稀代の魔物使い

モモん

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第Ⅴ章 北からの来訪者

同じ人間だった

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シーリアと魔王ルシフェルとは何度も打合せを重ね、廃墟となったアカザを作り変えていった。
城壁を広げ、町の内部にコロシアム風闘技場を5個建設した。

『おい、これが土魔法だというのか……』

『はい。土魔法を磨いていったら、できるようになりました』

『人間の……というか、そのネコの尺度はおかしい。
空を跳ぶし、ブレスを吐くネコなんぞ、魔族の世界にもいないぞ』

『でも、ルシフェル様も……同じくらい』

『俺は魔族の王だからな。
その俺にしたって、ここまで大規模な土魔法は無理だ!
このネコは、俺の上をいっていることになる』

『大丈夫です。
ミーちゃんは競技に出ませんから』

『……当たり前だ。
こんなのが競技に出て優勝を総なめにしてみろ。魔族に反乱が起こるぞ』

『大袈裟ですよ』

『大袈裟じゃない!
だが、俺もこれまでに何度かフォレストキャットをめにしてきたが、こんな奴はいなかったぞ』

『ピー助とチョロリとミーちゃんで、切磋琢磨したの』

『そうだ。ほかの2匹も異常だ。
普通の龍は一種類のブレスしか使わないし、鷹だって肉弾戦は不得手だ。
飛ぶ速度も異常だし、高速で回転して、岩に穴を開けるなど龍にも鷹にもできることじゃない』

『頑張った?』

『頑張りすぎだ!』

『3匹と私とで、生きてきた……の。頑張ることしかできなかった……』

『そ、そうなのか。
だが、お前は王の娘なのだろう』

『それは、最近の話。本当のお父さんは顔も知らないし、お母さんも小さいときに死んじゃったから』

『そ、そうなのか。
だが、人間社会の中にいれば、生きることは難しくないだろう』

『5年前まで、三匹と私だけで森の中で暮らしてたの』

『お前……、魔族よりも過酷な人生を送ってきたんだな』

『魔王さまは、どんな子供でしたの?』

『魔族の男は、子供を作るだけだ。
母親は一人でというか、母親のコロニーで子供たちを育てる。
だから、俺も父親を知らん』

『うっ、可哀そう……』

『お前にいわれたくはないわ!
5才から15才までは専用の施設で学び、体を鍛える。
成人してからは、力と能力がすべてだ!』

『魔族って、何歳まで生きるんですか?』

『魔族といっても、ヒトと変わりはない。
老化を魔力で抑えているが、まあ300年前後だな』

『えっ、魔族って人間なんですか!』

『俺たちを何だと思ってたんだ。
見ればわかるだろう、同じ人間だ』

『記録にはそんなこと書いてなかったです……
知らなかった……』
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