないということだ」

「戦?」

「何のために山越えの訓練などしていると思ったのだ」

「まさか、シュトーリアに……」

「シュトーリアだけではないぞ。
ダイバーンやメリアも同様に攻め落としてくれるわ」

「そんな……」

「ラン王女!
それは本当ですか!」

「まあ、アルトハインは同盟国だ。
その分、シュトーリア攻めには力を発揮してもらうぞ」

「冗談じゃない!
戦になんぞ手を貸すはずがないだろう!」

「ここまで話を聞いた以上、断れば帰さぬぞ」
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