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第一章

もう一人の勇者

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二回戦は西の国だった。
見覚えのあるやつもいる。
戦士系3人に補助兼回復役一人。

俺は高速移動を追加して問題なく叩き伏せる。

三回戦は南の国戦で、こらも勝ち進む。


会場内にアナウンスが響き渡る。

【さあ、武道大会も、残り1試合を残すのみとなりました。
連覇を狙う東国と、威信をかける中央国。
勇者を擁する中央国は何としても負けられない。
おーっと、ここで最新情報が入ってまいりました。
東国のセナン選手も中央国が召喚した勇者だった!
だが、スキルを持たないために国外追放にされた!
そのため、新たに召還を行って現勇者 有等 生多ユウトウセイタ が存在する。
現オッズは9:1で中央国有利とみている。
さあ、勇者対勇者。勝つのはどっちだ!】

「おっ、オッズは9:1だってさ」

「これまで勝った金貨1万枚賭けたのに、それでも圧倒的に向こうが有利とみられているんですね」

ちなみに、金貨一枚は約5万円の価値がある。

「こっちにとっては有難いことだよ」

「おい、セナンというのはお前か?」

「ああ、そうだが」

「俺は勇者セイタだ。
俺は、女をいたぶるのは好きじゃない。
次の試合は差しでやろうぜ」

「俺は構わんが、運営の方は大丈夫なのか?」

「なあに。これまでのお前のやりかたをうちも実行する。
補助魔法をかけたら3人は棄権させる。
そっちも、これまでのやり方を続ければいいだけだ」

「承知した」

「スキルを持たないお前と、完璧な装備に万全のスキル。
棄権するなら今のうちだぞ」

「ご親切にどうも」

「じゃあな」

「ああ」


「向こうは、本当に3人棄権するんでしょうか」

「まあ、向こうが棄権するまで倍々を繰り返してくれればいい。
俺はその間に身体強化と高速移動を重ね掛けするからな」

「それって、人間の限界を超えちゃいませんか?」

「そこまでの強化はしたことがないからな。
まあ、大丈夫だろう」



こうして、俺たちは試合会場で対峙した。

【さあ、いよいよ本番です。
勝つのはどちらか。
現勇者対元勇者の戦いが始まります。
それでは、試合開始です】

「双方、礼……
試合開始!」

少し間をおいて、勇者セイタは三人に合図して棄権させた。
俺も、ニールに合図する。

【おーっと、双方とも勇者以外は棄権した!
これは、勇者だけで勝負だぁ!】

「いくぞ!」

「ああ」

勇者セイタの姿が会場からフッと消えた。

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