魔人R

モモん

文字の大きさ
20 / 24
第二章

第20話 アークドラゴン

しおりを挟む
 ノエル父娘との再開は嬉しかったが、俺はサガの町に向かった。
 この道を通るのは2回目だ。
 点在する人家で、人が生き残っているのは1割程度だった。

 多くの家は破壊されることもなく残っている。
 だが、この家屋も年を重ねて朽ちていくのだろう。

 今は、街中にも空き家がたくさん存在する。
 わざわざ、人里から離れた場所に移住しようと考える人は少ないだろう。

 サガの町にはA3ダンジョンもある。
 あのワダツミが棲むダンジョンだ。
 だが、今の俺ではまだ無理だろう。
 円盤でも、あのウロコは切り裂けそうにない。

 サガの町は活気があった。
 ほかの町と比べても人が多い。
 そして、驚くべきこちに、サガでは貨幣が流通していた。
 それもサガ独自の金貨である。
 従来の金貨よりも一回り大きく、多少がさばるのだが、それでもオリジナルの金貨である。

 サガの大通りは、普通に店が開いていた。
 他の町で見られるような屋台ではない。
 品ぞろえは災害前と違うのだろうが、それでも色々な品物を販売している。
 領主の裁量なのだろうか。

 俺も、ブーツを買い替えたかったのだが、何を持ち込めば換金できるのだろうか。
 俺は靴屋で聞いてみた。

「ブーツを買いたいんだが、この町で金に換えるのはのは何が効果的なんだ。」
「ブーツだと金貨3枚なんだけど、そうですね、イノシシなら3頭。それか、質の良い魔石2個くらいですかね。」
「金貨3枚分だな、わかったありがとう。」

 イノシシもお手頃なのだが、運ぶのが手間になる。それならばと、俺はA3ダンジョンに向かった。
 A3の地下4階層にあった中継所は無人だった。
 2枚の円盤を従えた俺は、余裕で下の階層に潜っていく。
 地下10階層のラプドラの速度も全く苦にならなかった。
 そして俺は地下13階層に到達した。
 この階層には、アークドラゴンやアトラス。グロスデーモンとサラマンダーといった高品質の魔石をもった魔物が多い。

 気が付いたらリュックがいっぱいになっていた。
 どうも、夢中になると時間を忘れてしまう。
 魔物を吸収しているので腹も減らない。
 そこでスキルのことを思いました。
 アークドラゴンの肉をカットして、炎魔法で表面を炙りマイクロ波で加熱する。
 ここのダンジョンは空洞型なのでガスが停滞することはなく、火も使えるのがありがたい。

 アークドラゴンの肉は美味かった。
 マイクロ波で調理した肉はローストビーフみたいで、レアっぽいがしっかり熱は通っている。
 特にアゴの下と腰のあたりが美味だった。
 俺は加熱した肉を大きな葉っぱで包み、糸車でリュックに固定して持ち帰った。

 町に戻ると、入口の横に座り込んでいる二人の女の子がいた。
 身なりから見ると、裕福ではない感じだった。

「どうかしたのか?」
「お父さんが帰ってこない……。」

 二人の話によると、父親は猟師で、昨日の朝出た切り帰ってこないという。
 母親は大災害で亡くしており、ほかに身寄りはないらしい。
 放ってもおけず、家までついていって肉を食わせてやる。
 
「ドラゴンの一番美味い部位だぞ。」

 二人は、こんな肉は食べたことがないと、夢中だった。

「肉はまだ、いくらでもあるからな。俺はお前たちの父親を探してきてやる。」
「ありがとう、お兄ちゃん!」

 そういえば、お兄ちゃんと呼ばれたのは初めてのような気がする。
 俺が相手してきたのは、年上ばかりだったからだ。
 二人は3才と4才の姉妹だという。
 空腹を満たした二人を寝かしつけ、俺は父親の匂いを追った。

 父親の匂いは、森の中に続いている。
 30分ほど進んだところで、無残に食い散らかされた遺体を見つけた。
 その3人分くらいの残骸の中に、姉妹の父親も含まれていた。

 円盤を使って穴を掘り、残骸を埋めてやる。
 残っていた匂いから、犯人はダークベアーだと分かる。
 立ち上がると3m近くなる大型の肉食獣だ。

 3人の残していった荷車を引いてクマを追跡し、簡単に仕留めて荷車に載せて帰る。
 途中でイノシシやウサギも追加した。
 ”心停止”を使ったので、毛皮に余計な傷はなく、地抜きも最低限の切り込みで済ませてある。
 
 ガラガラと荷車を引いて帰り、肉屋に売ったら金貨5枚になった。
 魔石も、とりあえず20個売却して金貨20枚を獲得した。

 姉妹の名前は、お姉ちゃんがリサで妹がサキといった。
 どうするか悩んだのだが、放置したら生きていけないだろう。

「お父さんは見つからなかった。帰ってくるまで、俺と一緒にいるか?」

 ふたりはコクリと頷いた。

 そうと決まれば、こんなみすぼらしい恰好をさせておくわけにはいかない。
 クリーンで体をきれいにして、髪をとかしてみられるようにする。
 そして、服屋にいって仕立ててもらう。
 ついでに、髪を纏めるリボンもだ。

 次に、靴屋に行って、俺のブーツと姉妹のサンダルを購入する。
 これも、支払いは魔石を使った。
 魔道具屋で照明・コンロ・水の道具を購入し、雑貨屋で鍋や食器を買いそろえた。
 今までは、パンや串焼きなど調理済みのものしか食べていなかったという。
 俺は、試しに、ドラゴンの肉を切り分けて肉屋に持ち込んでみた。

「アークドラゴンの腰肉だ。いくらで買い取る?」
「アークドラゴンだとぉ……、うん、確かに獣特有の匂いはないが……。」
「うま味を逃がさない特殊な調理をしてある。ワサビやエルダーのすりおろしたやつを載せて食えばいうことないぞ。」
「す、少し試食してもいいか?」
「ああ、かまわんぞ。」

 肉屋のオヤジは、飛び上がらんばかりに驚いた。

「こ、こんな肉があるとは!」

 オヤジの声が大きかったせいで、奥から女性が出てきた。

「うるさいな!ナニ騒いでるのよ!」
「あ、あんた、娘にも食わせていいか?」
「ああ、かまわない。」
「了解をもらった。これを食ってみろ!」
「なに、これ?この赤さはイノシシじゃないわよね。獣臭さもないし、馬かしら?」
「いいから食ってみろ!」
「どれっ…………、何よ、コレ!」
「ほら見ろ!お前だってそうなるだろ!」
「この柔らかさと、肉のうま味。噛んだ時に微かに感じる香り……こんな肉、ありえないわ!」
「アークドラゴンの肉だそうだ。大災害以前でも、ほとんど聞いたことがない幻といわれた肉だ。」
「それで、買い取ってもらえるのかな?」
「1キロで金貨3……いえ5枚でどうかしら?」
「お前、そんな値は……。」
「このまま葉物と一緒にパンにはさんでもいいし、ステーキにして200グラムで金貨1枚。十分採算はとれるわよ。」
「金貨3枚でいいんだが、代わりに頼まれてくれないか?」
「何を?」
「親を亡くした姉妹がいるんだ。狩りに出ている間、面倒を見てもらえないだろうか。」
「子供か……。うちも母さんが寝込んでいるし……。」
「俺は医師だ。母親を診てやろう。」

 母親は膝と腰に炎症があった。
 万能薬で治療してやったら、一晩で元気になった。

 娘の名前はシースといった。
 そばかす顔の赤髪娘で、小柄だがスリムだ。
 料理が好きで、店に出す総菜も自分でつくっているらしい。

 俺はシースの頼みで、アークドラゴンを討伐して荷車に積んで店に持ち込んだ。
 アークドラゴンの茶色い巨体は、全長で5mにもなる。
 尻尾と首をどうにか糸車で丸めて、1トンにも達する巨体を荷車で引いてきたのだ。
 まあ、最低金貨50枚での買い取りなので文句は言えない。


【あとがき】
 料理人シース登場。
しおりを挟む
感想 0

あなたにおすすめの小説

どうしよう私、弟にお腹を大きくさせられちゃった!~弟大好きお姉ちゃんの秘密の悩み~

さいとう みさき
恋愛
「ま、まさか!?」 あたし三鷹優美(みたかゆうみ)高校一年生。 弟の晴仁(はると)が大好きな普通のお姉ちゃん。 弟とは凄く仲が良いの! それはそれはものすごく‥‥‥ 「あん、晴仁いきなりそんなのお口に入らないよぉ~♡」 そんな関係のあたしたち。 でもある日トイレであたしはアレが来そうなのになかなか来ないのも気にもせずスカートのファスナーを上げると‥‥‥ 「うそっ! お腹が出て来てる!?」 お姉ちゃんの秘密の悩みです。

JKメイドはご主人様のオモチャ 命令ひとつで脱がされて、触られて、好きにされて――

のぞみ
恋愛
「今日から、お前は俺のメイドだ。ベッドの上でもな」 高校二年生の蒼井ひなたは、借金に追われた家族の代わりに、ある大富豪の家で住み込みメイドとして働くことに。 そこは、まるでおとぎ話に出てきそうな大きな洋館。 でも、そこで待っていたのは、同じ高校に通うちょっと有名な男の子――完璧だけど性格が超ドSな御曹司、天城 蓮だった。 昼間は生徒会長、夜は…ご主人様? しかも、彼の命令はちょっと普通じゃない。 「掃除だけじゃダメだろ? ご主人様の癒しも、メイドの大事な仕事だろ?」 手を握られるたび、耳元で囁かれるたび、心臓がバクバクする。 なのに、ひなたの体はどんどん反応してしまって…。 怒ったり照れたりしながらも、次第に蓮に惹かれていくひなた。 だけど、彼にはまだ知られていない秘密があって―― 「…ほんとは、ずっと前から、私…」 ただのメイドなんかじゃ終わりたくない。 恋と欲望が交差する、ちょっぴり危険な主従ラブストーリー。

男爵家の厄介者は賢者と呼ばれる

暇野無学
ファンタジー
魔法もスキルも授からなかったが、他人の魔法は俺のもの。な~んちゃって。 授けの儀で授かったのは魔法やスキルじゃなかった。神父様には読めなかったが、俺には馴染みの文字だが魔法とは違う。転移した世界は優しくない世界、殺される前に授かったものを利用して逃げ出す算段をする。魔法でないものを利用して魔法を使い熟し、やがては無敵の魔法使いになる。

処刑された勇者は二度目の人生で復讐を選ぶ

シロタカズキ
ファンタジー
──勇者は、すべてを裏切られ、処刑された。  だが、彼の魂は復讐の炎と共に蘇る──。 かつて魔王を討ち、人類を救った勇者 レオン・アルヴァレス。 だが、彼を待っていたのは称賛ではなく、 王族・貴族・元仲間たちによる裏切りと処刑だった。 「力が強すぎる」という理由で異端者として断罪され、広場で公開処刑されるレオン。 国民は歓喜し、王は満足げに笑い、かつての仲間たちは目を背ける。 そして、勇者は 死んだ。 ──はずだった。 十年後。 王国は繁栄の影で腐敗し、裏切り者たちは安穏とした日々を送っていた。 しかし、そんな彼らの前に死んだはずの勇者が現れる。 「よくもまあ、のうのうと生きていられたものだな」 これは、英雄ではなくなった男の復讐譚。 彼を裏切った王族、貴族、そしてかつての仲間たちを絶望の淵に叩き落とすための第二の人生が、いま始まる──。

断罪まであと10分、私は処刑台の上で「ライブ配信」を開始した〜前世インフルエンサーの悪役令嬢、支持率100%でクズ王子を逆処刑する〜

深渡 ケイ
ファンタジー
断罪まで、あと10分。 処刑台の上で跪く悪役令嬢スカーレットは、笑っていた。 なぜなら彼女は―― 前世で“トップインフルエンサー”だったから。 処刑の瞬間、彼女が起動したのは禁忌の精霊石。 空に展開された巨大モニターが、全世界同時ライブ配信を開始する。 タイトルは―― 『断罪なう』。 王子の不貞、聖女の偽善、王家の腐敗。 すべてを“証拠付き・リアルタイム”で暴露する配信に、 国民の「いいね(=精霊力)」が集まり始める。 そして宣言される、前代未聞のルール。 支持率が上がるほど、処刑は不可能になる。 処刑台は舞台へ。 断罪はエンタメへ。 悪役令嬢は、世界をひっくり返す配信者となった。 これは、 処刑されるはずだった悪役令嬢が、 “ライブ配信”で王子と王国を公開処刑する物語。 支持率100%の先に待つのは、復讐か、革命か、 それとも――自由か。

おばちゃんダイバーは浅い層で頑張ります

きむらきむこ
ファンタジー
ダンジョンができて十年。年金の足しにダンジョンに通ってます。田中優子61歳

セーブポイント転生 ~寿命が無い石なので千年修行したらレベル上限突破してしまった~

空色蜻蛉
ファンタジー
枢は目覚めるとクリスタルの中で魂だけの状態になっていた。どうやらダンジョンのセーブポイントに転生してしまったらしい。身動きできない状態に悲嘆に暮れた枢だが、やがて開き直ってレベルアップ作業に明け暮れることにした。百年経ち、二百年経ち……やがて国の礎である「聖なるクリスタル」として崇められるまでになる。 もう元の世界に戻れないと腹をくくって自分の国を見守る枢だが、千年経った時、衝撃のどんでん返しが待ち受けていて……。 【お知らせ】6/22 完結しました!

バーンズ伯爵家の内政改革 ~10歳で目覚めた長男、前世知識で領地を最適化します

namisan
ファンタジー
バーンズ伯爵家の長男マイルズは、完璧な容姿と神童と噂される知性を持っていた。だが彼には、誰にも言えない秘密があった。――前世が日本の「医師」だったという記憶だ。 マイルズが10歳となった「洗礼式」の日。 その儀式の最中、領地で謎の疫病が発生したとの凶報が届く。 「呪いだ」「悪霊の仕業だ」と混乱する大人たち。 しかしマイルズだけは、元医師の知識から即座に「病」の正体と、放置すれば領地を崩壊させる「災害」であることを看破していた。 「父上、お待ちください。それは呪いではありませぬ。……対処法がわかります」 公衆衛生の確立を皮切りに、マイルズは領地に潜む様々な「病巣」――非効率な農業、停滞する経済、旧態依然としたインフラ――に気づいていく。 前世の知識を総動員し、10歳の少年が領地を豊かに変えていく。 これは、一人の転生貴族が挑む、本格・異世界領地改革(内政)ファンタジー。

処理中です...